第36話 『怖い怖い何が怖い?』『見えないものが一番怖い』
いつもより早めの更新です。
明日はどうなるか…
「いいか!? 部屋に入って鍵を閉めろ!」
弁当を持ってくるのが、俺が最後でよかったかもしれない。
小宮山先生は急いで爆発音のした方へ走って行った。
音はちょうど、俺の部屋のベランダの方から聞こえた。窓を開けていたので、間違いない。
窓から外を見ると、道の真ん中で煙が上がっていた。その周りには、数人の人が倒れている。
やがて、煙の中から誰かが現れる。遠くて姿はぼやけているが、背格好からして長身の男っぽい。
そして、脇に誰かを抱えていた。
◆◆◆
小宮山が到着したころには、既に数人の教師と、謎の人物との間で戦闘が始まっていた。
相手は長身の男。
気絶した生徒を脇に抱えながら、たった一人で善戦している。
小宮山はしっかりと相手を見据えて、能力を発動する。
彼の能力は、視野に入ったものを飛ばす《斥力》である。
当然、相手はぶっ飛ぶ。
「生徒を確保しました!」
同僚の声に一同のやる気が戻る。今まで押され気味だったのは、人質を取られていたからである。
炎を出す者、砂を纏う者。拳を構える者。
小宮山も臨戦態勢を取る。増援も近づいてきた。
相手の能力は不明だが、多勢の味方、そして人質のいない状態。
普通なら諦めてくれるのだが。
「やる気満々だな……」
相手は逃げるつもりもないらしい。
ボクシングのような構えをとる。
小宮山は考える。
彼の能力には、対象が視野に入っていなければならない、という制限がある。
視野から外れたものに斥力は使えない。
そしてもう一つ。下手に弾き飛ばすと、相手を逃走させる可能性もある。
斥力のベクトルが、視線と一直線になるからだ。
どうしても相手が自分から離れてしまうので、引き寄せることができないのである。
ふと、空気が冷たくなった気がした。
「――ッ!!」
全員が一気に後ろに飛んで距離を取る。
直後、数秒前まで自分がいた場所に、霜が張っていた。
能力者を中心に、一気に地面が白くなる。
普通に考えれば、《凍結》の雑魚タイプだ。
「でもこれは違うよな……」
温度の下がり方、また能力が発動した瞬間、少しだが確実に、向こうに風が吹いた。
その霜は、恐らく「水」ではない。
「《分子運動抑制》かよ……!」
小宮山は毒づいた。
《凍結》とは、単純に冷気を発生させる能力だ。だが、これは炎の能力者がいれば対処が利く。
冷気を操って攻撃を繰り出すときもあるが、相当近距離を取らない限り、凍らせるのはまず表面からだ。
だが、《分子運動抑制》は、その上位互換である。
この二つの能力は非常によく似ているが、《凍結》が表面から凍るのに対し、こちらは瞬時に中まで浸透する。
「冷えるから固まる」のではなく、「固まるから冷える」。
今、相手が凍らせたのは、水も含めた、「大気」。
空気中のほとんどの割合を占める窒素や、酸素もまとめて凍らされているのだ。
風が発生したのは、あるべきはずの空気が無くなったためだ。
逃げるのが遅れれば、どうなっていたかは想像にたやすい。
近距離線が一気に難しくなった。炎の能力者もいるが、酸素まで凍結させられていては、下手に能力を使えない。
ジリジリと、睨み合いが続く。
「小宮山! 下がれ!」
後ろから別の教師の声が聞こえた。
そのままバックステップで下がると、上から白煙が降ってきた。
味方かと思ったが、そうでもないらしい。
煙が晴れると、襲撃者は姿を消していた。
「軍部に連絡を!」
指揮を担当する学年主任が指示をすると、他の教師たちが一斉に動き出す。
「生徒は!?」
「意識は失っていますが、脈はあります!」
全員がバタバタと動き回る中、小宮山は今だ白い地面を踏む。
予想通り、土も凍っていた。
「おい、この生徒、おまえのクラスじゃないか!」
「え?」
同僚に掴まれて見に行くと、
「二瓶……」
見覚えのある、長い黒髪の少女が、苦痛に顔を歪めたまま、気絶していた。
毎日投稿します!
面白いと思ったり、続きが気になるなぁと思ってもらえたら、ブクマ登録や評価をいただけるとモチベーションに繋がります!
ご意見、ご感想もお待ちしてます!




