第45話 まだ彼らには早い(中編)
すみません!
次の日が昇ってからは投稿できそうにないので、こんな時間に今日の分をします!
主人公たちは次回登場します!
白髪赤目の女――シャノンが逃げた相手を探しながら歩いていると、前方から見知った人物が来た。
ガタイのいい男だった。
「あれ、祐一郎さん。そっちにはいなかったんですか?」
ガタイのいい男、もとい辺見祐一郎は、やれやれと言わんばかりに首を振る。
「外れだったな。エラと若菜は一緒じゃないのか?」
「さあ、こっちに来てから別れて、それっきりです」
「捕まってたらどうすんだよ……」
「大丈夫ですよ、あの子たちは強いから」
シャノンはにっこり笑う。
自分たちが今、どこにいるのか分かっていないかのように。
「単純に強いからいいけどよお、なんか《ワープ》使う奴いないか? 体に何かぶち込まれたら洒落にならねえんだが」
「ああ、今日華がそれを心配してあれ、貸してくれましたよ?」
それを聞いた祐一郎の顔が青くなった。
「……俺、もらってないんだけど」
「あらまあ」
「それよりシャノン。このダムって確か解体するんだよな?」
「ええ、この間うちに依頼が来てましたから」
「どうする?」
「今やるかってことですか? 中にいる人たちを外に出さないと、殺人になっちゃいますよお」
何というか、喋り方がふわふわしていて、やる気があるのかないのか、はっきりしない。
「そーだ。エラに連絡して、地盤ごとひっくり返してもらいましょう。そうすれば中の人たちも落ちてきますよ!」
「鬼か!」
ナチュラルでこれなので、祐一郎は彼女の扱いに苦労している。
「まー、あれだ、勧告して出てこなかったら、中から引きずり出せばいい。シェルターにでも入ったら、おまえの能力でなんとかしてもらえればいいし」
「それもそうですね。あ、私、斧持ってきましたよ!」
「何で!?」
彼が突っ込んだのも無理はない。
「おまえのあれは戦斧だろう!?」
「解体に使えるかと思ったんですけど……」
とある事情から、とてもそうには見えないのだが、れっきとした武器である。
「夜中にそんなん持ち歩いてたら、ただのホラーじゃねえか!」
「普段、『蕎麦切り包丁』とか言って笑ってるくせに?」
「シチュエーションの問題だよ! ……まあいい。それより、本当にエラと若菜、どこ行った?」
タイミングを見計らったかのように、聞きなれた声が鼓膜を揺らす。
――ねー、ゆーいちろー。10人くらい捕まえたんだけど。あ、若菜も一緒だよ?
「エラか。今どこにいる?」
――ダムの、下流から見て左側。仮眠室があった。
「なるほど、今俺らがいるところから近いな。そう言えば、逃げた女が連れてたのって人質だろ? 早く追った方がいいんじゃねえのか?
――大丈夫。さっきあたしがマーキングしておいて、それを辿って今日華さんが行ってるから。
「……マジか」
――マジだ。
自信にあふれた返事が返ってくる。
「……名前も知らないけど、犯罪者さん。お気の毒に……」
◆◆◆
「うわああああああああああああああああああああ」
逃げている女――マイカは、今まで不幸の連続だった。
幼少期に親に捨てられ、育ったのはテロ組織だった。生きるために何でもやった。目を背けた回数は数知れない。
それでも、今ほどの絶望感はなかった。
「なんでだよ! なんで私がこんな目に!」
人によっては自業自得と思うかもしれないが、少なくとも今の彼女にとっては目の前の敵が相性悪すぎた。
「ほらほらー、人質渡さないとー、おねーさん怒るよー?」
子供を宥めるように両手を広げて迫ってくる。
ワープして安堵していたら、後ろから肩を叩かれた。また女だ。
何だ?
女能力者の団体か何かか?
「怖くないよー、おねーさん優しいからー」
めっちゃ怖い。
そこらじゅうに転がっている石や枝を掴んでは、ワープで正体不明の人物の座標に向かって放つのだが、なぜか入らない。
というか、時々速度が異様に速くなっている。
「ちっ、《速度操作》かよ!」
《ワープ》の能力は、動いていないものに対しては大変有効だが、動いているものには意外と弱いのである。
マイカは、残りの体力など考えている余裕もなかった。
残りの体力全てを使ってワープする。
あそこに戻れば、必要なものはきっと
◆◆◆
「あ、来た」
彼女を出迎えたのは、さっき監視カメラに映っていた男だった。
「なるほど、これがおまえの荷物か。それにしても色々とあるなあ。おまえの組織ってどこだ? これだけの物資を揃えるなら、相当な金が必要になるが」
突然現れたにもかかわらず、ガン無視してマイカのリュックを漁っていた。
「申し訳ねえが、ここにいたお仲間は全員捕まえた。もう警察に護送は済んでる。諦めてその子を渡してくれると、こちらとしてもありがたいんだがなあ」
体力も、気力も、残っていなかった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
マイカは、自滅覚悟で、今まで一度も使わなかった能力を発動した。
◆◆◆
「ほー、こりゃすごいねえ」
今日華は、ダムの外の林にいた。
いきなり相手が消えたかと思ったら、数分も経たないうちに、轟音と共に、ダムに亀裂が入り始めた。
「候補はいろいろあるけど、何の能力だろうなあ」
◆◆◆
「大丈夫?」
意識が戻ったマイカは、後頭部に柔らかい感触があるのを感じた。
陽は高く昇っている。
いつの間にかだいぶ時間が経過していた。
「あれ……? 生きてる……?」
「おーい、起きたよー」
声の主が分かった時点で、マイカは飛び退いた。
あの金髪少女だ。
「どしたの? 生きてるのが不思議?」
「な、なな、なんで」
マイカが発動したのは、1年に一度しか使えない能力、《過剰強化》だった。これは一定期間に一度だけ、という条件の下、使用者の身体能力を文字通り過剰に強化させるものだ。
それを使って、ダムごと破壊したはずなのだが。
「わたしとゆーいちろーに感謝してね。あれ見てごらん」
彼女が指さす方を見て、絶句した。
「なに、あれ」
ダムには、ここ数日の雨で相当量の水が溜まっていた。
そして、ダムが破壊された時点で水は全て川に流れるはずなのだが。
見たこともないような巨大な氷塊へと姿を変えていた。
所々溶けかけている。
「ゆーいちろーの能力は《分子運動抑制》。そしてあたしが《念動力》! 言っとくけど、あいつが本気出したら絶対零度、簡単にできちゃうからね? あと、あたしは半径10キロの範囲型だから」
「……」
「名前くらいは聞いたことあるでしょ? そう!
我々こそが《異能力サポートサービス社》です!」
「すみません、聞いたことないです……」
ドヤ顔が、一瞬にして赤くなった。
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