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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
楽観視しやすい人は、上のポジションにいたらまずい。 (学校襲撃編)
37/60

第36話 『怖い怖い何が怖い?』『見えないものが一番怖い』

いつもより早めの更新です。

明日はどうなるか…

「いいか!? 部屋に入って鍵を閉めろ!」



弁当を持ってくるのが、俺が最後でよかったかもしれない。

小宮山先生は急いで爆発音のした方へ走って行った。

音はちょうど、俺の部屋のベランダの方から聞こえた。窓を開けていたので、間違いない。


窓から外を見ると、道の真ん中で煙が上がっていた。その周りには、数人の人が倒れている。


やがて、煙の中から誰かが現れる。遠くて姿はぼやけているが、背格好からして長身の男っぽい。



そして、脇に誰かを抱えていた。



◆◆◆



小宮山が到着したころには、既に数人の教師と、謎の人物との間で戦闘が始まっていた。

相手は長身の男。

気絶した生徒を脇に抱えながら、たった一人で善戦している。

小宮山はしっかりと相手を見据えて、能力を発動する。



彼の能力は、視野に入ったものを飛ばす《斥力》である。

当然、相手はぶっ飛ぶ。



「生徒を確保しました!」



同僚の声に一同のやる気が戻る。今まで押され気味だったのは、人質を取られていたからである。

炎を出す者、砂を纏う者。拳を構える者。

小宮山も臨戦態勢を取る。増援も近づいてきた。


相手の能力は不明だが、多勢の味方、そして人質のいない状態。

普通なら諦めてくれるのだが。



「やる気満々だな……」



相手は逃げるつもりもないらしい。

ボクシングのような構えをとる。


小宮山は考える。

彼の能力には、対象が視野に入っていなければならない、という制限がある。

視野から外れたものに斥力は使えない。

そしてもう一つ。下手に弾き飛ばすと、相手を逃走させる可能性もある。

斥力のベクトルが、視線と一直線になるからだ。

どうしても相手が自分から離れてしまうので、引き寄せることができないのである。


ふと、空気が冷たくなった気がした。



「――ッ!!」



全員が一気に後ろに飛んで距離を取る。


直後、数秒前まで自分がいた場所に、霜が張っていた。

能力者を中心に、一気に地面が白くなる。

普通に考えれば、《凍結》の雑魚タイプだ。



「でもこれは違うよな……」



温度の下がり方、また能力が発動した瞬間、少しだが確実に、向こうに風が吹いた。

その霜は、恐らく「水」ではない。



「《分子運動抑制》かよ……!」



小宮山は毒づいた。

《凍結》とは、単純に冷気を発生させる能力だ。だが、これは炎の能力者がいれば対処が利く。

冷気を操って攻撃を繰り出すときもあるが、相当近距離を取らない限り、凍らせるのはまず表面からだ。


だが、《分子運動抑制》は、その上位互換である。

この二つの能力は非常によく似ているが、《凍結》が表面から凍るのに対し、こちらは瞬時に中まで浸透する。



「冷えるから固まる」のではなく、「固まるから冷える」。



今、相手が凍らせたのは、水も含めた、「大気」。

空気中のほとんどの割合を占める窒素や、酸素もまとめて凍らされているのだ。

風が発生したのは、あるべきはずの空気が無くなったためだ。


逃げるのが遅れれば、どうなっていたかは想像にたやすい。



近距離線が一気に難しくなった。炎の能力者もいるが、酸素まで凍結させられていては、下手に能力を使えない。



ジリジリと、睨み合いが続く。



「小宮山! 下がれ!」



後ろから別の教師の声が聞こえた。

そのままバックステップで下がると、上から白煙が降ってきた。

味方かと思ったが、そうでもないらしい。


煙が晴れると、襲撃者は姿を消していた。



「軍部に連絡を!」



指揮を担当する学年主任が指示をすると、他の教師たちが一斉に動き出す。



「生徒は!?」


「意識は失っていますが、脈はあります!」



全員がバタバタと動き回る中、小宮山は今だ白い地面を踏む。

予想通り、土も凍っていた。



「おい、この生徒、おまえのクラスじゃないか!」


「え?」



同僚に掴まれて見に行くと、



「二瓶……」



見覚えのある、長い黒髪の少女が、苦痛に顔を歪めたまま、気絶していた。

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