第3話 勘違いには許されるときと、そうでないときがある。
ここ、〈特別能力者学校〉は、学校にしては広すぎる土地を持っている。
一辺10キロもの正方形の地域を、国有地にすることによって、それを可能にしている。
ちなみにこの学校は、全寮制である。一人一部屋が与えられ、長期休暇以外は、ここでの生活が必須となる。
だが、能力者を育てる名目で大量の税金がつぎ込まれているので、学費はない。
〈学びの場〉よりも〈実験の場〉なのだ。
入学式の帰り道、俺は隣の席の男子、伊藤光太郎と一緒に歩いていた。
「そろそろ教えてよ。一体何の能力?」
改めてみると、こいつかなりのイケメンである。
あの桐山とかいう女、怒ったふりをして実は「キャー、イケメン!」とか思ってるんじゃなかろうか。
当の本人は、俺のそんな邪推には全く気付く様子もなく、
「いずれはバレるしなあ。俺、《無効》の能力なんだよ。ただ、直接触らないと意味ないけど」
「ああ、そういうこと」
確かに、人前では言いづらかろう。
《無効》とはその名の通り、他者の能力を無効化する能力だ。ただし、一口に《無効》と言っても種類がある。
仮に、《凍結》の能力者を相手にした場合。
彼のように、能力者や能力そのものに直接触れて無効化する。
一定距離内に入ったら即座に無効化する。
上記の二つは、条件を満たしている間、相手は能力を使うことはできない。
ごくまれに、「周りは凍ってるけど、自分は全く冷気を感じない」なんてパターンもある。
「確かに、嫌われ者だからなあ」
能力者にとって彼らは、相性による優劣を除けば天敵だ。かくいう俺にとってもそうだが。
「オンオフは?」
「できない」
「あちゃー」
無効化の能力も、制御できる人とできない人がいる。彼は後者だった。
これができれば、周りからの評価もだいぶ変わる。
合点がいった。
「だからか。あの桐山って女子の操作してた水に触れたから。無効化の能力は、操作してる物体の慣性までは消せないから、勢い余って教室があんなことに」
「ほぼ正解。あの先生がいなければ良かったんだけど」
そう言えば、あの後渡辺は帰ってこなかった。
別に心配してないけど。
「まあ、水道に関しては、非があるのは桐山だし、気にしなくていいんじゃね? 水道代だって、どうせ税金だ」
「……そう言ってもらえると助かる。でも、ぶつかった俺も悪いから……」
なんだろう。悪いやつじゃないのは分かっているのだけど、胸のあたりがムカムカする。
◆◆◆
寮の自室。ほとんどアパートだ。なんと1LDK。学生が住むには贅沢なような気もする。
「ふーっ……」
あいつ、伊藤もこの寮にいるらしい。
この学校にはいくつか寮があって、それぞれに違う種類の部屋がある。しかも、希望する部屋がある寮に住めるのだ。
俺が希望したのは「和室がある」だった。フローリングだけだと、どうにも落ち着かない。
条件を満たすのはここだけだったらしく、学校からは一番遠い場所にある。
ただし、徒歩五分だが。
部屋の電気をつけると、開封していない段ボールがいくつもある。
今日はこれを片付けなければいけない。
まずは〈服〉と書かれた段ボールに手を伸ばす――
ピンポン!
誰だ、こんな時間に。
鳴らし方が「ピンポーン」じゃなくて「ピンポン!」だったのにも腹が立つ。
早押しクイズじゃねーよ。
ピンポーン。
ピンポーン。ピンポーン。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
……カメラ付きインターホンの寮にすればよかった。
「はいはいどなぁ―――!?」
扉を開けた瞬間、呼吸ができなくなった。
何かが顔の周りにまとわり着いている。
なんか視界がぼやけてる。
何が起こった!?
「××××××××!」
なんか音が聞こえるけど、はっきりしない。
同時に、顔の周りの「何か」が無くなる。
「……えっと」
彼女、桐山茜はポカンとした表情を浮かべ、
「……あんた誰?」
こっちのセリフだ。
この後、約1時間後にもう一本、投稿します!
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