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毎日ほのぼの。  作者: 愛森とき
5/15

ほのぼの(5)

2019年11月1日(金)


事務員 秋田郁実(あきたいくみ)の今日のほのぼの。


事務員の月初めは忙しい。

社員の給料やアルバイトの賃金の支払いは

毎月の事ながら大変だ。

郁実の会社は幼児や児童の為の

玩具(おもちゃ)や文具を販売している会社だ。

給料の支払い以外にも

会社の契約関係など気が重くなる事務から

気分転換には最適な郵便物の仕分けまで

色々な事を任されている。

いや、押し付けられていると言っても

過言ではないかもしれない。

事実、会社のエコを推進する委員会やら

ハラスメントに関する意見募集の会議やら

そんなのに出席者の募集があれば

郁実でなくても誰でも良いような仕事だから

結局、郁実に回ってくるのだった。


月初めの定刻は驚くほど早くやって来た。

終業の時刻を時計が示すと同時に

アルバイトと何人かの社員が

そそくさと帰って行った。


郁実はこれから仕事開始ですと言わんばかりに

机上に書類が広げられている。

残っている社員は仕事をする気が

あるのかないのか、雑談ばかりしている。


上司「皆さん、まだ帰らないですか?」

立ち上がり周りを見渡し

誰にともなく上司が声を掛けてきた。


男性社員「あ、もう帰ります」


女性社員「私も」


雑談ばかりしていたグループが

バタバタと帰り支度を始めた。


雑談がうるさいのには慣れてはいたが

集中するにはやはり静かな方が良いなと

思いながら、郁実は仕事を進めた。


1人、また1人と帰り

とうとう上司と2人きりになった。


上司「まだかかりそうですか?」


郁実「もう少し、きりが良いところまで終わったら帰ります」


上司「そうですか」


郁実「私、最後にセキュリティのチェックきちんとして帰りますので、大丈夫です」


失礼かと思いながら、席が少し離れているので

座りながら話をした。


上司「では、お言葉に甘えて帰りますよ。お疲れ様でした」


郁実「お疲れ様でした」


1人になってホッとした。

静かに仕事が出来るからだ。


しかし、そう思ったのも束の間、

プルルル、プルルル…

電話がなった。


郁実「はい、コスモス文具の秋田です」


電話の主「もしもし、秋田さん?」


郁実「は、はい」


電話の主「竹中です、竹中聡一(たけなかそういち)です」


郁実「あ、お、お疲れ様です」


竹中の名乗ったその男性は

先程まで会社に居た上司だ。

突然の事で郁実が状況を

上手くのみ込めないでいるうちに

上司は話を始めた。


竹中「お願いしたいことがあってね。聞いてくれるかい?」


郁実「え、あぁ、はい」


机上が散らかり過ぎて

メモ用紙を探すのも一苦労だった。


竹中「大内野(おおうちの)さんの席に、封筒が乗っていると思うんだけれど、どこからの封筒かな?」


郁実「えっ?封筒?」


大内野さんというのは、

郁実の左隣の更にその隣の席の社員だ。


郁実「目が悪くて自分の席からだと見えませんので、近くに行って見てきます。少しお待ちください」


電話の保留ボタンを押し

大内野さんの席へ向かい封筒を確認した。

そして、急いで席へ戻り保留を解除した。


郁実「フラワーズスクールでした」


竹中「フラワーズスクールですね。わかりました、ありがとうございます」


言って竹中は電話を切った。


郁実は受話器を置き

ふと冷静になって思った。

どれだけ封筒の事が

気になってまったんだろう、と。

そう思うと、ほのぼのとした気持ちになった。

郁実は集中するべく背筋を伸ばし

さぁ、あと少し頑張ろうと

気合いを入れたのだった。

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