第32話 クラスが一丸になるシーンは、意外とない。
セーフ。
「えー、では、今から競技を読み上げるので、自分の出たいものに手を上げてください」
5月1日。最初の授業はLHRだった。
今月末に行われる、《異能力体育祭》。通常の学校の体育祭とは異なり、異能力の強さが物を言う。
学級委員の二瓶さんが、壇上でプリントを読み上げる。
「まず一つ目、鬼ごっこ。男女一人ずつ」
初っ端からふざけているようにも聞こえるが、弾丸のように人間が移動することを考えると、恐ろしいものがある。
手が2本、上に向かって伸びている。
「じゃあ、男は宇田川、女子は西山。他にいませんか?」
意義がないようなので、この競技はこの二人に決まった。
「次、棒倒し。これは人数いりますね。男女各6名」
これはなかなか決まらなかった。希望者が多いからである。
最終的にはジャンケンになった。
「では、男子は、伊藤、岩田、大山、田部、深須、渡辺。女子はきらら、茜、葵、恵利奈、真由、梨花子で」
次の競技、借り物競争は、男子が浜田、女子が福原さんだった。
「あと残ってる人は?」
残りは、秋山さん、俺、真田、二瓶さんだ。
「あそこでパーを出していれば……」
悔やんでも仕方がない。
「……じゃあ、残りの人で、この一番評判が悪い奴をやります。では次に、全員参加メドレーの順番を決めたいと思います」
簡単に言えば、この学校の敷地に作られたコースを20人でつなぐ。これはクラス別対抗のため、学年が異なっていようが関係ない。
低学年が高学年に勝つことも珍しくないらしい。
「……誰がトップがいいと思いますか?」」
勝てるかどうかは、この采配も大きくかかわる。
◆◆◆
その日の放課後。
俺は花田先生の退職を回避するため、別の大会に出場しなければならない。
そのための練習も、毎日怠らずに続けてきた。
「結構タイムが縮まってきたな。あと4秒速くできれば、上位は確実に狙えるぞ!」
ストップウォッチで時間を計りながら、監督する小宮山先生が嬉しそうに言う。
最初に会ったときは冷たそうな人だと思っていたが、こうして話してみると気さくな人だった。
「動体視力はどうだ? 榎本は《速度操作》じゃないから、体感時間は変わらんだろうしな」
「……正直、結構しんどいです」
俺が出せると判明した速度は、最高で時速350キロ。
新幹線よりも速い。しかも、徐々にではなく、瞬間的に加速するため、目が慣れない。
連日の訓練で、ある程度の速さまでは目が追い付くようになっていたが、そこをクリアしなければ上位は難しい。
せめて完走で評価してくれたらいいのに。
目を酷使しているせいか、最近授業で視野がぼやける。
「そうか。まあ、おまえがしでかしたことだから、特別扱いってわけにはいかないのが難しいな」
分かっている。
花田先生にピンチをもたらしたのは、他でもない俺である。
「自分のケツは自分で始末付けますよ。あと1時間、お付き合い願えますか?」
「任せろ。体力には自信がある」
どうやら、小宮山先生としても花田先生に辞められるのは本意ではないようだ。
美人だもんなあ。ホの字なんだろうなあ。
俺は苦手だけど。
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