第54話 懲りない奴は、永遠に懲りない。
結局、誰が俺の頭を殴ったかは分からずじまい。
そうこうしている間に、決勝の相手が決まったようだ。
「いるよね……」
「ああ……」
「《ワープ》だけは会いたくなかったなあ」
おいおい、ここまで来て弱音かい。
「相手だって12人いるんだぞ? 伊藤をぶつけるにしたって、正確に当てる方法なんてないって」
めずらしく真田まで弱気な発言だ。
確かに、一発で当たる可能性は約8.3パーセント。ギャンブルもいいとこである。
ただし。
「とりあえず、確実に《ワープ》じゃない生徒なら分かるけど」
「え!?」
そもそも決勝の相手になったクラスに、《ワープ》の能力者がいるかどうか、確証はない。
ただ、戦法が、うちのクラスと似ていた。
つまり、まだ能力を使っていない生徒がいる。
「切り札は最後まで温存したいもんなあ」
「でも、あれだけ人が固まってるのに」
「そらそうだろ。俺が見たのはテントに戻ったときのあいつらだよ」
「まさか……」
俺の言いたいことを察してくれる辺り、真田はやっぱり切れ者なのだと、改めて思う。
「戻ってすぐ、伸びをしたり、寝転がったり。何かしらの仕事をし終わった仕草をした生徒なら、とりあえず分かる」
俺たちの能力は、正式な訓練を受け始めてからまだ1ヶ月。特に、スタミナは今だ追いつかない生徒も多い。
なぜなら、繊細な扱いを先に学ぶ方が多いからだ。その分、体力の消耗も早くなる。
俺や西山のように、端っからスタミナ重視の訓練はしていない。
要は、疲れやすいのだ。
「最初とその次で体力を使ったような印象を受けた生徒が違う。もし、俺たちのクラスと同じやり方なら、最後に能力を使いそうなのは4人だな」
「おまえ、そこまで見てたのか?」
「割と暇なんだよ」
決して、誰も喋ってくれないからではない。
「ただ、《模写》で別の人間から借り受けてる可能性もあるから、残りの8人の中に絶対いないとも言い切れない」
厄介なのがこれだ。
複数の同時コピーが可能な能力者がいた場合、別の能力を使えば、それを見ていた相手は、間違いなく誤解するだろう。
次の瞬間、本命の能力を使われたら叶わない。
「あとうちのクラスでまだ活躍してないのは……」
《透明化》の佐藤さん、《迷彩》の岩田、《無効化》の伊藤、《液体操作》の桐山、《伝達操作》の山田さん。
「どうするつもりだ?」
「あいつらなりに策は練ってあるらしいぞ?」
◆◆◆
「花田先生~、初戦敗退惜しかったですね~!!」
嫌味をたっぷりこめながら、彼女のクラスに勝ったクラスの担任が、すり寄ってくる。
ねちっこいことで有名な、中年の男性教諭だ。
「まあ、まだまだでしたね」
「先生ご自身も、生徒に負けるくらいですからねえ~!!」
いちいち語尾を上げるな、と内心で毒づく。
「どうですかあ? これが終わったら、生徒への正しい教え方を伝授して差し上げますよ?」
今の状況で、その誘い文句が通用すると思ってんのかよ。
うっかり口に出そうなった。
そこに
「あ、古田先生~、山口先生がお呼びです~」
花田にとって、最も会いたくない人物が来た。
「チッ……、分かりました、今行きます」
文句を言いながらも、上には逆らえない辺り、この男は小物である。
「……小宮山先生も、笑いに来たんですか?」
「いえいえ。ただ、先生の噂を聞いて心配になっただけです」
彼の言葉に偽りはない。
偽りで塗り固めてきた人生を歩んでいた彼が、ここまで屈託のない笑顔を見せるようになったのも、実は最近である。
「全く。私の懲戒どうして邪魔したんですか」
「いえ、邪魔する気はなかったんですよ。ただ、榎本が責任を感じてまして」
「原因に助けられるって、どれだけ屈辱か分かってます?」
彼女の怒りは、むしろこちらによる割合が大きい。
「たったあの数分で、積み上げてきた経歴を台無しにされた気持ち、分かります?」
小宮山が表で聞いた噂とは、真相は異なっていた。
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