第27話 時間は常に理不尽な動きをする。
数日が経ち、四月も終わりが見えてきた。
あの日以降、花田先生は謹慎処分を受けており、学校には来ていない。
まさかあの程度のことでここまでの事態になるとは思っていなかった。
能力開発の授業以外では、生徒に優しかったこともあり、隣のクラスから痛い視線を浴びていた。
花田先生に一度は反旗を翻した面々も、事態の急な展開に、手のひらを返したように無関心を貫いていた。
唯一、味方をしてくれたのは西山くらいだが、彼女の説得に、隣のクラスの生徒はだれも耳を貸さなかった。
◆◆◆
「榎本! ちょっと来い」
昼休み、友達と弁当を食べていると、小宮山先生が教室に顔を出した。
「どうした? 何かやらかしたのか?」
「入学初日にやらかしたおまえと一緒にすんな」
伊藤のからかいを受け流すと、俺は小宮山先生の後に続いた。
人気のない場所で、先生は足を止めた。
「……それで、どうなりました?」
先生は周りを見回してから、
「少し面倒な話になるぞ。いいか? 今日、全国の特別能力者学校に、連絡が回った。内容は《特殊技能の教育評定に関する、競技開催のお知らせ》だ。簡単に言うと、『生徒同士で競技をさせて、いい成績を出した生徒を育てた教師を表彰する』って企画だ。開催は体育祭の前の週。おまえにはそれにエントリーしてもらう」
「俺が出たら、小宮山先生の評価になりませんか?」
「話は最後まで聞け。これは異能力を使った勝負になる。おまえの能力開発を担当していたのは花田先生だ。つまり、おまえがいい成績を出せれば、花田先生が評価される。そうすれば懲戒はなし。現に今も、花田先生の辞職話は一時的にだがストップしてる。謹慎は続いてるけど」
「……一応聞きますけど、何の競技ですか?」
「学生同士で能力を使った戦闘行為は、日本では原則禁止されている。だから、今回はレースだよ。俺と西山がやったみたいに」
つい数日前のあれ、フラグだったのか?
次に小宮山先生は信じがたいことを言い出す。
「そこで上位10位には入れれば、花田先生の首は繋がる」
ハードル高っ。
「でも、全国から強豪が集まるんじゃ」
「そうだよ。しかも、そのほとんどは4年生か5年生だ。1年からのエントリー自体が異例になる」
勝てる気がしない。
「でも、そこで勝てなきゃ、花田先生はもう二度と教壇には立てない。もしあの人を助ける気があるなら、それくらいの覚悟はいるぞ? やるか?」
「やりますよ。俺のせいで人生終わったなんて言われたくないですからね」
「そーゆー正直なところ、俺は苦手だな」
かくして、小宮山先生との特訓が始まった。
◆◆◆
「……夜間ですけど、いいんですか?」
特訓の舞台は、夜の学校。正確には、その裏にある斜面の急な山だ。
「俺の監督の下でやることになってるから問題ない。気にするな。エントリーは花田先生の名前で出してある」
「それ、不正扱いになるんじゃ?」
「……ちょっとややこしいんだけど、直結型と範囲型で担当が分かれるだろ? それぞれで教員免許の種類が若干変わるんだよ。俺がいるのは、あくまで『レースの特訓のため』だ。能力の使い方は、おまえの自由にしていい。俺は指示しないから、花田先生の授業をベースに考えろ」
心配しないで励め、と言うことらしい。
「ルール以外で事前に公開されているのは、コースの道のりの長さだけだ。今回は約100キロ。それだけのルートを、自分の体だけで進む。能力の使い方次第で、タイムはだいぶ変わるぞ?」
フルマラソンよりは長いが、能力を使っていいならマシな距離だ。
「で、タイムのボーダーラインは?」
「1時間。それ以上は無理だ」
「単純計算で時速100キロって、無茶な話ですね」
「まあ、ルートは一直線とは限らないからな。ルールも一応言っとくぞ。選手はそれぞれ、チップを内蔵した腕輪を付けて参加する。コースにはいくつかのポイントがあって、この2つでショートカットや不正を監視している。普通のマラソンと同じように、妨害は違反だ。能力を使っていかに速く進めるかが肝になってくる」
「でも、俺の能力ってそんなアクティブでもないんですが」
が、ここで小宮山先生は意外なこと言いだした。
「おまえ、やっぱり自分の能力分かってないな。あー、でも俺の口からは教えられないから」
え、どゆこと?
この世界の人たちは、体力はめっちゃあります。
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