混ぜ物
推奨:第4章の「おひさ!」まで読了
エリダという男は、どうにも胡乱な人物だった。
レジスタンス第一支部のリーダー。
ゼン曰く「見た目よりも年齢が高い」。
実は意外と面倒見は良い方。
……周囲の人間が彼について知っていることは、これくらいである。
実際の年齢はいくつなのか。
出身地はどこなのか。
家族はいるのか。
今までどんな人生を歩んできたのか。
エリダの知人を集めて情報を出し合ってもらえば、いわゆる個人情報というものがすっぽりと抜け落ちていると、すぐにわかるだろう。
同じ第一支部の仲間であり、よく一緒にいるウロでさえ彼の背景なんかは一切知らない。
事情を把握しているのはただ1人、ゼンだけだ。
「え? 私の年齢? あはは、秘密だよ」
「家族構成? お前、そんなこと知ってどうするんだい」
「面白いことは何も無いよ。聞くだけ時間の無駄さ」
こんなふうに、エリダは投げかけられる質問をのらりくらりと躱す。
まるで、触れるなと言わんばかりに。
誰かが「エリダは親のことを聞かれるとちょっとだけ苦い顔をする」と気付きそれを広めた時は、一斉に様々な憶測が飛び交った。
親に勘当されたのだ。
いや、若い頃に出奔してそれきりなのだ。
いやいや、何かがあって親を殺してしまったのだ。
レジスタンスの、あるいは街の者たちはそれはもう、下世話なまでに推理合戦を展開した。
数ヵ月もすればすっかり熱が収まったが、エリダからすればいい迷惑だった。
なにせ、数多の憶測の中に正解が混じっていたのだから。
エリダは意図して自分のことを隠していた。
自分が何者で、誰から生まれて、どうやって生きて来たのか、知られたくなかったのだ。
* * *
ところで。
話は変わるが、レジスタンスに加入する数年前、エリダとゼンの間にこんな会話があったという。
「私を忌避しない奴なんて、お前くらいのものだよ」
「そうなのか? キミは良い人だ。避ける理由など無いと思うのだが」
「私は『混ぜ物』。理由なんてそれで充分だろうに」
「なんだか納得しかねるな」
「まあ大人になったらわかるよ。さ、今日はもう帰るといい。夜の山は魔物がたくさん出て危ないからね。特に、親父には見つからないよう気を付けるんだよ」




