第一輪: サネカズラ〜再会〜
さて、本編開始です。
夏休みが終わって、今日から新学期である。
そう、今日から二学期なんだ。
それなのに。
「なんだろう。この出席率の悪さは」
クラスに入ってきたときには僕が早く着きすぎたと思ったから特になんとも感じなかったんだけど。
今から始業式が始まるというのに、クラスを見渡してみれば……座っているのはわずか十人足らず。
僕の記憶に間違いなければ、このクラスは十数人ではなく確か三十八人はいたはずなんだけど。
多分それは僕の気のせいだろう。
このクラスは十人足らずのクラスだったと、そう思っておこう。
「まぁ、こうなることはある程度は予想してたんだけど……」
隣から聞きなれた声が聞こえた。
「今の心境を例えるならどんな感じ?」
「そうね……ファミレスでコーヒーを頼んだのに持ってこられたのはコーラでしたって感じの気分」
隣で溜息をつく彼女の名前は《九条椿》。
このクラスの学級委員長を務めている。
責任感が強く、比較的真面目で、面倒見がいいため学級委員長には最適な人物というわけだ。
他人の悩みなどは親身になって考えてくれるため、クラスを問わずよく相談事を持ち込まれるらしい。
それは彼女が誰からも信頼されている証拠なのだろう。
だけど椿が僕に相談してくる理由だけは未だによく理解できない。
その辺り、もっといい相談相手がいるだろうに。
成績優秀で、どこか幼さを感じる顔の造形に茶髪の腰辺りまであるロングヘアーの髪。
容姿の可愛らしさとか、その他もろもろのために毎日ラブレターが絶えないとか。
そんな完璧そうに見える彼女だが、欠点……というかコンプレックスがある。
それは身長。
実は椿、制服を着ていなければ小学校高学年と間違えそうなほど身長が低い。
そのコンプレックスを克服するために牛乳を毎日一本飲んでいるというのだが、まったく伸びてない。
指摘したら最後、半殺しは確実。
ふと、隣の椿から視線を感じる。
何かとても重い感じのする視線が。
「何か失礼なことを考えてなかった?」
「気のせいです」
即答。
そうしないと、僕の命が危うい。
「まぁ、いいけど。それより、そろそろ移動しないとね」
「うん? あぁ、そうだね」
その後の行動は非常にすばやかった。
クラスに良く届く声で号令をかけ、全員(十数名だけど)を連れて体育館のほうへ向かった。
今日は午前中授業なので、始業式さえ終わってしまえば後は特になにもない。
というわけで、今はクラス活動の時間なんだけど。
クラスの担任の先生は「この先生にとっての地獄絵図のような光景は何だ」といった。
うん、解らなくもない。
「今日来てない奴らは明日は外周十周でもしてもらうか」
メモ用紙を取り出して、ペンで書いていることから恐らくいない奴の名前を書いているのだろう。
「で、だ」
先生は一息入れてから話す。
「お前たちに新しく一人の仲間が加わるぞ、喜べ」
そういわれたとき、当然のごとく教室内は十数人(僕を除く)の声で騒然とした。
「ほら、静かにしろ。というわけで、入ってくれ」
そして、教室のドアが開く。
そこから入ってきたのはびっくりするほど綺麗な少女だった。
肩より少し長めのセミロングの黒髪。
お世辞抜きで「美人」という言葉を使うことのできるほど綺麗に整えられた顔立ち。
透き通った大きな瞳。
その少女は制服だというのにどこか大人のような雰囲気を放っていた。
しかし、何故だろう。
初めてあったような感じがしない。
先生の隣に立ち、ゆっくりと僕たち全員に挨拶をする。
「初めまして。私は《穂坂桔梗》と言います」
穂坂……桔梗……穂坂?
「あっ」
そのとき僕は思い出した。
昔、一緒に遊んでいた女の子の存在を。
「九年前からアメリカのほうへ行ってました。分からないことが多いので困っているときには助けてもらえるとありがたいです」
「もちろん助けるさ!」とクラスから熱狂の声が飛んだ。
ふと僕の目は目の前に悠然と立つ少女……穂坂桔梗の目とばっちり合った。
そのとき、彼女は嬉しそうに微笑んで。
「そして、ただいま。紫苑君」
そう言った。
クラスはしばし静寂に包まれ、その後、驚愕の絶叫が響き渡った。
というわけで、第一話です。
まぁなんといいますか、自分の文章能力のなさには驚かされます。
いろいろ間違っていたり、おかしかったりすると思うので違和感を感じたら、指摘をお願いいたします。
こんなものでも読んでいただいてありがとう。