第39話 「やるな」と言われたらやりたくなるけど、それを見越して「やるな」と言われるとやらない。
またこんな時間に投稿。
小宮山先生が襲われた上に、病室にいた生徒がさらわれた。
異変を感じ取って、応援が駆け付けた時には、泡を吹いて気絶していた教師と、何らかの攻撃を受けて気を失った小宮山先生以外には、誰もいなかったそうだ。
学校からの緊急通信で、軍の関係者がリアルタイムで説明した。
もはや、学校すら安全とは言い切れなくなってしまったのである。
一部の生徒は大人の失態を責めたが、そもそもの前提がおかしい。
「だって、警護のど真ん中だよ? どうやって現れたかすらいまだ不明なのに」
これを言われてしまうと、俺たち子どもは何も言い返せない。
《ワープ》を使った可能性が高いのだが、問題なのは、そこが「立ち入り禁止」だったことだ。
これはただの文言ではなく、範囲型の《無効化》能力者がいたのに、という意味だ。
説明した教師によると、この能力は「自分が訪れたことがない場所」でも、理論上移動は可能だ。
ただし、「座標に自分の能力を送る必要があって、そのルート上に《無効化》能力者がいたら、移動はキャンセルされる」そうだ。
そして、範囲型と名の付く場合、この手の無効化は、「一定範囲に入れば強制的」に行われるらしい。
更に今回は、襲撃された直後という理由もあり、数が元々多くないこの能力者をかき集め、全方位で二瓶さんのいた病室をガードしていた。
まさに鉄壁だったはずなのだ。
「それを何らかの方法を使って突破した。これはまずい。君たちの安全が全く保証できない」
大人が頭を抱えている案件を、子どもが解決できるのかと言われると、文句を言っていた生徒も黙った。
子ども特有の自由な発想を使えばどうにかなるのかもしれないが、パニックに近い状態では、平静を装うので精一杯だ。
「今すぐ、必要なものだけを持って学校の体育館に移動してください」
◆◆◆
体育館に集合した後、クラスごとで固まるよう指示された。ほとんどのクラスが揃っている中、俺たちのクラスだけ、1人分の空白がある。
やることもなく、いつ来るか分からない恐怖に皆が怯えている。
「なあ、優哉。俺は正直、さっきまでおまえの想像に反対だった。でも、この状況を説明するには、おまえの考えしか当てはまらないんだよな……」
真田が本気でしょげていた。
「わたしも、榎本くんの言うことは嘘だって言いたい。優香ちゃんがそんなことするはずないって」
秋山さんは半泣きだ。
「俺だって自分の意見は強引だと思うし、みんなにボコられても仕方ないと思う。ただ、こうなった以上は、二瓶が犯人グループとグルの可能性も考えないといけないと思う。もし違ったら、後で殴ってくれていい」
俺の考えとは、そもそも二瓶がさらわれも危害も与えられず、気絶だけさせられたという点に注目したことから始まる。
小宮山先生の話なら、一度で数人を倒せる人間が、素早くその場を離れなかったのも疑問だし、まるで先生たちが来るのを待っていたかのようにも思えたのだ。
シェルターへの移動中に襲われたらしいが、話を聞くと、移動を願い出たのは彼女らしい。
わざわざ危険な外へ出た理由が、これなら筋が通る。
そこから俺が導き出した結論。
「今回に限って言えば、犯人の目的はデモンストレーションじゃないかと思う。わざと警戒度を上げさせて、それを突破すれば、こっちが食らう精神的ダメージは半端じゃないから」
「『おまえらなんていつでも殺しに行けるよ』っていう?」
「ああ。で、仕組みは分からないけど、二瓶は何らかの形で協力したんじゃないか? そのために、厳重な警備の中に入る必要があった」
「俺としては、二瓶がそんなことするとは思えないけどなあ」
「じゃあ伊藤の意見は?」
「分かんねえけど」
そこへ、ある先生が駆け込んできた。
「高久先生の意識が戻りました! それともう一つ! 二瓶優香はテロリストの協力者です!」
全員が息をのんだ。
◆◆◆
……
…………
「……って、今頃はばれてるだろうけどね」
「しっかし、おまえよく考えたよなあ。『俺を小さくして懐に入れて、頃合いを見計らって元通り!』。おまえの能力にそんな使い道があったとは!」
とある場所。一人の男と、一人の女が話している。
大きな声だが、誰かが気付いて近づいてくる様子もない。
「使えるって分かったときは、デカいものの密輸くらいにしか使い道が思いつかなかったけど、人間にも使えるとはねえ。指定した範囲にあるものを、空間ごとまとめて小さくできるなんて」
「ただ、小さくなってる間は動けねえんだよな。それがきつかったぁ!」
「ごめんごめん。今度はもうちょっと上手くやるからさ。それにしても、自分の生徒に狙われたときの教師の顔は面白かったなあ。騙されたって分かった瞬間、人ってあんな顔をするんだね」
そう語る彼女の声は、まるできれいな夕陽を見て感動したかのような純粋さすらある。
「で、次はどうするんだ? 上からの指示ではなんて?」
「あの学校、今年はいい感じの能力者が揃ってるから、また手頃な奴を連れて来いってさ。二人もいなくなったら、あいつら焦るだろうねえ?」
「げ、また行くのかよ! どうすんだ? おまえは戻れないだろ?」
「下手に侵入して、《無効化》に捕まったら面倒だしね。そうだ。これを使おう」
そう言って、彼女は端末を取り出す。
「あいつらの学校で使ってるやつか。GPSとかは大丈夫なのか?」
「バッテリーは抜いてある。この後別の場所から、これを使って適当に脅迫状でも出せば、友達助けに来るでしょ」
「軍や警察は間違いなく来るぞ? それに、協力者扱いされてるんじゃなかったか?」
「大丈夫。それについては対策があるから」
男は、こいつ悪いこと考えさせたら本当に嬉しそうな顔するなあ、と思う。
味方だったら心強いが、敵だったら最悪ではあるが。
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