第46話 まだ彼らには早い(後編)
待たせたです。
「へえ、君らが尻尾掴めないなんて、珍しいこともあるじゃない」
「人質を無事に連れ帰っただけでも良かったと思ってくださいよ。しかしここまできっちりした分担制とは」
異能力サポートサービス社では、社長と秘書が、今回の事件の報告書をまとめていた。
「義彦くんのせっかくの《伝達操作》の応用型、《連結追跡》まで想定してるみたいだね」
「ええ。『能力者が触れた相手Aが、別の誰かBと直接触れた場合、Aを媒介にしてBに能力を行使できる』という、《伝達操作》の一面を知らないと話が成り立ちません」
「7人の知り合いの理論で行こうと思ったのに、ボスの側近辺りで一度、直接の面識がゼロになるってのはすごいね。電子機器の台頭はここまでのことができるようになったか。あ、そうだ。昨日祐一郎には私の作った鎧を貸し忘れたんだけど」
「相手に《ワープ》がいましたからね。でもあれ、社長の能力を塗布したウィンドブレーカーですからね? まあ、防御力は最高でしょうけど」
「着るタイミング合わせてもらわないと、持ってるだけでヤベーことになるからねー。敵さんが逃げてくれて良かったよ。でも、黒幕との連絡用のアドレスは? まあ、足がつかないようにはしてるだろうけど」
「ええ。それも探ってみたんですが、ログそのものを消してるみたいで。おそらく、《電気操作》の能力者が近くにいます」
「うちのハッカーとぶつけてみたら?」
「打診はしました。でも、失敗しました。相当な暗号を組み合わせてるみたいで、解読に時間がかかる。その間に、別の通信手段を確立させるという寸法だったみたいです。完全にまかれました」
「今回は、人質を連れて帰れただけ、痛み分けと行こうか。問題ないの?」
「一応は。エラと辺見くんにはダムに残って残りの作業を。あとで紺野くんも行くそうです」
「待ってよ。ダムって今確か、祐一郎が氷山にしてるんじゃなかった?」
「上に繋がるものがないかどうか、探すのに人手がいるそうです。それにしても、国内にまだそんな組織があったとは思いませんでしたよ。社長の台頭で、ほとんどの組織は鳴りを潜めてるのに」
「別に他人がピーピー騒ごうが、私には関係ないけどさ」
◆◆◆
「旦那様、どうされたんですか? 社長が帰ってから、お顔が優れませんが」
都内の一角にある広大な日本家屋。
使用人が尋ねると、家の主は首を捻りながら、
「いやあねえ。やっぱり今回の事件は、無差別ではないのだけど、標的が分かりにくい事件だったなと思ってね」
「誘拐された子供じゃないんですか?」
「いや、話を聞いたら『縛られて気絶させられてただけだ』って言うんだよ。能力をコピーこそされた形跡はあったらしいが、捕まえた奴らが口を割らないことには、話は進まないだろうな」
「もう捕まえたんですよね?」
「あの会社のメンツがね。今奴らが監視してる。なぜかあれが、『引き渡しを明日の昼にしてほしい』なんて言い出すから」
「珍しいですね。何か考えでもあるんでしょうか?」
「いや、相手が最後の最後でダムをぶっ壊そうとしたらしい。それを二人で強引に止めたから、その後処理だろう。別に急ぐ理由もないし、承諾はしておいたがな」
「いいんですか? また学校が襲われるんじゃ」
「これだけ痕跡を残すのを嫌がる相手だ。今回は多分これで引くよ。ただし、警戒は緩めない方がいいと思うがね」
「話は戻りますけど、標的が分かりにくい、というのは?」
「前にも言ったけど、狙う時期、対象、動機が色々と無理がある。あの学校はそれなりには機能してるんだ。それをひっくり返して、何がしたいんだ? 2年生以上なら、交友関係も出来上がってきてるから信頼関係を崩す目的もうなずけるが、ほとんどが見ず知らずの相手だぞ? そこを崩してもダメージの広がりは弱いだろう」
「なるほど……『5月に』、『1年生を』狙ったから、ってことですか。でも確か、報告では他にも拉致しようとしてたみたいですよ?」
「それが余計わからないんだ」
「え?」
「今回の事件で分かったことは、向こうはいつでもさらう準備が整った状態だったってことだ。あの学校が襲われる前に、別の場所でも生徒が狙われている。警戒のレベルとしては今回とほぼ同一。なのに、それより前には、誰も怪我を負っていない。何より」
鶴宮にとっては、これは一番気になるポイントだった。
「どうせなら、4月にさらえばいいのに」
「5月のタイミングになってしまうと、授業で能力の扱いが上達しているから、ですか?」
「ああ。それも含めると、釈然としないんだよ、色々と。強いて俺の強引な結論を言えるなら」
まるで、誰かに圧力をかけているようだよ。
◆◆◆
事件が解決するまでは、体育館でマットを敷いて寝ることになっていた。
翌朝。
「よ゛がっだよ゛お゛おおおおおおおおおおおお」
誰かの泣き声で目が覚めた。
見ると、何と二瓶さんがいた。
泣いているのは抱きついている秋山さんだ。
「た、ただいま?」
そう経たないうちに、歓声が体育館に鳴り響いた。
次回、学校襲撃編最終回です。
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