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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
総合優勝が最高学年なのは当たり前。(体育祭編)
50/60

第49話 本番で実力を出せない人は、練習だとわりと好成績。

ご感想ありがとうございます!

体育祭まではあっという間だった。


本来なら、俺はその前にイベントがある予定だった。

が、大人の事情でなしになった。

事後処理が大変だったらしい。


色々と苦難を乗り越え、体育祭は無事に開催された。



「それではあぁ! 只今よりいぃ! 体育祭をぉ、開催いたしまあァァァァァァァす!」



実行委員会の高らかな宣言が、グラウンドに鳴り響いた。



◆◆◆



「で、相談ってなんだ?」



第一種目の準備のために、10分ほど時間が空いた。

俺はその間に、小宮山先生を人気のない場所に、相談という体で連れ出した。



「今日の体育祭、父兄は見に来ないんですね。でも、かなりの数の大人が来てるのはどうしてですか?」


「……二瓶辺りから何か仕込まれたな?」



下手な芝居はしない方が良かったようだ。

視線が怖いです。



「ばれました?」



だが、俺の不安とは裏腹に、先生は声を潜めて、



「どうした? お前がそんなことに関心示すなんて珍しいじゃん」


「まあ、色々あるんですよ。やっぱり、軍の関係者ですか」


「……知ってるなら隠さない方がいいかもな。おまえの言う通りだ。ただし、他の生徒には多言するなよ? せっかくの大人の変装が意味なくなるからな」



確かに普段着だけど。



「体育祭のプログラムを見て、何か思うことは?」


「どの学年も競走ばかりですね。他の競技が綱引きと玉入れと棒倒しですか。あと鬼ごっこ?」


「何で徒競走が多いか、分かるか?」



そんな質問をされても。

まあ、二瓶さんから聞いていた時点で、予測はつくのだが。

あえて知らないふりをする。



「さあ。どうしてなんですか?」


「戦争になったとき、一番重要なのは情報をいかに迅速に、かつ正確に伝えるかだ。皮肉な話だが、能力者の台頭で、電子機器による通信は、ほぼ意味をなさなくなった。傍受、妨害何でもアリだ。そんな時、一番安全なのは?」


「味方の人間が直接行く、ですか。なるほど、だから様々な場面で『走る』力を必要とするわけですね」


「飲み込みはえーな。まあ、あとは『ルートの確保』っつー意味合いも含むな。物資の補給ルートをいかに素早く切り開けるか。そこで生死が決まるときだってあるし」


「借り物競争だけ、目的がいまいち分かりませんが」



これだけは本音だ。



「レースが始まればわかるよ。それはそうと、そろそろ第一種目が始まるぞ?」



◆◆◆



第一種目、鬼ごっこ。

相手に怪我を負わせないというただ一点の条件の下、能力の使用に制限はない。



「おし、じゃあ行ってくる!」



西山が拳を突き上げ、高らかに勝利宣言する。

クラスから1人ずつ。学年もごちゃまぜなので、最高学年の5年生も一緒に行う。



鬼はなんと。



「私、花田香織が務めます!」



先月、退職のピンチに追い込まれた教師だった。

俺のせいだけど。

話を聞くと、あのとき俺に負けたのは、生徒相手に舐めまくった怠慢の結果だったそうな。

いや、割と本気だったような気もするけ――



「では、カウントしまーす! いーち、にーい、さーん、しーい……」



久々の登場なので一応説明すると、あの先生は《流体操作》という、体から1メートル弱の範囲にある気体プラス液体を自在に操る能力を持っている。

以前授業で、俺とのトラブルを抱えている。

まあ、復帰したことだし、この間のような無茶は――




ビュオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!




……おい、なんだあの暴風は。

授業のときとレベルが違う。


本気で舐められていたのだと、このとき初めて思った。



◆◆◆




「へえ、あんたの生徒、いい筋してるじゃない」



小宮山の背後から、聞きなれた声が聞こえてきた。

一瞬、ぴくっとなるも、落ち着いた様子で振り向くことはない。



「……なんでいるんですか」


「あんたが育ててる生徒が気になってね。うちに入ってくれそうな子もいそうだし。実際来てるんだよ、履歴書が」


「……ここにいた見つかりますよ? あなたが見つかるといろいろまずいのですが」


「大丈夫、私の能力知ってるでしょ?」


「俺が喋ってるのがばれたら、周りの奴ら即動き出しそうですが」



小宮山は気付いている。ここにいる大人は少なくとも一枚岩ではない。

次の瞬間、右肩を叩かれた。



「(じゃあ、これでいい?)」



脳内に声が流れてきた。



「(《伝達操作》!? 誰か他にもいるんですか!?」


「(あの会社の人だから問題ない。それより、あんたがうちの関係者だって知ってたのは誰?)」


「(……顔までは調べてないんですか。あれですよ。今生徒を追っかけてる女教師です)」


「(……結構可愛い顔してるじゃない。電話で聞いた声だと、もっとクールな印象だったのに)」


「(本人の名誉のためにも、黙っといてくださいよ、それ)」



傍から見ると、小宮山は椅子に座っているようにしか見えない。



◆◆◆



「第3位! 1年2組! 150点!」



出鼻から調子がいい。

花田先生は着任してからわずか2か月ほど。その短い期間の間に、先生の能力をまともに見ているのは、授業を受けている2クラスだけだ。


その他のクラスや学年の生徒は、初めて見る能力に恐れをなし、まともに逃げることができなかった。

結果、1年生ながらも西山は好成績を残した。



「スタミナ鍛えないとなあ」


「でも凄かったよ! あの先生相手だったら俺らびびってたって! なあ!?」



ムードメーカーの宇田川が言うと、やはり雰囲気が違う。



「わたしらみやまっちでよかったわー」

「だよねー」

「……あの先生、怖い……」



改めて小宮山先生の評価が上がっている。



「よし、このペースで俺ポイント稼いでくるわ!」



宇田川が闘志をみなぎらせながら、男子の鬼ごっこに向かう。

運動苦手です。


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