第38話 予想外 あまりに増えて 想定内
珍しい時間に投稿。
――二瓶の身内に、その能力者がいるらしい。前に聞いたことがあるそうだ。
なんだその展開。
「それで、なんで二瓶さんの兄が容疑者になるんだよ? 身内だろ? しかも軍の家系だろ。下手に犯罪を犯したら、軍からは追放だし、そういうのにはシビアだと思うんだけど」
――正確に言うと、義理の兄だな。あいつの姉が家を飛び出して結婚した相手らしい。
「なんで軍人の娘がテロリストに嫁入りしてんだよ……」
真実はどうせ本人たちしか知らないことだが。
「で、おまえはどうしたいんだ?」
――いや、おまえが一番近くで見てたから、何か知らないか聞いてくれって。
「それだったら伊藤に聞けよ。俺の上の階だから、あいつの方がよく見てると思う」
――そうか、ありがとう。気をつけろよ。
「互いにな」
しばらく考えて、俺はある予想に辿り着いた。
◆◆◆
――辺見祐一郎? うん、いるよ。あそこに。
「谷地さん、あの会社、まさか本気でテロ起こすつもりはありませんよね?」
小宮山は人気のない場所で、本来の職場の上司に連絡する。
――どうしたの? 何かあった?
「実は今日、生徒が襲撃に遭いまして。未遂では終わったんですが、相手がどう見ても《分子運動抑制》の能力者でして」
――なるほど。あれは使い手が少ないから、絞り込みが簡単って言いたげね。
「ええ。一応候補は数名いるんですが、軍が目を付けているのは二人。そのうち一人が、辺見さんなんです」
――もう一人は?
「襲撃された生徒の義理の兄にあたる人物です。とは言っても、軍人ではないです。ただ、近しい人間って理由で疑われてるみたいですけど」
――ふうん。まあ、安心していいよ。辺見くんなら、数日前から泊まり込みでうちに来てもらってるの。その生徒が襲われたのはいつ?
「昨日のお昼頃です。生徒に弁当配り終わった辺りなんで、多分12時前くらい」
――じゃあ大丈夫。その時間なら、バリバリ働いてもらってたから。
上司の自信満々の返事に、小宮山は安堵する。
「何やってもらったんですか?」
――ん? 暑かったから、人間エアコン。液体窒素作ってぶちまけたときは、逆に寒いくらいだったわー。
見事なまでに予想通りだった。
◆◆◆
――なんだよう、さっきはそっちから切ったくせによお。
「今そんなこと言ってる場合じゃねえ。時間がないんだ!」
真田からの電話を切った直後、伊藤にリコールした。
――どういうこった?
「とりあえず、おまえがさっき言いかけた気になることを聞かせろ!」
――え、『なんで二瓶を凍らせなかったか』ってことか?
「ああ、やっぱりそうか!」
――え、どうしたんだ?
俺はすぐさまクラスのグループ電話のボタンを押す。
◆◆◆
「チッ……!」
小宮山は再び現れた敵に苦戦していた。
いくら斥力で飛ばしても、しっかりと受け身を取られてしまうのだ。
数分前、警護しているはずの病室から、ガラスが割れる音が鳴り響いた。
中に入ると、昨日逃げた襲撃犯が、再び姿を現していた。
「ど、どうやって入ったんだ!?」
同僚が慌てふためいているが、今はそれを気にする余裕もない。
やはり狙いは彼女か。確かに、あの能力はかなり戦闘に適した能力だ。彼女の意思がなくとも、もしあの能力者が敵サイドにいれば、問題はないのだから。
それに、軍人の娘という立場もやはり魅力的に映るのだろう。人質としてさらえば、軍のプライドはへし折られる。
小宮山は相手を睨む。当然相手は吹っ飛んだが、昨日とは勝手が違った。
対策を練るのが早すぎる。
飛んだ相手は、見事な受け身を取った。
直後に、足元が白く染まる。
「クソッ!」
近づけないが、それでは二瓶から離れてしまう。
彼女はまだ意識が回復していない。
何度か斥力を発動するが、しっかりと受け身を取られてしまう。試合だったら完全に負けだが、この状態では勝ち続けているようなものだ。
「どわっ!」
再び白いエリアが広がる。
どんどん二瓶のいる部屋から離されていく。
そこに。
「先生……?」
部屋から、彼女が出てきた。
「二瓶! 中にいろ!」
そう、言ったつもりだった。
が、次の瞬間。
「ガハッ……!?」
天地がひっくり返った。いや。
ぶっ飛ばされた。
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