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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
楽観視しやすい人は、上のポジションにいたらまずい。 (学校襲撃編)
45/60

第44話 まだ彼らには早い(前編)

主人公たちには、まだまだ追いつけない領域のお話です。

この能力者を狙った連続襲撃事件は、急に幕を下ろした。



厳密に言うと、犯人が捕まった。



ここで俺たちは、自分たちの未熟さを、嫌というほど思い知らされることになる。



◆◆◆



夜7時過ぎ。



「……なんで突き止められてるんだよ……!?」



襲撃犯の片割れである男は、監視モニターを見ながら毒づく。

脅迫メールを送ってから、約二時間後。

友達を助けに来た、哀れな子供を捕えるつもりだったのに、来たのは。


――誰だよあいつ!


がっしりとした体格の若い男。と言っても学生ではなく、れっきとした成人にしか見えない。


アジトに使っているのは最近閉鎖した水力発電所である。老朽化が進んだため、数か月後には取り壊しが決まっている。

立地も悪くなく、電気さえ通せば監視カメラも使えたので、計画にはもってこいだった。

男が頭を抱えていると。



「どうした?」


「おいおまえ! メールを送ったのは一人じゃなかったのか!」


「そうだけど……、あれ、誰そいつ?」


「知らねえよ! 軍じゃねえだろうな!」


「……嘘でしょ、こんな短時間で突き止められる? だって今、端末のバッテリー抜いていあるのに」



女は居場所の特定を警戒して、アジトからかなり離れた場所でメールを送った。その場でバッテリーを抜いたので、電源が入ることはないと思っていた。



「やるか?」


「ちょっとだけ様子見ようよ。廃墟マニアかもしれない」



モニターの向こう側で、男はきょろきょろと辺りを見回すと、監視室に繋がる道を進んでいく。



「どうするんだよ、今、あいつら上で寝てるだろ?」


「もしものときは叩き起こす。人質も連れて帰れば問題ない。『空き人員』はまだいたはず」



続けてモニターを覗き込んでいると、男はやがて来た道を戻り、入った場所から出て行った。



「……とりあえず行ってくれてよかったな」


「にしても、あの子遅いなー」



女が退屈そうに言う。既に一人捕まえてきたのに。



「行先は書いておいたから、問題ないんだけどなー」


「いくらおまえが《ワープ》も使えるからって、《痕跡探知》の能力者がいたらまずくないか?」


「そのために、わざわざ《記録消失》の能力も貰ったんじゃん。上だって、そのくらいの対策はしてるって」


「へー、そうなんですか。もしかして、上には《譲渡》の能力者がいるんですか?」




「「わっ!?」」




二人が飛び退くと、後ろに知らない少女がいた。

日本人形のような、少し不気味な顔立ち。



「だ、誰あんた!? いや、どこから――」



監視モニターには、そんな少女は映っていなかった。

お構いなしに、少女は棒読みのまま



「やはり谷地さんの能力は素晴らしいですね。協力してもらって正解です」


「いや、この部屋には鍵が――!?」



女は、入り口を見て絶句した。

ドアノブ部分が、キレイになくなっていた。


扉の下に、何やら粉の山ができていた。



「わたしの前に、あらゆる物質は無力なのです。さあ、人質さんはどこですか?」



少女が言い終える前に、男は自身の能力を発動する。



「……《分子運動抑制》ですか。じゃああなたが辺見さんを騙った悪い人ですね」


「はあッ……!?」



男は思わず腰を抜かしそうになった。


目の前の少女に、能力が効かない。


周りの大気は間違いなく凍っているはずなのに、その少女の周りだけ、まるでバリアを張ったかのように能力の手ごたえがない。



「おや、これは社長に感謝ですね。さて、喋るんですか、喋らないんですか?」



ゆっくりと相手が歩み寄ってくる。



「おい! あれ!?」



男が助けを求めて辺りを見回したが、女がいなくなっていた。

《ワープ》を使ったらしい。



「……そうですか。さっきの女の人ですか。分かったです。追いかけます」



少女は踵を返すと、ゆっくりと部屋を出て行った。



◆◆◆



「――――はぁっ!!!」



女は部屋を脱出し、人質を監禁している部屋に飛んだ。隣では『仲間』たちが寝ている。

ここはもうダメだ。

早く逃げないと。

寝てる奴らには囮になってもらおう。

こいつを連れて帰って。

それから――



「みーつっけた」


「ひいぃぃいっ!?」



人質を連れ出そうとした瞬間、入り口から。


金髪の緑色の目をした白人の少女がいた。



「あー、その子がさらわれた子かぁ。へえ、ふぅーん」


「あ、ああ、ああ、あ………」



「渡してくんない?」



女は即座にワープした。

この能力にも弱点があって、一定以上の質量を越えたものを長距離移動させようとすると、相当なフィードバックがある。



「ガハッ……、ゲホッ、ゲホッ……」



移動した先は屋外だ。


――なんとか逃げないと。


それだけが今、彼女の体を動かしていた。



「あのう、夜分にすみません。さらわれた女の子を探しているんですが」


「――――――!?!?!?!?!?!?!?!?」



今度は、悲鳴すら上げられなかった。

闇も深くなっている中、不自然に白い髪。こいつも見た目外国人っぽい。丁寧な物腰で話す、長身の女だった。



「あ、もしかしてその子ですか! 良かったぁ」



何でこの状況でそんな明るく話せるんだよ。

普通に探し物を見つけたみたいに言うな。



「じゃあ、連れて帰らないと――、あれ?」



再び女はワープした。



◆◆◆



「なんなんだよ、畜生!」



女は人質を連れて逃げ回っていた。即離脱したいのだが、行く先々に人がいるのだ。ワープも使いすぎると体力が持たないので、ここで一旦休憩せざるを得なかった。

一回分残してよかったと、そして最後の賭けに勝ったことに安堵しながら、女は木の陰に隠れる。



「許せよ、同士」



さっきまで自分がいた建物に向かって女は頭を下げる。

そして、この異常事態を考えてみる。


今、人質を奪還しようとしたのは3人。

1人は、日本人形みたいな顔した少女。

1人は、金髪で緑色の目をした少女。

1人は、白髪で赤い目をした女。


女ばかりだった。


決して狙ったんじゃないんです。


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