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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
総合優勝が最高学年なのは当たり前。(体育祭編)
52/60

第51話 苦い薬は飲みたくない。甘い毒は飲んではいけない。

短いです。明日投稿できるか難しいかもです……。

「序盤でそれをやっちゃうか~。ま、突破することだけを考えるなら、悪くない選択なんだけどね~」



校舎の屋上から、谷地は双眼鏡で棒倒しの様子を窺っていた。

後ろにたたずむ小宮山は、もう諦めていた。

教師である彼が、生徒を残してここにいるのである。誰がどう見ても不自然な光景だ。

谷地は唇を尖らせると、



「別についてこなくても良かったのに」


「そういうわけにはいかないでしょう? あんた自分の立場、理解してます?」



彼女は自身の持つ能力故に、常に狙われる存在である。もっとも、彼女が本気を出せば追跡は不可能になるが。



「今年はいいのが揃ってるって聞いてたけど、予想以上ね」



谷地の格好は、快晴だというのに、上下黒のパンツスーツ。

見てるだけで汗が出てきそうだった。

長い髪を髪留めでまとめているのだが、デザインが蝶という、傍目から見ると悪趣味にしか見えない。



「まさか、1年生からスカウトしようなんて考えちゃいませんよね?」


「それもありかなー。最近、若いのが元気ないから」


「あんた32でしょうが」


「女の年を声に出すと、嫌われるよ?」



小宮山が上司の機嫌を損ねたところで、上司の携帯が鳴る。



「あれ、今日華ちゃん、どうしたの? え? ふーん、そう。……なら分かった。こっちで手配しておいてあげる。はいはーい」


「『あの会社』と、必要以上に仲よくするのどうなんですか?」



小宮山は危機感を募らせていた。

あの会社にいる人物たちは、皆がそれぞれ危険な能力者だ。

軍や警察が警戒している以上、ある程度の距離は置いておくべきではないのか?



「何、そんなこと心配してたの?」



対する谷地は、飄々としていた。



「基本的にはいい人達だよ。ただ、いい人過ぎて普通の社会では生きにくいだけだから。悪意のある攻撃さえしなければ、向こうは何もしてこない」


「……」


「怖い顔しないでよ。私もそろそろ、行かないといけないから」



瞬きをした瞬間、彼女は屋上から姿を消していた。



◆◆◆



「気まぐれはいつものことですけど、社長、何考えてるんですか?」



井上今日華は、今日も上司の突然の思い付きに振り回されていた。



「学校なんて施設に興味を持つとは思いませんでした」


「今日華ちゃん、私を何だと思ってるの?」



今日華は眉間にしわを寄せ、固まった。



「待ってよ、もしかして出てこないの?」


「素直に出てくると思ってたのかよ」



普段から蓄積された鬱憤が限界を迎えたらしく、口調が荒くなった。



「まあ、本音を言うなら、この間誘拐された子がいたじゃない?」


「ロリコン?」



最早、人ではないものを見る目に変化していた。

社長は全力で否定しながら、



「高校生相手にロリコンはないだろう。あれはせめて中学生以下だ」


「気にするポイントはそこかよ。で、実際は?」


「相当良いのが集まってる学校なんだろう? 谷地さんが自分のとこの人間を行かせるくらいなんだから。新たな希望を、この目に焼き付けたくなったのさ!」



絶対違うだろ、と言いたいのを飲み込んで、今日華は谷地から送られてきたメールを確認する。



「とりあえず、これ持って――」



彼女の視界が真っ暗になった。



「ちょ!?」



普通の人ならパニックになるだろう。なにせ、光が見えないだけではない。

音も匂いもなくなっているのだから。



「出してください! 仕事が残ってるんです!」



直後、とある山奥から、真っ黒な球体が飛び出した。





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