ほのぼの(1)
2019年10月28日(月)
会社員 中村真幸 の今日のほのぼの。
今日は真幸の誕生日。32歳になった。
真幸は、妻 あかりと一人娘の真衣子の
3人暮らしで、平穏な日々を送っていた。
真衣子は今年小学校に入ったばかりで
毎日黄色い帽子を被って登校していた。
体に比べて大きい赤のランドセルが
一年生という感じで可愛らしかった。
我が子が可愛くて仕方ない真幸は
俺って親ばかだなぁと毎日のように思うのだった。
妻はパートで家計を支えてくれていた。
同い年の妻とは20歳で結婚したから
もう10年以上も経つんだなぁとしみじみと思った。
真衣子が生まれてからは生活の中心は
子どもになった。
だから夫婦の誕生日もいつの間にか後回しになり
そしていつしか何もしなくなった。
今日もきっと何事もなく過ぎていくんだろう、
そう真幸は思いながら
いつも通り妻の作る朝ご飯を食べ
いつも通りの道を通って車で会社に向かった。
そして、会社に着いたらいつも通り
出勤の証のタイムカードに打刻して
いつも通り始業前にコーヒーを飲んだ。
それから、いつも通り仕事をこなして
いつも通り残業したのだった。
残業を終え帰り支度をしていると
同僚が話しかけにきた。
同僚「中村さん、帰り飯にでも行きません?」
ご飯に誘ってきたのはまだ20代の
柴野瞬だった。
真幸「んー?何考えてんだ。まだ月曜日だぞ?
それにもうこんな時間だ、店もやってないだろ」
柴野「いや、中村さん、今日、
誕生日なんでしょ?」
真幸「確かにそうだけど、誰に聞いたんだよ」
柴野「事務の東さん」
真幸「東かー。人の個人情報を勝手に」
会社の事務は社員のあらゆる個人情報を
管理していた。
あらゆると言っても事務に必要最低限の
情報だけだが。
真幸「本当にもう遅いし、今日は帰るよ。
ありがとな」
柴野「じゃあ、またの機会によろしくお願いします」
真幸「あぁ、わかった。そん時は俺の
誕生日祝いなんだから、奢ってくれるんだろうな?」
柴野「中村さん、ちょっと用事を思い出したんで
先に帰りますねー」
柴野は笑いながらスマホで電話する真似をして
走って出て行った。
真幸はタイムカードに打刻した。
打刻された数字は 22:28 だった。
真幸「おっ、10時28分か」
たまたま、誕生日と同じになって
おめでとうとお祝いしてもらったような
そんな、ほのぼのとした気持ちになれた。
打刻しないで帰った柴野瞬の分も打刻し、会社を出た。
そして、いつも通りの道を通って家に帰った。
いつも通り、真衣子もあかりもすやすやと眠っていた。
32歳の誕生日、特別なことは何も無かったが
いつも通り幸せな1日だったなぁと
2人の寝顔を見て真幸は思ったのだった。