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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
落とし穴はどこにあるか分からない
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第30話 今こうしている間にも、誰かの人生には変化が起きている。

「困りますねえ」



日本国軍本部。その大会議場にて、一人の男に焦点が当たっていた。



「勝手なことをされては困るなあ、鶴宮()()。教育現場に関して、我々は干渉しないように言われているんだよ?」


「はあ」


「今回ばかりは、はぐらかすのはよしたまえ。君の行動は、既に看過できるものじゃない」



誰かは笑い、誰かは拳を握る。

ここに、味方は一人もいない。



「ここで、鶴宮知明中将に対する除籍処分を下すことを提案するが、異論のある者は?」



出来レースを用意しておいて、どの口が言うんだと普段ならツッコミを入れているところではあるが、今回ばかりはそうもいかないらしい。



「君は図に乗り過ぎたんだ。過去の栄光にすがって、やりたい放題できるほど、今の社会は甘くないよ?」


「……別に私は栄光などあった時期はありませんよ。あなたたちが勝手にやったことでしょう?」


「君の行動に対する正当な評価に、ケチをつけるつもりかい?」



内容に思いっきり矛盾が生じているが、そこを指摘したところでスルーされるだけだろう。


と、なれば。



「……まあ、()()が反対しないのなら、私はおとなしく軍を去りましょう。これはお返しします」



胸に輝く階級証を、鶴宮はいとも簡単に外す。

それを机の上におもむろに置く。



「もとより未練はありません」



鶴宮は頭を下げると、車椅子の向きを変えようとした。



「それにしても、よくできた嘘だった」



1人の将校が、待ってましたと言わんばかりに口を開く。



「たかが無能力者に、あの戦争を止められたなんて嘘を」



鶴宮は挑発に乗るほど短気ではない。ただ、つい先日の作戦が大失敗に終わったことは、完全に蓋をしているようだった。



「で、私がいなくなった後で、あれはどう管理するんですか?」


「そこは君が心配するところじゃないよ。さっさと出ていけ。一般人の立ち入りは無用だ」



今度こそ、鶴宮は部屋を出ていく。



◆◆◆



「鶴宮さんがクビになった?」


――ええ。今回の競技の立案者に、軍の関係者の名前があったって理由でね。金絡みのイベントには絶対自分の名前出すくせに、こういう時だけ都合がいいんだから。



山奥にそぐわないコンクリート建ての雑居ビル。

事務室、と書かれたプレートがぶら下げてある部屋で、井上(いのうえ)今日華は谷地からの連絡を受けていた。



「……どーするんですか。社長が知ったら大暴れしますよ?」


――もとより、それも狙いでしょ? あの人が暴れたら、世論は間違いなくあの人に対して冷たくなる。


「うわー……」



今日華は頭痛の種がまた増えたなあ、と思いながらこめかみをグリグリする。



◆◆◆



「それで? この年で無職なった気分はどうだい?」



鶴宮が自宅に戻ると、庭に《社長》がいた。

思っていたよりも早く情報を掴んだらしい。



「もとより俺は閑職だ。そこまでピリピリするような現場でもなかったし」


「結局、鶴宮さんが中将って立場だったのって、あの戦争の終戦の立役者だからだよね」



鶴宮はぶっきらぼうに



「おまえがそれを言うか。あの戦争の()()()()のおまえが」


「わたしが介入しなくても、いずれはああいう未来だったんじゃない?」


「そこは否定せんがな」



ふと、鶴宮は社長の手に視線が動いた。

まだ太陽は沈んでいない。

だが、社長の手には一升瓶があった。



「……なんで家内が好きな銘柄なんだよ」


「だって鶴宮さん、現金も現物も受け取らないじゃない。奥方のためなら貰うでしょ?」


「なあ、なんで人にものを渡すだけなのに、袖の下みたいな言い方するんだ?」


「私にとって、物のやり取りなんてどれも同じに見えるだけだよ。ただ、相手がどうやったら受け取るかって考えると、何かしらのメリットがないとね」


「……」



鶴宮が無言で手を上げると、使用人の早馬がそれを受け取った。



「おまえはこれからどうするんだ? 私が軍にいない以上、奴らの嫌がらせはひどくなるぞ? それに、谷地さんには謝っておかないとな。おまえの提案した競技、開催されなくなりそうだから」


「あー、あれねえ。あれって、軍のスパイが学校にいて、それを辞めさせないためでしょ?」


「厳密に言うと、そのスパイが十中八九、殺されそうだからだ。谷地さんたちの活動のためには、軍のブラックな部分を暴く必要がある。彼女がもし谷地さん側になれば、軍の隠してきた情報は駄々漏れになる」


「彼女って、女?」


「そうだが」



社長は、へー、と奇妙なポーズをとりながら



「ねえ、鶴宮さん?」


「うん?」


「人間って、やるなって言われたことってやりたくなる生き物なんだよね?」


「おい、何を考えてるんだ?」



今まで社長が動かなかったのは、鶴宮の軍での立場が、ブレーキをかけていたからである。

しかし、それが無くなった今。



「鶴宮さん、定年は先延ばしだ」














ぼさぼさの髪、全てが黒い和装。

貼り付けた笑顔、開いているのかと聞きたくなるような糸目。



「何するつもりだ?」











「ん? ぶっ潰す」

さて、主人公は無事に出場できるのでしょうか?



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