第51話 苦い薬は飲みたくない。甘い毒は飲んではいけない。
短いです。明日投稿できるか難しいかもです……。
「序盤でそれをやっちゃうか~。ま、突破することだけを考えるなら、悪くない選択なんだけどね~」
校舎の屋上から、谷地は双眼鏡で棒倒しの様子を窺っていた。
後ろにたたずむ小宮山は、もう諦めていた。
教師である彼が、生徒を残してここにいるのである。誰がどう見ても不自然な光景だ。
谷地は唇を尖らせると、
「別についてこなくても良かったのに」
「そういうわけにはいかないでしょう? あんた自分の立場、理解してます?」
彼女は自身の持つ能力故に、常に狙われる存在である。もっとも、彼女が本気を出せば追跡は不可能になるが。
「今年はいいのが揃ってるって聞いてたけど、予想以上ね」
谷地の格好は、快晴だというのに、上下黒のパンツスーツ。
見てるだけで汗が出てきそうだった。
長い髪を髪留めでまとめているのだが、デザインが蝶という、傍目から見ると悪趣味にしか見えない。
「まさか、1年生からスカウトしようなんて考えちゃいませんよね?」
「それもありかなー。最近、若いのが元気ないから」
「あんた32でしょうが」
「女の年を声に出すと、嫌われるよ?」
小宮山が上司の機嫌を損ねたところで、上司の携帯が鳴る。
「あれ、今日華ちゃん、どうしたの? え? ふーん、そう。……なら分かった。こっちで手配しておいてあげる。はいはーい」
「『あの会社』と、必要以上に仲よくするのどうなんですか?」
小宮山は危機感を募らせていた。
あの会社にいる人物たちは、皆がそれぞれ危険な能力者だ。
軍や警察が警戒している以上、ある程度の距離は置いておくべきではないのか?
「何、そんなこと心配してたの?」
対する谷地は、飄々としていた。
「基本的にはいい人達だよ。ただ、いい人過ぎて普通の社会では生きにくいだけだから。悪意のある攻撃さえしなければ、向こうは何もしてこない」
「……」
「怖い顔しないでよ。私もそろそろ、行かないといけないから」
瞬きをした瞬間、彼女は屋上から姿を消していた。
◆◆◆
「気まぐれはいつものことですけど、社長、何考えてるんですか?」
井上今日華は、今日も上司の突然の思い付きに振り回されていた。
「学校なんて施設に興味を持つとは思いませんでした」
「今日華ちゃん、私を何だと思ってるの?」
今日華は眉間にしわを寄せ、固まった。
「待ってよ、もしかして出てこないの?」
「素直に出てくると思ってたのかよ」
普段から蓄積された鬱憤が限界を迎えたらしく、口調が荒くなった。
「まあ、本音を言うなら、この間誘拐された子がいたじゃない?」
「ロリコン?」
最早、人ではないものを見る目に変化していた。
社長は全力で否定しながら、
「高校生相手にロリコンはないだろう。あれはせめて中学生以下だ」
「気にするポイントはそこかよ。で、実際は?」
「相当良いのが集まってる学校なんだろう? 谷地さんが自分のとこの人間を行かせるくらいなんだから。新たな希望を、この目に焼き付けたくなったのさ!」
絶対違うだろ、と言いたいのを飲み込んで、今日華は谷地から送られてきたメールを確認する。
「とりあえず、これ持って――」
彼女の視界が真っ暗になった。
「ちょ!?」
普通の人ならパニックになるだろう。なにせ、光が見えないだけではない。
音も匂いもなくなっているのだから。
「出してください! 仕事が残ってるんです!」
直後、とある山奥から、真っ黒な球体が飛び出した。
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