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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
楽観視しやすい人は、上のポジションにいたらまずい。 (学校襲撃編)
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第48話 未来に繋がる話

翌日、学校に行くと、二瓶さんが皆に頭を下げていた。


なんでも、『俺を脅して現場を混乱させようとした』、という体にしてくれたらしい。

なぜ俺が選ばれたのかというと、



「犯人が適当に選んだの……」



どこで得たんだその演技力。

なまじ顔が悪くないだけに、泣き顔になると周りもつられるくらいだ。



「榎本は私の命で脅されてたから悪くないの! だから許してあげて」



鼻水垂らして顔真っ赤にして美人が訴えたら、誰がそれを否定しようか。

しかも高校生だ。



「いやあ、それだったらごめんだわー。でも相談しても良かったんじゃねーの?」



女子の中でも筆頭格の柊さんが言うと、誰も反論はしなかった。


そんなこんなで、俺はぼっちを避けることに成功した。



◆◆◆



「知らないの? この学校の先生は、ほとんどが軍の出身だよ? 表向きは隠してるけど、多分全員が元々は軍に籍を置いてるはず」



昨日の夕方、俺に『協力』するよう『お願い』に来た二瓶さんから、信じがたい言葉が飛び出す。



「え……、でも、軍と教育機関は直接関係を持たないようにって、憲法で」


「そんなルール、あのカスどもが守ると思ってんの?」



女子高生とは思えない発言だ。



「うちの親父だって、収賄贈賄ひねくりだしたらキリないよ? それはいいとして、とにかく、あんたは血縁に軍の関係者がいないから、うちよりは監視の目が甘いと思うの。だから頼むわ」


「どゆこと?」


「鈍い頭してんなあ。要は、変なとこを探らないように親父から言われた大人が、うちの行動を監視してんの。今あんたと喋る分には、ただの同級生との会話だから問題ないって見てるみたい。音拾われてたら最悪だけど、ここまで喋って大人が来ないなら大丈夫だったみたいね」



言いつつも、辺りを見回して警戒するあたり、家庭事情の複雑さを垣間見た。



「あいつは家族からの密告を一番ビビってるから。ただの同級生のあんたなら、誰も気にしないだろうし」



酷い言われようだったが、俺は反論の余地がない。



「手始めに、小宮山先生辺りから狙ってくれる? あの若さでこの学校の教師になれるなら、相当なエリートだよ、きっと」



普段からこれくらい笑えば可愛いものだが、今は恐怖以外の何物でもない。



◆◆◆



場面は冒頭に戻る。


学校の鐘が鳴ると、小宮山先生が眉間にしわを寄せながら入ってきた。



「……えー、今日は臨時で遠足に行く。うちのクラスだけだから、隣に聞いてもスケジュールは知らねえからなー」



どよめきが起こった。

『臨時』と『遠足』という言葉が、まさか実行の形で繋がるとは。



福原さんがウキウキしながら、



「どこに行くんですか?」


「おまえらに現場を見せてやるそうだ。二瓶が監禁されていたダムに行く。言っとくが、誘拐された直後だからなんて、泣き言は許されないぞ? 能力者の世界はわずかな油断が命取りになるんだから」



妙に説得力のある言葉に、反論する生徒は誰もいなかった。



◆◆◆



バスに揺られて数時間。

考えてみると、この学校に入学してから、学校の敷地の外に出るの初めてだった。


雲ひとつない空と、外の景色は、入学したときと何も変わっていない。

それでも、高揚も落胆も感じなかった。


学校自体も山間部に作られているが、二瓶さんのいた場所は、また別の、しかもかなり離れた山奥のようだった。

狭い山道を川伝いに進むと、霧が出てきた。



「着いたぞ」



バスを降りると、霧が深すぎて周りはほとんど見えない。

おまけに、5月だというのに、寒い。


まるで冬のように。



「桐山あ、おまえの能力でこの霧どけてくれ」



呼ばれた生徒が教師の指示に従う。

彼女の能力は《液体操作》。目に見えないレベルの水蒸気は無理でも、霧や雲のようにある程度の塊になると操作できるようになるらしい。

普段は距離が遠すぎて能力が届かなくても、地面に近いこの状態なら、彼女の能力は真価を発揮できる。



見る見るうちに霧が桐山の付近に集まり、空中に水の塊が出来上がる。

周りも徐々に見えてくる。


霧が無くなると、学校出たときと同じように空は晴れていた。

だが、太陽が出ているのに、寒さは全く変わらない。むしろよりひどくなった気がするくらいだ。



「よーしおまえら、よーく見とけ」


先生の後についていくと、ダムが見える場所まで来た。

ところが何やら、先頭にいた人たちがおかしい。



「なんだよこれ……!?」

「うち、目が変になってないよね?」

「……こんなとこにいたの? 優香は」



クラスメートたちが次々と言葉を失っていく。

後方にいた俺たちも、その全貌を見て納得した。



湖があった場所は一面氷が張っていた。いや、この場合、中まで凍っていると考えたほうが良さそうだった。

まるでここだけ、冷凍庫のように霜が張っていて、周りの草木も凍りついていた。


おまけに、なぜかダムがひっくり返されていた。

普段川に接してる部分が、上に来ていて、放水する部分が下になっていた。

接合部分は、かなり強引にねじ切ったような跡が見て取れる。



「今回、二瓶を助けてくれた民間企業の人がやっていった。いいか? 世の中には、こんなことが朝飯前の能力者もいるってことを忘れるな。ビシビシ鍛えていくから、しっかりとついて来い」



やることのレベルが違いすぎる。



「……康太って《個体操作》だよな……?」


「無茶言うなよ! あんなのは無理だ! 重すぎる!」



深須の疑問を渡辺は全力で否定した。



「うちの能力でも、ここまで冷やすのは無理だわ」



《温度操作》の柊さんも匙を投げるレベルらしい。



「一ヶ所に絞れば、ドライアイスくらいなら作れるけど、この凍らせてる量も、温度もヤバい」


「まあ、これをやったのは《分子運動抑制》を持つ能力者だ。その気になれば絶対零度くらいできる人だぞ?」


「《分子運動抑制》ってこんなことできる能力者なんですか!? 先生はそんな人と闘ってたんですか!?」



一番興奮しているのが、《伝達操作》の山田さんだ。なんでも、先生のことが、ちょっと気になってるらしい。



「襲撃犯とは別格だよ。襲ってきた方は、せいぜい50メートルプールが関の山だな。あの人は本気出せば海を凍結させられるぞ? 川面片っ端から凍らせられるから、海とつながる河川は全部だめになる」



地球の危機だ。

何そのチート。



「じゃあ、ダムをひっくり返したのは!?」


「それ以上は聞くな。その会社との契約違反になる」



あまり触れてほしくなかったようで、小宮山先生が頭をかき上げる。



「そこの『社長』のご厚意だ。おまえらの中にも、これに匹敵する能力者が出てくることを期待してるそうだ」



プレッシャーがデカすぎる。

クラス全員、そう思った。

次回、イベント編始まります。

練習?


カット。



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