第33話 ギャグとシリアスが半々の作品のジャンルは果たしてどちらか?
意外に思われるかもしれないが、この学校は、テストは期末だけである。
なので、5月に体育祭をやるという無茶が可能なのだ。
そんなある日。
「襲撃テロ?」
「ああ」
体育祭で《もっとも評判の悪い》競技の練習中、真田がそんなことを言い出した。
俺たちが入学する少し前から、学校ばかりを狙ったテロリストがいるのは聞いていた。
4月辺りは鳴りを潜めていたが、ここ数日になって再び活発に動き出したらしい。
「昨日、ついにある学校の敷地内で被害者が出たらしいんだよ」
「警備員は?」
「見事に鎮圧されたらしい。今、警察と軍が警備体制の見直しをやってるって」
そうでもしなければなるまい。
以前に小宮山先生の言ったことが事実なら、テロリストにとってもここは宝庫だ。
脅迫なり拉致なりして、戦力にできれば大儲けである。
「んで、なんでその話を俺にする?」
「いや、おまえの能力って、時間制限なかったら結構役立つだろうな、と思ってさ」
「まぁなぁ」
快晴な空の下、俺は自分の能力を改めて考えてみる。
俺の能力、《バリア》は、表面は硬さを自由に変えられるし、結構な衝撃を受けても、中にいる分には問題ない。
ただし、真田の言うように、一度の発動で連続して使えるのは3~5分。
しかも、俺と、身に着けている服以外は生物無生物を問わず、バリアの外にはじき出してしまう。
意外と不便だ。
「でも、おまえのバリアって、先生クラスの能力者の攻撃もガードできるんだろ?」
「それは否定しないけど、どう考えても時間制限があるこっちの方が不利だって。相手が長期戦仕掛けて来たら、逃げるしかない」
花田先生の授業のおかげで、次の発動までの時間は大幅に短縮できたものの、使い勝手の悪さは多い。
「試しにさ、10秒だけ発動したら、そんなに体力使わないから、連続して行けるんじゃないかって思ったけど――」
「ダメだったのか?」
「ああ。なんかわかんないけど、俺の能力って、一度の発動で、1回分に必要なエネルギー全部使うみたいなんだよ。だから、解除して余った時間分は損」
「めんどいな……」
「男子、何無駄話してるの?」
動きが止まっていたのを、二瓶さんに見とがめられた。
「なあ、優香。おまえ今襲われたら、自分の能力でどうやって反撃する?」
真田が急に問うたが、彼女は迷う様子もなく、
「捻じ曲げる」
と答えた。
「でも、それやったら相手死なないか?」
「手加減くらいできるわ! それに、さっき先生たちが話してるの聞いたけど、今日の夕方から、全国の学校の警備が強化されるんだって。心配しなくても大丈夫でしょ」
そんなことを言っていると、実際に来そうだ。
「あれ、秋山は?」
「……猫の制御がうまくいかなくて、練習してる。それにしてもさ、体育祭なのにレースが多すぎない? 別に実戦形式があってもいいと思うんだけど」
俺たちの出る最も評判の悪い競技、それは《障害物競走》である。
なぜこれが最も評判が悪いの言われるのか。理由は主に2個ある。
「当日まで内容が非公表って、他の競技と比べておかしくない? おかげでどう練習したらいいか分からないから、周りからはサボってるみたいに思われるし」
障害物が分かってしまうと、それに合わせた能力者をクラスで選抜するので、内容が当日まで不明なのだ。先輩たちの話によると、コースは毎年変わるらしい。
「借り物だってあるし、クラスでメドレーのリレーやるんだから、わざわざ競走なんて別枠作らなくてもいいのに」
この体育祭には様々な人間が訪れる。これも同じく先輩たちの話だが、将来への品定めの意味もあるらしい。
そんな中、他の競技と比べても、障害物競走はポイントが低い。
なぜなら、他の競技が能力の方向性が決まっている中、障害物競走だけは、何の能力が必要なのか、当日まで不明なためだ。
ちなみに、借り物競争に出場する福原さんの場合、お題が無生物なので、自身の《物質生成》で作り上げられる。彼女にぴったりの競技である。
じゃあ、浜田はと言うと、単純に棒倒しに出れなくて、障害物競走が嫌で、残った男子でジャンケンして勝ったからだ。
「まあ、掘り出し物を見に来てくれる人だっているだろうしさ?」
「真田はいいだろうけど、うちはお父様の目もあるし」
聞けば、二瓶さんの家は軍人の家系なのだそうだ。
彼女は一人娘らしく、親の期待を一身に背負っている。
今の時代、女だって軍にいるのだ。
彼女は軍に入ることを目標に、今まで生活してきたらしい。
「ギャラリーの少ないのを選んだってバレたら、なんて言われるかな」
遠い目をしている。お父さんそんなに怖いのか。
俺たちが今している《練習》は、あらゆる状態を想定して、いかに迅速な対応を、個人でできるかをシミュレーションするという、何とも地味なものだった。
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