第37話 実力が違いすぎる場合、生き残る最善策は逃走。
翌日、俺たちはクラス委員が襲撃を受け、入院することになった旨を担任から聞かされていた。
ちなみに、これは端末のグループ電話機能を使っている。
――これを受けて、しばらく授業は行えなくなった。おまえたちには悪いが、この襲撃犯が捕まるまでは、全員、自宅学習だ。
いつになく真剣な態度の小宮山先生の言動を見て、クラスの全員が事態の重さを悟る。
――優香ちゃんの容態は?
――精密検査をしたが、今のところは問題ない。ただ、意識はまだ戻ってないから、安心はしきれない。今分かってるのは、相手の能力が《分子運動抑制》だってことだけだ。分かってるとは思うが、近づけば瞬間的に凍らされる。護衛にあたっていた軍の関係者の意識もまだ戻ってないから、それくらい強い相手だってことだ。
秋山さんの質問は、クラスのみんなが知りたがっていたことだ。
安心する人もいれば、不安に駆られる人もいる。
――食事は教師が二人ずつで持っていく。荷物用ポストから入れるから、メールを見てから各自持って行ってくれ。
直接手渡さないのは、相手が変装している場合も考慮に入れてだ。
――授業はこれを通してやるから、明日はこれをテレビに繋いでおけ。そうした方が見やすいから。
――『『『はい』』』
それを機に、先生からの通話が切れた。
俺は個人的に、先生の番号にかけなおした。
――どうした?
「怒らないで聞いてほしいんですが、花田先生の復職のための競技はどうなるんでしょうか?」
――ああ、それなら心配しなくていい。今回の事態を受けて、花田先生の免職はなしになった。この非常時に、戦力をみすみす手放すなんてできねえからな。おまえの特訓は、今回はこれで終わりだ。でも無駄な時間ではなかった。それは俺が保証する。
「ありがとうございます」
――他に何かあるか?
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました。失礼します」
電話を切ると、部屋の中が静かになった半面、外では警戒用のヘリがうるさく飛んでいる。
「……やることねえな」
今日一日は、学校の警備体制の強化に職員も全員が駆り出されているらしい。
テレビをつけても、学校襲撃のニュースばかりだ。
◆◆◆
「引き続き警戒をお願いします。なにせ襲われたのは二瓶少将のお子様ですから」
見回りに来た軍の人間は、そこだけ異様に念を押して、病室を後にする。
「ったく、面倒事は全部俺たちに押し付けて、手柄だけ持っていこうって算段かよ」
同僚が脇でぼやくが、小宮山はそうも言ってられない。
狙われたのは自分の生徒なのだから。
学校の敷地内にある病院の一室。
厳戒体制を敷いている今、たった一人のために大勢の大人たちが警護に当たっている。
「で、襲撃犯の情報は聞いたか?」
「いえ。先輩はご存じなんですか?」
「ああ。これはあくまで憶測にすぎんが、なんでも何年か前に失踪した人間の能力に酷似してるって話だ」
「失踪した人間?」
「ああ。おまえの方が年が近いから、名前くらいは知ってるだろ? 確か――」
その名前を聞いた小宮山は、驚愕に目を見開いた。
「あれ、知り合いだったか?」
「いえ、そうではないんですが、ただ……」
本当は隠しておくべき情報である。
しかしあまりのショックに、脳の理解が追い付かなくなっていた。
なんで、あの会社の人間が?
◆◆◆
暇だし寝ようかと思っていたところ、電話が鳴った。
「誰ですか?」
――俺だよ。
詐欺か。
「声でおまえって分かんなきゃ今頃切ってるぞ」
――そうカリカリすんなって。昨日の、おまえも見てただろ?
「襲撃犯と先生たちの戦闘か? 伊藤の方が階が上なんだから、良く見えただろ」
――ああ。でも気になることがあってさ、おまえの意見も聞きたい。
「んだよ?」
――襲撃犯は、どうして逃げるときに二瓶を置いていったんだ?
「そりゃあ、あの人数相手に逃げるには、人が多かったらまずいだろ」
――その前に数人倒してるのに?
「そうだけどさ……」
――それに、《凍結》っぽい能力なのになんで先生たちは警戒したんだ? あの規模だったら捕えらえただろ?
「《分子運動抑制》が相手だぞ? 凍結の上位互換だよ。凍結と違って、炎の能力じゃ対抗できないから、そうせざるを得なかったんだろ」
――詳しいな?
「それ以外に、先生たちが距離を取る理由が分かんねえだけだ。これ以上ないならもう切るぞ」
――待って待って! もう一個だけ!
「あ?」
――二瓶は何で外にいたんだ?
「どうせあれだろ、軍人の娘だから、シェルターにでも移動させてたんだろ?」
あまりのしつこさに、俺の口調も徐々に荒くなっていく。
そのとき、キャッチホンが聞こえてきた。
「あー、悪いけど別の人からかかってきた。切るぞ」
――あ、待って思い出してたもういkk――
伊藤の制止も聞かず、俺は電話を切った。
「もしもし?」
――おう優哉。今大丈夫か?
真田だった。
「今ちょうど寝ようとしたら伊藤から電話かかってきた。その途中で太一からかかってきた」
――悪い、邪魔したか?
「いや、むしろ助かった。あいつ無駄にテンション高いからムカついて」
――悪気はねえと思うんだよ。それより、噂は聞いたか?
「噂って?」
――さっきクラスのメンバーとグループ電話してたら、秋山が妙な情報を掴んでてな。
「秋山さんが?」
次の瞬間、真田は信じられないことを言い出す。
――二瓶を襲ったのは、あいつの兄じゃないかって言うんだよ。
あっちとこっちが整理がついたら、繋げます。
毎日投稿します!
面白いと思ったり、続きが気になるなぁと思ってもらえたら、ブクマ登録や評価をいただけるとモチベーションに繋がります!
ご意見、ご感想もお待ちしてます!




