120/212
閑話:救世主
熱い。怖い。
俺は燃える家の中で、泣きじゃくっていた。
なんだかよくわからない奴らが外で暴れてる。
誰も助けに来てくれない。
俺はここで死ぬんだろうか。
死ぬってどんな感じなんだろうか。
わからない。
死にたくない。
死にたくない。
熱さと苦しさで朦朧としてくる中、誰かが部屋の扉を開けた。
大きな剣を片手に、その人はゆっくりと近付いて来る。
そうして少ししゃがむと、俺をそっと抱き上げた。
俺の胸に光が差す。
ああ、助けに来てくれたんだ。
どこの誰かわからないけど、この人は俺を助けに来てくれたんだ。
彼は何を言うでもなく歩き出す。
ふと見ると、彼が炎の上をそのまま歩いていることに気付いた。
俺はそれを指摘する。
が、彼はこれくらい平気だと笑った。
優しい笑顔だった。
彼は俺を抱えたまま、燃え盛る建物の中を歩いて行く。
柱が崩れて来ればそれを斬り。
瓦礫が邪魔であればそれを砕き。
まるで散歩でもするような自然さで、彼は剣を振るい、道を開いていった。
その様に見惚れながら、俺は思った。
いつか必ず、この人に恩返しをしよう。
俺を助けてくれた救世主を、今度は俺が助けよう。
きっと、きっと。
半分無意識に、俺は彼の服をぎゅっと握った。
彼がこちらを見る。
目が合う。
瞳の中にお互いが映る。
彼はまた、優しく笑った。




