第二輪: きぶし〜出会い〜
少し、短めです。
「……終わった……」
風が吹き、木々が僕を嘲笑っている。
時間は昼休み、場所は購買前。
そこで僕は一人落ち込んでいた。
落ち込んでいるからと言って何が起こるというわけでもないことは重々分かってはいる。
だが、僕のこの空虚な胃袋をどうすればいいのか、いや、どうもできない。
ちなみに、どうして僕がここにいるのかということについて皆さんは想像がつくのではないだろうか。
そう、僕は今日弁当がない。
弁当自体はあるにはあるのだが……メインとなる中身が存在しない箱だけの存在だ。
朝持ってくるとき、なんか無駄に軽いなぁと思いはしたのだがサンドイッチだろうと勝手に解釈したのが間違いだった。
四時間目が終わり、やった昼飯だと思い弁当箱を開ける。
そして見てみると中身がない。
初めは中身が透明である人類最先端の素材でも入っているものかと箸で中をつつくが、底に箸が当たる音がするだけで何もない。
目を閉じて、自分の頬を抓り、痛いことを感じてまた目を開けてみた。
それでもやっぱり、中身はない。
そのときの絶望感。
昼休み時間は既に五分過ぎており、購買のパン競争には出遅れている。
望みは薄いのを知っているが、それでもなにか残ることを期待して行くしかなかった。
そして乱闘になりかけつつある購買の前へとやってきたが、割り込むことができずに敗北した。
そして、現在に至るというわけだ。
「……はぁ」
軽い嘆息を吐いたとき、ふと後ろから制服を引っ張られているのに気付いた。
後ろを振り返ってみると、そこには……一人の女の子がいた。
髪の色が金髪であること、瞳の色も髪と同じく金色であることから恐らくは外人であろう。
身長は椿と同じぐらいか。
長く伸びた髪はかわいらしい白リボンで留めている。
顔の造形は椿に近いものの、椿よりもさらに幼い印象を受ける。
……どう見ても高校生には見えませんが。
その子は僕を見上げたままピクリとも動かない。
なんか睨めっこをしているみたいだ。
この状況、周りから見たらど映っているのだろうか。
「……えぇっと」
僕がそう口を開くと、その子は小さい体をビクッと反応させた。
なんか小動物って感じがして、可愛らしい。
「どうしたの?」
尋ねてみて思った。
果たして日本語は通じるのだろうかと。
もし通じなかった場合、英語で話さなければならないのだろうか、いやそれはできないぞと。
そんな心配とは裏腹に、その子は左手に持っていた袋を僕に差し出す。
これは……
「パン?」
「……(こくこく)」
その子は無言のまま頷く。
どうやら、日本語は分かるようだ。
それはひじょうにありがたいのだが、はて僕に袋をいったいどうしろというのだろう。
僕にこの中のパンをくれるというのだろうか。
いや、まさか、それはないだろう。
この子と僕は完全に初対面で、何の接点もなく、見たことすらなかったのだ。
そんな完全な赤の他人たる僕にパンをくれるなんてあるわけがない。
どうせ、フェイントでした。
そんなオチに決まっているのだが、それでも一応「くれるの?」的な確認を取るのが筋だろう。
「これを、くれるの?」
さぁ、来い。
「……(こくこく)」
またも無言で頷いた。
ほら見…………あれ?
「え、本当に?」
「……(こくこく)」
い、いや、まだだ。
まだ油断するな、萩原紫苑。
まだフェイントでしたという可能性が消えたわけではないぞ。
「僕にくれるの?」
「……(こくこく)」
「本当に?」
「……(こくこく)」
どうやら、この子は本当に僕に袋の中身をくれるようだ。
えぇっと、じゃぁ、もらったほうがいいのかな。
「じゃぁ、ありがたくもらうけど、君の分はあるの?」
「…………(こくこく)」
先ほどよりも少し遅く頷いた。
ひょっとしてないんじゃないだろうかという気がした。
なら、こうすればいい。
「そっか。でも、さすがに全部もらうのは気が引けるし、一緒に食べようよ」
その子は驚いたような表情を浮かべて、右手の人差し指で自分を指した。
「そう、君」
「…………………………(こくこく)」
少し考えたのだろう。
頷くのは先ほどより時間がかかった。
「じゃ、そこにあるベンチで」
僕はすぐ近くにあったベンチを指して言い、そこへ向かった。
ということで、第二話(実質五話目)です。
今回もまた前回同様あまり自分で見直したりしてないので、修正点とか指摘をお願いします。






