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カチコミ×2

 なんとかヒトギラをなだめすかし、炎を止めさせる。

 幸い燃え移った部分は少なく、リュキたちの手によってすぐに消し止められた。


「ははっ! 澄まし顔のお上品な奴だと思ってたが、なかなかどうしてヤベー暴れ馬じゃねえか。レジスタンス、ますます気に入ったぜ」


 リュキはそう言って、豪快に笑う。

 心の広い人で本当に良かった。


「敵? の人たち、大丈夫かな……。死んでないといいけど」


「ああ? なんで敵の命なんざ心配してんだよ。ま、たぶん無事だろうがな。あいつらも、反撃に備えず敵地に攻め入るほど馬鹿じゃねえだろ」


 噂をすればなんとやら。

 そうこう言っていると、扉があった位置からゆっくりと何者かが現れた。


 真っ黒な外套の裾をひらつかせ、その人……黒髪の男性は、扉の残骸を踏みしめながら部屋に入って来る。

 後ろの廊下には彼の部下らしき人たちがずらりと並び、それだけで威圧感を発していた。


 ボスを見る彼の視線を遮るように、リュキたちが前に歩み出る。


「なんだなんだあ? 『影の会』のボス様が直々にお出ましかよ」


「殊勝なことで結構です」


「相変わらずしけた格好してんなあ」


「大勢でご苦労様、暇そうで羨ましいよ」


 4人とも、第一声から敵対心全開だ。

 俺はひとまずボスの傍に立ち、彼らのやり取りを見守る。


「……その貧相な子どもが新しいボスか? 噂は本当だったようだな」


 黒衣の彼は冷たい目で言い放った。


「私はあの男ならば、と裏社会の王座を譲ったのだ。またあの男が直々に選んだ後継者ならば、何も文句は無かった」


 彼は一向に近付く素振りを見せないが、その外套の下に何があるのかわからない。

 いつでも剣を抜けるように、俺は意識を集中させる。


「だが蓋を開けてみればどうだ、本来の後継者が死に、代わりに出てきたのは腰抜けの子ども……。失望したぞ、あの男の幹部ともあろう者がそうも間抜けだったとはな」


「そりゃこっちの台詞だぜ、ガルディよお。俺の記憶が正しけりゃ、テメエはもっと聡い奴だったはずなんだがなあ? ボスの実力は確かだ。俺らが本当にただの一般人を組織のボスにするわきゃねえだろ」


「実力? 部下の後ろに隠れて震えているのが実力だと?」


 ボスはびくりと肩を揺らした。


「む、キミは例の話を知らないのか?」


 殺気立った場に似合わない明るい声で、ゼンが言う。

 男性、ガルディさんはボスから彼へと視線を移した。


「ボスは他の候補者陣営を1人で打ち負かしたんだそうだ。本人は偶然だと言っているが、それはそれで素晴らしい『実力』だとオレは思うぞ!」


「なんだその雑な与太話は。だがいいだろう。それならば今ここで、その実力を示してもらおうではないか」


「ちなみにオレはレジスタンスのゼンだ、よろしく!」


「……者ども、やれ」


 表情こそ変わらないが、明らかに怒った様子でガルディさんは号令を出す。

 そして彼の部下たちが一斉に部屋になだれ込もうとした、が。


「来るな死ね」


 ヒトギラの声と共に彼らは全員、足元から生えてきた氷柱に閉じ込められた。


「おっ、やるなあ暴れ馬!」


「些事だ」


 しかしガルディさんは意に介さず、外套の下からするりと剣を抜いて斬りかかって来る。


「おっと、通さねえぞ」


 ボスのところへは行かせまいと、オーレイアさんが彼の攻撃を槍で受け止めた。


「さすがのお前もこれじゃ不利だろ」


「ふ、私があの男以外に負けるはずがない」


「言ってろ、うちのボスには指一本――」


 と、そこでオーレイアさんの顔色がサッと変わる。

 同時にクーキヨが杖を手に取り、天井に向けて掲げた。


 どうしたの、と聞くより早く、またもや建物が大きく揺れる。

 今度は先ほどよりもずっと強い揺れだ。


「む、増援か!?」


「違う」


 答えたのはガルディさんだった。

 彼はオーレイアさんから離れ、天井を睨む。

 オーレイアさんもまた、彼そっちのけでボスに駆け寄った。


 直後、ひときわ大きな揺れと共に天井の一部が崩れ落ちる。


 ヒトギラとクーキヨが障壁を張ったため、幸いにも瓦礫で怪我をする者はいなかった。

 だが問題は誰がやったか、である。

 ガルディさんの部下ではなく、当然『友好会』の人なわけもない。

 また一般市民などは論外だ。


 だとしたら、あと考えられるのは……。


「見つけた……魔王様の、『器』」


 天井を壊した張本人、特徴的な形の耳飾りをした女性がゆっくりと宙に浮かびながら下りてくる。


 『器』ということは、もしかしなくとも俺を狙って来たようだ。

 つまり彼は。


「ちっ、魔王の手下かよ」


 忌々しそうにリュキは舌打ちをする。


「どうしてフウツがここにいると?」


「魔王様の力を感じた。あとは……頑張った」


 俺が持つ魔王の力を感知し、その周辺を探し回ったということだろうか。

 でも、だとしたら俺が魔界に来た時点で居場所が割れていてもおかしくない。


 じゃあ彼女が今、初めて俺の元に来たのは、魔王の力が「使われた」のを感じたから――


「あ」


「なるほど地下闘技場か!」


 ポン、とゼンが手を叩く。


 そうだ、俺は昨日の夜に地下闘技場で、天井を吹き飛ばすくらいの魔法を撃ったんだった。


 それならば合点がいく。

 普通にしていれば何もないのだが、加減せずに力を使うと彼女、もしくは彼女らに感知され見つかってしまうというわけだ。


 早い話が、鳥も鳴かずば撃たれまい、である。


「あ? どういうこったよ」


「俺のせいで見つかったっていうことです……本当にごめん……」


 ああ、俺があの時、魔王の力なんか使わなかったらこんなことには。

 リュキたちに至っては完全に巻き添えで拠点を破壊されたわけだし、申し訳が立たない。


「よくわかんねーけどよ、魔王の手下ボコるチャンスじゃね? なあオーレイア」


「おう、そうだな。俺たちなんもしてねえのに、あいつに天井壊されたんだもんな。正当防衛だぜ、これは」


 2人は目を爛々とさせながら武器を構える。


「ま、待って、あの人の狙いは俺だから……」


「よーし、やってやるか!」


「ぎゃはは! 礼を言うぜフウツ。クソ魔王の手下を殴る言い訳をくれてよ」


 俺の静止も全く聞いていない。

 薄々感じてはいたけれど、この人たち血気盛んすぎやしないか。


 一方で女性は地に降り立ち、右腕を刃物に変形させる。

 ともあれ、こうなっては戦うほかなさそうだ。


「『器』は持って帰る。人間と精霊も持って帰る。あとは適当、よし」


「なにが『よし』だ!」


 リュキが真っ先に女性へ攻撃をしかけた。

 しかし彼女はリュキを相手にせず、ひらりと躱して俺の方へと向かってくる。


「『器』が最優先」


 女性が腕を横に振ると、そこから分裂した小さな刃が矢のように飛んで来た。


「っと」


 避けたいところだが、そうすると後ろのボスに当たるかもしれない。

 俺は剣で刃を防ぎ、女性に反撃を繰り出した。


 ボスに避難してもらおうにも、部屋の入り口は氷柱で塞がれている。

 彼に被害が及ばないよう、慎重に戦わなければ。


常々「題名ダサいな……」と思っていたので今までの名前をサブタイトルに回す形で改題しました。ちょっとはマシになったはず。以上です。

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