無気力3兄妹
推奨:第6章の「終焉」まで読了
魔界のどこか、特にこれといって目立つところの無い平凡な町。
そこに3人の兄妹が住んでいた。
兄の名はクーキヨ。
妹は双子で、それぞれカラン、ウロと言う。
彼らは地元ではちょっとした有名人であった。
曰く、クーキヨは何に対しても無関心で、いつもつまらなさそうな顔をしている。
曰く、カランは昼夜問わず眠そうにしており、いつもふとした瞬間にはもう寝ている。
曰く、ウロは常に気だるげな様子であり、いつも目を離すとすぐ仕事をサボっている。
誰が言い出したか、付いたあだ名が「無気力3兄妹」。
父母を亡くしているため3人とも働きに出ていたのだが、まともに仕事ができていたのはクーキヨくらいだった。
しかし幸いにも、周囲の人々は彼らに優しかった。
3人揃ってくたばっていないか様子を気にかけたり、双子に比較的軽い仕事を回してやったり、食べ物をお裾分けしたり。
町の人々の良心のおかげで、兄妹はなんとか文化的な生活を送ることができていた。
だがある時、彼らの家は何の前触れもなくもぬけの殻となる。
最初に気付いたのはクーキヨの職場仲間だった。
出勤してこない彼を心配し、家を訪ねたところ中にはクーキヨどころか双子もいなかったのだ。
これは何かあったに違いない、と周辺住民の間ではちょっとした騒ぎになった。
夜逃げか、心中か、誘拐か。
様々な憶測が飛び交い、中には兄妹を探しに行こうとする者もいた。
けれども結局、3人が帰ってくることも見つかることもなく、家は主人を失ったまま数年間放置されることとなる。
時は流れ、レジスタンスの蜂起があり、さらに月日が経って、魔王が倒された……その後。
またもや前触れ無く、双子が帰って来た。
しかも何ひとつ説明をしないうちに、自宅を改造して菓子工房を始めてしまったではないか。
開いた口が塞がらない住民たちに事の次第を説明したのは、双子が連れて来た見知らぬ青年だった。
何でも彼女らは今までレジスタンスとして活動しており、その最中で面が割れたので身を隠していたとか。
魔王を倒し、隠れる必要が無くなって、レジスタンスの役目も終わったのでこうして戻って来た。らしい。
兄の方はというと、「関心のあることができた」とかで、某所にて新たな生活を送っているのだという。
住民たちはいよいよ呆れた。
一言くらい残していっても良いのにと、親しかった者ほど深く溜め息をついた。
が、しかし。
同時に誰もがちょっとだけ喜びを覚えた。
なにせあの「無気力3兄妹」が、自分で自分のやりたいことを見つけ、その道を歩んで行っているのだ。
自由すぎる気もするけれど、それでもこれが良い変化だと皆思った。
何も言ってもらえなかったことに文句が無いではないが、まあ許してやろうと思えた。
住民たちにとって、彼らの成長はそれほどまでに嬉しいものだったのである。




