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堅物騎士

推奨:第5章の「順応性は高め」まで読了

 王国騎士団第四部隊所属、第一小隊隊長。

 そんないかつい肩書きに負けず劣らず、カターという男は厳格な人間だった。


 他人に厳しいのはもちろんのこと、彼は自分に対しても一切の容赦をしない。

 酒を飲まず、火遊びをせず、鍛錬を欠かさず、部下の教育にも余念が無い。


 唯一の趣味は読書であったが、本来の好みである詩歌の本にはとんと触れておらず、少なくともここ数年は勉学か調査のための読書しかしていないという徹底ぶり。


 いついかなる時も騎士であることを忘れず、そのように振舞うのだ。

 ある意味、公私を混同しているとも言える。


 とまあ、このように堅物を極めているカターだが、人情が無いわけではない。


 例えば犯罪に加担させられていた少年・ナオを本当の意味で救ったことなどから、そのことがわかるだろう。


 ナオを騎士団に迎え入れると決めた後、カターは懸命にお偉方や裁判所を説得した。

 情だけではなく損得にも訴えて、ナオの減刑を勝ち取ったのだ。


 かくして第一小隊に見習い騎士としてナオが参入したわけであるが、無論彼の教育もカターが中心となって行った。


 ナオに課されたのは、周囲の騎士たちが心配するほどに厳しい訓練と勉学。

 しかしそれらは決して無茶ではなく、カターが彼を成長させるべく適切に調整したものだ。


 実際、ナオは訓練にも勉学にも根気よく食らいつき、また吸収して自分のものにしていった。


 ストイックなカターと努力家で負けん気の強いナオは、きっと相性が良かったのだろう。


 自分の予想通り、否、それ以上の成長をしてくれた弟子に、カターは満足げであった。


 互いを信じ合い、いつしか固い絆で結ばれるに至った師弟。

 しかし幸福な時間も束の間、彼らの前に大きな障害が立ちはだかる。


 それは「国家」、そして「民意」という名をしていた。


 もはや詳しく語ることはないであろう、ナオが『勇者』となったことにより、2人は引き離されたのだ。


 騎士は国に仕えるもの。

 国王の命とあらば、どれだけ不満でも逆らうことはできない。


 故にカターは、ナオを送り出すほかなかった。


 各地を回るナオの様子を人づてにのみ聞き、手紙を出すこともできずに日々を過ごす。

 当たり前だが無慈悲に与えられる業務を「いつも通り」に粛々とこなす。


 カターは自分に、ナオのことばかり考えるのを許さなかった。

 騎士だからということもあるが、これは彼の性格に依るところだろう。


 しかし仕事を終えて1人になると、いつも決まってナオのことを考えてしまっていた。


 だからやっと直接会って話をする機会が手に入った時は内心かなり喜んだのだが――なんと当のナオが突然姿を消した。


 カターはすぐにエラたちの仕業だと勘付いたが、今回ばかりはさすがに怒りを抑えるのにしばらくの時間を要したという。


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