第56話 『怖い怖い何が怖い?』『人の悪意が一番怖い』
まさかのトラブルで投稿失敗してました。
申し訳ない…。
「まったくもう。最近の若者はなってないねえ」
「社長、全く持って説得力がないです」
「さっき学生の一人に声かけたんだけどさ、なんか呟きまくって全然こっち見ないの。ありえんくない?」
「あの子たちだって忙しいんですから、部外者が勝手に声かけたらまずいでしょう?」
「そういうもんかな」
「そういうものです。それより、いいんですか? 今、海外じゃ大騒ぎなんですが」
「何が?」
二人がいるのは、誰もいない教室。
不法侵入一歩手前。
「社長がこの間暴れたせいで、兵器が無力化して、紛争が殴り合いになってるそうです」
「と言っても、その殴る拳もあんまり意味ないから、傍から見たら何やってんだろってしか映らないだろうけどね」
「進んだはずの戦争が、原始時代というより、子どものケンカに巻き戻ってますからねえ」
「今日華ちゃん、怒ってる?」
「はい? 平穏な世の中になっているのに、怒る理由なんかありますか?」
「いやあ、いつもと比べるとトーンが怖いなーって」
「そりゃ、見知らぬ生徒の教室調べるなんて言い出したら、誰だって怒るでしょ?」
グラウンドで体育祭の行方を見ている生徒たちは、誰も気付くことなく。
◆◆◆
「よしっ! いけーっ!!」
クラスみんなで、借り物競争を応援していた。
これも全学年参加競技で、参加生徒をグラウンド中心に集め、空からお題を書かれた紙をまき散らすという手法がとられた。
籠を持って空を飛んでいる先生が、ホイッスルと同時に中身をひっくり返す。
その瞬間は、生徒によっていろいろな方法がとられる。
空を飛んで掴みに行く者。
腕を伸ばして掴む者。
だが、ほとんどの生徒は、下に落ちてくるのを待つしかない。
その点、うちのクラスはやはり優秀だった。
「福原! これ!」
「あんがと!」
男子の参加者である浜田が、《気圧操作》によって、下降気流を作り出す。無造作に落ちてくる紙は流れに乗って、浜田の手に収まる。
これもスピード勝負だ。
そのうち1枚を受け取った福原さんが、中身を見ると同時に《物質生成》で借り物を作り出す。
「福原! 俺に鉢巻作って!」
「了解!」
お題のものを手に持って、二人は一気にゴールへ向かう。
◆◆◆
「13位かぁ。まあ、総合では余裕あるし、悪くないよねえ」
柊さんの言葉に、この二人随分救われたようである。
そこまで落ち込むなよ。
1学年8クラスの、5学年。計40クラスの中で1年生にしてこの快挙だぞ?
「次の真田たちで挽回してもらわねーとなー」
期待に満ちた視線が痛い。
二瓶さんが秋山さんに向き直り、
「直ちゃん、結局猫はどうなった?」
「うーん、なんだかおかしくなった……」
言葉では言いづらいらしく、実際に能力を見せてもらうと。
「なるほどなあ……」
秋山さんの能力、《具現化物質操作》は、簡単に言えば、自分の中で最も強いイメージを持てる動物を作り出し、それを操る異能である。
彼女の場合、猫だった。
しかし、それだけではあまり役に立たないことを自覚していた彼女は、体育祭までにどうにかできないか、試行錯誤を繰り返していたそうだ。
その結果。
「猫がそのまま大きくなったのか……」
ライオンとか、虎だったら強そうに見えるけど。
普通の、猫が巨大化したようにしか見えない。
十分怖いけど。
「乗ろうと思えば乗れるんだけど、振り落とされちゃうから」
移動には適さないらしい。
具体策が出ないまま、時間が進んでいく。
◆◆◆
「――で、首尾は?」
「ダメです。今日まで何も話していません」
車椅子に乗った男の問いに、若い警察官はきびきびと答えていた。
学校襲撃事件の犯人、主犯格二人は、ともに口を閉ざしていた。
あの場には、他に十数名の仲間がいたが、彼らは一貫して自らの無罪を主張。
全てを、あの二人に押し付けていた。
「しかし、中将ともあろう方が直接このような場所に……」
能力者専用留置場。
鶴宮は、今回の一件に関する報告書作りのため、そこを訪れていた。
「別にいいんだよ。僕は元々こういう現場での仕事が好きなんだ」
車椅子に増設した簡易机にタブレットを置き、報告書を作成する。
タイトルは、
《特別能力者学校襲撃事件・被疑者供述》。
「さて、始めようか」
万が一のことを考慮し、壁越しの対面となった。
「君は、マイカさん、でいいのかな……?」
連れてこられた少女は、俯いたまま動かない。
「単刀直入に聞こう。君たちの組織の上に《譲渡》の能力者、いるね?」
反応はない。
「君たちと一緒にいたあの人たちは、仲間?
「彼らを調べたけど、能力を持ってなさそうだね。雑用でもさせていたのかい?
「それとも、拉致した生徒から、彼らの誰かに《譲渡》させようとしたのかな?
一向に、石像のように固まっている。
「一応言っておこう。君たちは死刑にはならない」
マイカのまぶたがわずかに動いたのを、彼は見逃さなかった。
「猶予は三日だ。それが過ぎたら、君は強制的にここから出されることになる」
指も少し震えだした。
「あれのところには、行きたくないだろう?」
「はあ!?」
ここで初めて、彼女はまともに動いた。
その眼に、かつて満ち溢れていた自信はない。
あるのは、恐怖ただ一つ。
「君を捕まえたグループの親玉。君を欲しがっている」
「あ……、あああ――」
途中から、まともに声すら出なくなっている。
それを見て、鶴宮は確信した。
「また、やりやがったか」
幸い、彼女は人を殺していない。
まだやり直せる。
「大丈夫。君たちのような人間を保護してくれる団体がある。そこの人が迎えに来るから、安心していいよ」
その言葉が、彼女に届いたのだろうか。鶴宮には分からない。
既に彼女は、白目をむいて気絶していた。
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