第52話 人に食事を作るときは、嫌いなものを聞こう。間違って出さないように。
「おい、榎本、悪いんだけどちょっといいか?」
能力者というのは厄介なもので、一度の発動で地形を変えてしまう輩もいる。
なので、その都度地面を元に戻さないといけないのだ。
一度の競技に付き、必ず10分程度の時間が生まれる。
トーナメント形式で、あともう一度試合が終われば、準決勝が始まる。
その間、クラスメートたちは次の相手への対策を練っているのだが。
小宮山先生に、俺が一人、呼び出された。
「どうしたんですか?」
「大変言いづらいんだがな……」
珍しく歯切れが悪い。いつもはどんな厳しいことでもはっきりさせるタイプなのに。
「花田先生がマジギレしてる。おまえに」
「はい?」
疑問形で答えたものの、俺にはある程度予測がついていた。
自分を負かした生徒を、これからも教えなくてはならないなんて、大人としては屈辱だろう。
「違う。おまえが先生を復帰させるために努力してたことにキレてた」
思っていたのとやや違っていた。
「なんでも、あの人この職場辞めたがっててな……」
着任してまだ1ヶ月経ってないぞ、あの頃。
「それで、免職に厳しいうちのルールを逆手にとって、あえて負けたらしいんだけど」
「……あの特訓、意味なかったですね……」
がっかりはしていない。あれのおかげで俺の能力は新たな可能性を見出したのだ。
それでも、本来の目的からすれば、ガッツリ無意味だが。
「なんで辞めたがってるんですか?」
小宮山先生は周囲を警戒しながら
「……おまえは事情を知ってるから話すけど、あの人軍の人事部から来てるんだよ。ただ、上司の要求が無茶すぎて、ノイローゼになりかけてるらしい」
『無茶』をいくつか聞き出すと、確かに面倒だった。
「俺も、おまえの特訓に参加したっつったらえらい剣幕で睨まれた。当事者のおまえにもあたるかもしれないから、先に教えといてやる」
女って怖い。
◆◆◆
俺がテントに戻ると、準決勝の対戦相手が張り出されていた。うちのクラスは、3組が相手だった。
「どこ行ってたんだよ?」
「ちょっとな」
真田の問いを軽く受け流す。
「で、3組相手にどうすんの。確か初戦では《巨大化》を使った生徒が棒を普通に倒してたよな」
うちのクラスにも《拡大》と呼ばれる能力を持つ生徒がいるので、具体的な違いを挙げると、
・《拡大》は体の一部を大きくする。(例:手、足など)
・《巨大化》は、体が全部大きくなる。
尚、「大きくなったら密度が変わって云々」という疑問にお答えするために、この世界で使われている「擬似質量」という理論について、後で説明する。
とにかく。
「むこうだって、毎回それだよりってわけにもいかないと思うから、いくつか策は用意したよ。この場合、伊藤がキーマンだな」
「なるほどねえ」
さっきのような、いきなり自然現象をぶつけ合うようなやり方は、あちらも対策を練るだろう。
「でも、ミスッチとか、こうちゃんとかが、次活躍するって聞いた気がしたんだけど」
「それもちゃんと考えたよ。ただこれから、一番地味に活躍するのは桐山なんだけどな」
「《液体操作》? なんで?」
真田はニヤッと笑うと、
「作戦会議にいたら、おまえの面白そうな顔が見れたと思うと、残念だよ」
どうやらすごい策を立てていたらしい。
実際、そうだった。
事件については、第24話からご覧ください。
(↑リンクはれなくてすみません…)
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