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30.まさかの被り
カラオケのイントロが流れ出す。尾崎豊の曲だ。
「誰だ?」
ステージに向かったのは穴山らしい。頭の禿げ具合でかろうじて見分けがつく。顔は当然、生クリームまみれだ。
「おい、暗いぞ」
日下部が声を上げる。
「名取、若いんだからもっと盛り上がるやつ行け」
「了解しました!」
名取はすぐにデンモクを手に取る。
穴山の歌が終わり、名取が立ち上がる。それを制して四宮がステージへ。
流れた曲は昨年流行ったダンスユニットのあの曲。
「あれ、これおれの曲っすよ」
名取が割って入ろうとする。
「そうなの? 俺も入れたんだけど」
「えー、まさかの被り?」
ノリノリで歌う四宮。その四宮の歌が終わると、再度同じ曲が流れる。
「なんだ? またやるのか?」




