第4話 ややこしい問題は、まずは当人同士の話し合いから始めよう。
「……ごめんなさい」
「あれだろ、さっきの男子追いかけてきたんだよね?」
「……うん」
「悪いことは言わない。まず、相手の顔見よう?」
「……すみません」
画だけ見れば、「男子が女子を自分の家の玄関で正座させている」。
人によっては、
「女性に対して差別的!」
なんて意見も出てきそうだけど。ここは言わせてほしい。
こっちは死にかけたんだよ。
「部屋番号、分かってる? ちなみにここ、201号室。OK?」
「……はい。ねえ、足痺れてきたんだけど……」
「うんうん。辛いよね。でもこっちは息できなかったんだよ?」
涙目になっている。
でもここで容赦してはいけない。
「ちょっと待ってろ」
俺は、彼女を残して上の階に向かう。
「あー……」
301号室が、彼女の目的の人物の部屋だった。ご丁寧に玄関に名前を掲げている。
チャイムを鳴らすと、まだ制服のまま、部屋の主、伊藤光太郎が出てきた。
「あれ、どうした?」
「桐山が俺の部屋に来た。なんかおまえの部屋と勘違いしたらしい。悪いけど来てもらってもいいか?」
俺の表情を見て、伊藤は気の毒そうな表情を浮かべた。
◆◆◆
「あ、いた! ちょっとあんた! なんでこの部屋に―――いったぁ!」
階下に戻ると、玄関で正座していた彼女、桐山は姿を見るなり立ち上がる。
が、一気に痺れが来たらしく、生まれたての小鹿のようになった。
「くううぅ!」
涙目になりながら睨み付ける彼女を見て、伊藤が俺に耳打ちする。
「何やったの?」
「俺の部屋に来て、いきなり能力で顔周りを覆われた。危うく入学初日で死ぬとこだったよ。反省の意味も込めて、正座してもらった」
「やり過ぎじゃない?」
「10分もさせてない。俺の受けた被害を考えれば、安いもんだ」
「――ちょっと、何コソコソ喋ってんの!?」
伊藤がいるせいか、桐山の態度が再び大きくなる。
「ここじゃ近所迷惑だ。中に入って話し合いしてもらおうか」
俺は二人を強引になかに引きずり込む。
◆◆◆
「どうぞ」
俺は冷たい麦茶を二人の前に置く。
当たり前のマナーだ。
「さ、ここでとことん話し合ってもらおうじゃないの。明日もこんなことが起こってちゃ、安心して眠れやしない。あ、俺のことは気にしなくていい。いないものだと思って」
ちなみに俺は帰り際にコンビニ(一応学校の敷地内に建っている)で買った弁当を食べている。
先に動いたのは、伊藤だった。
「……あの、すみませんでした」
「何が?」
「その……体にさわ――」
「ストップ」
俺は彼の謝罪を止める。
途端に桐山が
「え? 今気にしなくていいって――」
「うん、ちょっと黙ろうか。桐山だっけ? あんたさ、手に持ってるレコーダーは何?」
こっそり録音していたのを、見逃すわけにはいかない。
「これは――」
「まさかさ、音声編集して冤罪作るつもりじゃないよね?」
「そんなつもりない!」
「じゃあ、とりあえずこれは俺が預かる。文句はないな?」
渋々ながらも、桐山はおとなしく手渡す。
「さ、続きをどうぞ」
あ、このベーコン美味しい。
「いや、ぶつかったときに、もし変なとこに触ったなら、悪か……すみませんでした」
伊藤が頭を下げる。
まだ会って一日も経っていないが、素直な謝り方のできる奴だ。
「いや……そっちがそのつもりなら……許さないでもないけど」
俺の存在があるせいか、桐山もしおらしくなっている。
「ぶつかったのはあたしのせいでもあるし――、こっちも、悪かった」
えらく早急に解決しそうだ。いいぞいいぞ。
「よし、なんか食ってけ」
俺はタイミングを見計らって台所に向かう。
「え、でももう時間が――」
「心配しなくても大丈夫だろ。どうせ桐山だって寮はここだろ?」
伊藤の疑問に、俺は難なく答える。
「俺が部屋に入れって言ったときに、門限を理由に逃げることができたはずだ。入学でいきなり門限破ったらそれこそ問題だ。寮の建物から出なければ問題はないから、俺の言ったことに抵抗しなかったんだろ?」
ただそうなると、なぜ部屋を間違えたのかが疑問として残る。
「だ、だって入り口に名札があったから!」
「名札?」
「下のところに、各部屋の番号と、名前書けるスペースあるじゃん! そこの201にこいつの名前があったから!」
伊藤の方を見ると、目をそらした。
心当たりがあるらしい。
「……今日中に直しとけ」
俺はガスコンロに火をつけた。
本日はここまでです。
明日(厳密には今日)の夜、また投稿します!
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