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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
総合優勝が最高学年なのは当たり前。(体育祭編)
55/60

第54話 懲りない奴は、永遠に懲りない。

結局、誰が俺の頭を殴ったかは分からずじまい。

そうこうしている間に、決勝の相手が決まったようだ。



「いるよね……」

「ああ……」

「《ワープ》だけは会いたくなかったなあ」



おいおい、ここまで来て弱音かい。



「相手だって12人いるんだぞ? 伊藤をぶつけるにしたって、正確に当てる方法なんてないって」



めずらしく真田まで弱気な発言だ。

確かに、一発で当たる可能性は約8.3パーセント。ギャンブルもいいとこである。

ただし。



「とりあえず、確実に《ワープ》じゃない生徒なら分かるけど」


「え!?」



そもそも決勝の相手になったクラスに、《ワープ》の能力者がいるかどうか、確証はない。

ただ、戦法が、うちのクラスと似ていた。

つまり、まだ能力を使っていない生徒がいる。



「切り札は最後まで温存したいもんなあ」


「でも、あれだけ人が固まってるのに」


「そらそうだろ。俺が見たのはテントに戻ったときのあいつらだよ」


「まさか……」



俺の言いたいことを察してくれる辺り、真田はやっぱり切れ者なのだと、改めて思う。



「戻ってすぐ、伸びをしたり、寝転がったり。何かしらの仕事をし終わった仕草をした生徒なら、とりあえず分かる」



俺たちの能力は、正式な訓練を受け始めてからまだ1ヶ月。特に、スタミナは今だ追いつかない生徒も多い。

なぜなら、繊細な扱いを先に学ぶ方が多いからだ。その分、体力の消耗も早くなる。

俺や西山のように、端っからスタミナ重視の訓練はしていない。

要は、()()()()()のだ。



「最初とその次で体力を使ったような印象を受けた生徒が違う。もし、俺たちのクラスと同じやり方なら、最後に能力を使いそうなのは4人だな」


「おまえ、そこまで見てたのか?」


「割と暇なんだよ」



決して、誰も喋ってくれないからではない。



「ただ、《模写》で別の人間から借り受けてる可能性もあるから、残りの8人の中に絶対いないとも言い切れない」



厄介なのがこれだ。

複数の同時コピーが可能な能力者がいた場合、別の能力を使えば、それを見ていた相手は、間違いなく誤解するだろう。

次の瞬間、本命の能力を使われたら叶わない。



「あとうちのクラスでまだ活躍してないのは……」



《透明化》の佐藤さん、《迷彩》の岩田、《無効化》の伊藤、《液体操作》の桐山、《伝達操作》の山田さん。



「どうするつもりだ?」


「あいつらなりに策は練ってあるらしいぞ?」



◆◆◆



「花田先生~、初戦敗退惜しかったですね~!!」



嫌味をたっぷりこめながら、彼女のクラスに勝ったクラスの担任が、すり寄ってくる。

ねちっこいことで有名な、中年の男性教諭だ。



「まあ、まだまだでしたね」


「先生ご自身も、生徒に負けるくらいですからねえ~!!」



いちいち語尾を上げるな、と内心で毒づく。



「どうですかあ? これが終わったら、生徒への正しい教え方を伝授して差し上げますよ?」



今の状況で、その誘い文句が通用すると思ってんのかよ。

うっかり口に出そうなった。


そこに



「あ、古田先生~、山口先生がお呼びです~」



花田にとって、最も会いたくない人物が来た。



「チッ……、分かりました、今行きます」



文句を言いながらも、上には逆らえない辺り、この男は小物である。



「……小宮山先生も、笑いに来たんですか?」


「いえいえ。ただ、先生の噂を聞いて心配になっただけです」



彼の言葉に偽りはない。

偽りで塗り固めてきた人生を歩んでいた彼が、ここまで屈託のない笑顔を見せるようになったのも、実は最近である。



「全く。私の懲戒どうして邪魔したんですか」


「いえ、邪魔する気はなかったんですよ。ただ、榎本が責任を感じてまして」


「原因に助けられるって、どれだけ屈辱か分かってます?」



彼女の怒りは、むしろこちらによる割合が大きい。



「たったあの数分で、積み上げてきた経歴を台無しにされた気持ち、分かります?」



小宮山が表で聞いた噂とは、真相は異なっていた。

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