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少年よ、正義を守れ(上)

推奨:第5章の「隠し書庫」まで読了

 20年前のことである。

 魔界の片田舎に、1人の男の子が生まれた。


 名前はゼン。

 鮮やかな赤色の髪は、母親のそれによく似ていた。


 彼は魔人であった。

 祖父母や両親は違ったが、どうやら遠い祖先に人間がいたらしい。

 後の世で、隔世遺伝と呼ばれるようになる現象である。


 けれどまあ、魔人だからどうこう言うのなんてとっくに時代遅れ。

 ゼンは家族からたっぷりの愛情を注がれ、すくすくと育った。


 そんな彼に転機が訪れたのは、15歳の誕生日。


 もうそろそろ働きに出ても良い歳だということもあり、ゼンはこの日、街にある母親の知り合いの店を見学しに来ていた。


 いよいよ大人の仲間入りだと積極的な態度のゼンに、好い若者が来たと喜ぶ店の人。

 幸先は良いかに思われた。


 が、そこへやって来たのが魔王の手下だ。


 手下は店の人に「レジスタンスと繋がっているとの情報がある」と詰め寄り、抵抗する素振りを見せたところを斬り殺してしまった。


 幸いにも見逃されたゼンは、しかし放心状態で帰宅した。

 目の前で理不尽に人が殺されたのだ、当然の反応である。


 さて、一夜が明けて翌朝。

 ゼンはあることを決意し、村を飛び出した。


 向かったのは昨日の街。

 店の焼け跡を探り、道行く人々に話を聞き、彼はとうとうある人物に行きついた。

 ――レジスタンスの、リーダーである。


 もっとも、この時のゼンはまだ「レジスタンスの人」ということしか知らなかったが。


 ともあれゼンは考えていたのだ。

 あの善良な店の人を殺した、魔王の手下……ひいてはそれを命じたであろう魔王は悪。

 ならば自分は「レジスタンス」とやらに協力し、魔王を打ち倒さねばなるまい、と。


 リーダーは彼の意志を認め、レジスタンスに迎え入れて「真実」を伝えた。


 ゼンは驚き、憤り、同時にやはりそうだったかとある種の納得を得た。

 年若いゼンにとっても、魔王の支配はどこか歪に見えていたのである。


 そこからのゼンの活躍と成長は、実に目を見張るものであった。


 第一に、人望。

 ゼンはそのカリスマ性を開花させ、また素の人の好さからあっという間にレジスタンス内部のみならず街でも人気者となった。


 第二に、戦闘力。

 レジスタンスは魔王側との戦闘になることを想定し、適正のある者は訓練を積む。

 その方面でもゼンは才能を開花させ、短期間で大剣を我が身がごとく操るまでに至った。


 聞き込みによる情報収集、敵対者との戦いもお手の物。

 その他、人をまとめる能力の高さなどが評価され、翌年には席の空いた第三支部の支部長に任命された。


 かくしてレジスタンスの支柱とひとつとなったゼン。

 彼の齢が17になろうかという年、レジスタンスは魔王軍との一大決戦を開始した。


 本部10の支部が一丸となって必死に戦ったものの、結果は惨敗。

 多くの仲間と共に、場所の割れた7の支部も破壊されてしまった。


 最前線にいたリーダーもまた、この戦いで死亡。

 本部に残された遺言状には「ゼンを次期リーダーとする」とあった。


 ボロボロのレジスタンス、反して傷ひとつ負わなかった魔王。

 絶望的な状況の中、それでもゼンは諦めなかった。


 死んで行った仲間やリーダーの、3000年間、魔王に抗い続けてきたレジスタンスの意志を絶やすわけにはいかない。


 いつかきっと、また好機が訪れる。

 希望の星は必ず現れる。


 自分がすべきは、それまでレジスタンスの力を蓄えることだ。

 そうして時が来たら、今度こそ。

 今度こそ、魔王から世界を救うのだ。


 それは正義を守らんとする、1人の少年の決意であった。


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