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29.甘く危険な香り
「あー、もったいない…」
古沢が呟く。
「だったらこれ、あげますよ」
名取は自分の顔面に張り付いたケーキを拭い取ると、古沢の顔に撫でつけた。それを見た今日子は危険を察知し、席を立った。
「お手洗いに行って来ます」
しばらくして今日子が宴会場に戻ると、白塗りの酔っぱらいたちがあちこちで畳の上に転がっていた。畳の上にはいつの間にかビニールシートが一面に敷かれていた。
「あらら…」
その光景に唖然とする恭子を悲劇が襲った。
「油断しましたね」
「きゃっ!」
そっと背後に回り込んだ名取が生クリームを今日子の顔に見舞ったのだ。
この惨劇は日下部がホイッスルを鳴らしてどうにか収まった。
「さあ、そろそろカラオケでも始めましょう」




