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蜘蛛の糸に絡め取られた私の弱さについて

作者: 秋助

・縦書き ニ段組 A5サイズ

・27文字×21行

・文字サイズ9ポイント

・余白 上下11mm 16mm


に、設定していただくと本来の形でお読みになれます

『あなたの目の前には無限の可能性が広がっている』

 キャリアセンターの人は私と会う度に、企業説明会に参加する度に、同じようなことを何回何十回と同じことを呟いて、卒業まであと二ヶ月しかない私を励ました。

 だから心配することはない。だから焦ることはない。それは解っている。だけど、いくら無限の可能性が広がっていたって、そこから一本の道を見つけだすことこそが大事で、更にそれが容易ではないことも解っている。

『あなたの目の前には無限の可能性が広がっている』

 それを言われる度に私はとてつもなく不安になってしまうのだ。私の目の前にある無限の可能性は、さながら蜘蛛の巣のように見えて、私はその巣の中心にいる。360度に広がる真っ直ぐの白い糸。希望に満ちていると勘違いしてしまえば、何も言う間に巨大な蜘蛛に喰い殺される。もがけばもがくほど蜘蛛は近付いて、出鱈目に進めば進むほど絡まって、誰かに縋れば縋るほど蜘蛛は大きく、いやらしくあんぐりと口を空ける。

 慎重に、波風を立てないように縦糸を選んで渡ってしまえば楽なのに。それさえも解っている。だけど、一本の細い道を歩くのはとてもぐらついて、何かに縋りつきたくなってしまう。結果もがいてしまい、蜘蛛はやはり私を喰い殺すのだろう。もがけばもがくほど、出鱈目に進めば進むほど、誰かに縋れば縋るほど、私は蜘蛛に喰い殺される。

 だったら何もせず、何もしなければいいのだ。そうすれば蜘蛛は私に気付かずにじっと、ただじっと巣で獲物を待っている。

 私はたまに、企業は就職活動者を喰い殺そうとする捕食者で、就職活動者は企業に喰い殺される被食者なんだと考えてしまう。だってそうでしょう? 得体の知れない不安で身動きを取れなくして、どんどんと就職活動者の精神を蝕んでいくんだから。

「私の目の前には無限の可能性が広がっている」

 その言葉を、自分自身で呟く。

 だから心配してしまう。だから焦ってしまう。それが解かっていなかった。

 私の、たった一本の道は――

最後までお読みいただきありがとうございます

感想やご指摘などがありましたら宜しくお願い致します

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