表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/212

プロローグ

 轟々と燃え盛る炎を背に、その少女は淑やかに笑っていた。


 何の変哲もないはずだった村。

 少しだけ特別なはずだった夜。


 それらを蹂躙し、満天の星空を焼き尽くさんばかりの勢いで炎は立ち昇る。

 俺の育った村、その建物を薪にしてこれでもかと膨れ上がる。


 じりじりとした熱と光が俺と彼女を照り付けている。

 額から滲み出た汗が、輪郭をなぞって落ちて行った。


 春先とは思えないほどに、暑い。

 どうやら炎は季節をも焼き焦がしてしまうらしい。


 熱で巻き起こった風が少女の整えられた長い髪を、上等な服の裾を乱す。

 だが彼女は意に介していない。


 少女はただ、目を細めて、上品な笑みを湛えて。

 俺を見つめていた。


「ここからですわ」


 呆然とする俺に、少女は語りかける。


「ここから、私たちの旅が始まるのですわ!」


 朗々と、まるで花園の美しさを詩に詠うように、薄い唇から言葉が紡がれる。

 俺は返事をすることができなかった。


 村は燃える。

 燃え続ける。


 乱舞する炎の渦に為す術も無く呑み込まれ、のどかだった村は既に元の面影を失っていた。


「ね、フウツさん」


 言って、少女は笑う。

 愛という名の業火に、俺もまた焼かれようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 冒険者に憧れ、母を慕う純真な少女と、その少女に慈愛を注ぐ母.....そんな穏やかで真っ当な親子の姿を見せてからの、優しい母が主人公には一転して冷たい人間になる、そんなギャップにゾクゾクして…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ