表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
落とし穴はどこにあるか分からない
27/60

第26話 力は制御できなければ、チートにはなり得ない。

「いやおまえら、自分の立場分かってる?」



小宮山先生の反応は冷たかった。



「いいか? 能力者ってのは普通の視点から見ればすごい人かもしれねえけど、実際は文字通りの意味で『戦力』なんだよ。軍や警察みたいな組織に属するならまだしも、能力を使って大規模な犯罪だってやれるんだ。おまえたちはその両方になり得る。最悪全員がテロリストになるかもしれない」



そんな奴らを制圧できなければ、《特別能力者学校》の教諭は務まらないらしい。



「しかも、勝ったのは榎本だけでだろ? たった1人相手に勝てんかったらそりゃ懲戒にもなるって」



厳しい世界だった。



「なんとかなりませんか?」


「退職に追い込んだ張本人が言ってもなあ……」



しばらく頭を抱えていたが、「あ」と顔を上げる。



「何か策があるんですか!?」


「知り合いにな。期末や中間のときに試験官をやる人がいる。その人の口添えをもらえれば」


「花田先生は先生を続けられるんですね!?」



西山が割り込んできた。



「そーゆーこった。後で連絡してやるから、先にホームルームを済ませるぞ」



小宮山先生は踵を返す。



◆◆◆



「それはまずいね」



国際能力者人権団体の代表は、部下から火急の案件を聞かされていた。



「彼女、今軍に戻ったら、間違いなく消される。それで、どうする?」


――谷地さん経由で軍からの口添えがあれば、なんとか大丈夫だと思うんですよ。鶴宮さん辺りにでも頼めば。


「うーん、それはちょっとキツイかなー。鶴宮さんは軍の人間としては権力持ってるけど、教育現場にまでって言われると微妙。しかもあの人、非能力者だし」



谷地個人は、もっと適任な人物を知っている。だが、ここでその人物に借りを作るのは、彼女としても不本意だった。



――あ、『あの会社』の人はどうですか?


「私が頭の中で切り捨てた選択肢を出さないで」



人間、考えることは似通っている。



「あそこに頼むってのは、凶悪犯の死刑判決を強引にひっくり返すくらいの重罪よ? もっとも、社長をその気にさせれば、こちらに火の粉は飛んでこないだろうけど」



あの気まぐれを動かすことができれば、この状況はたやすく変えられる。だが、性格的にあの社長はそういう類を嫌うのだ。

谷地はリスクとリターンを天秤にかける。


「情報源が消えるってのは大きいんだけどねー……」








「何が?」








「うわっ!?」


「そんなに驚かないでよヤッチー。傷ついちゃうなあ、もう」


「何しに来たの!? アポもなしに!」



彼女の目の前には、その『適任』がなぜかいた。

手には大きな風呂敷包みを持っていて。



「うん? いや、昨日、休暇に付き合ってもらったじゃない? お礼にケーキと山吹色の饅頭持ってきたんだけど」


「一応言っとくけど、そっちの依頼をこっちが受けたんだから、賄賂みたいに言わないでくれる?」


「思うんだけど、このご時世、賄賂も新しい呼び名を考えるべきだよね。だって金じゃなくて紙だし。業務用板チョコなんてどうだろう?」


「……業務用板チョコに謝りなさい。それより、今電話してるんだけど」


「知ってる」



元より、目の前の存在に「常識」は通用しない。



「でもさあ、会話の内容から察するに、私のことでしょ?」


「……ちょっとピンチなのよ」


「君の同僚?」


「いや、こっちにとって必要な情報源が消えそうなの」


「あら大変」


――谷地さん? 誰かいるんですか?



電話の向こうで、部下が能天気な声を出す。

誰か分かれば、卒倒しそうなので黙っておく。

そもそも、この二人の間に面識はない。



「……ちょっと友達がね。彼女の退職はまだよね? 明日までには策を立てるから」



谷地は電話を切った。



「で? 詳しく聞こうじゃないの」


「……《特別能力者学校》って知ってるよね?」


「能力者の子どもを、軍と警察にだけ渡すブローカーのこと?」



身も蓋もない言い草に、谷地はコケた。



「あんた本当にストレートねえ……、まあいい。今そこに、うちの部下を行かせてるの」



相手は目を丸くした。



「おたくら軍と警察に喧嘩売りまくってるじゃん。その一角に部下を送るって」


「有能な能力者を無駄死にさせたくないのも、人殺しにしたくないのもそっちと同じ方針でしょ? だから真面目に聞いて。今、わたしの部下の同僚に、軍の特別審議官がいる。そいつがポカをやらかしたみたいで、退職させられそうになってるの」


「ん? 軍の人間が減るなら好都合じゃないの?」



相手の言うことももっともなのだが、今回は事情が違う。



「そうもいかない。年は若いけど、軍の中枢に近いから、情報はかなり握ってる。正直、価値は高い」


「なるほど。それが退職させられるってことは、イコールで明日の日の出は見れないわけだ」


「そういうこと。だから、なんとか退職を阻止したいんだけど、生憎、適任がいないって話」


「あー、それで私に頼ろうとしたのか。何となくわかったよ。要するにあれでしょ? 《退職までの復帰条件》を()()()()()って話?」


「有体に言うと、そうね」


「引き受けるかどうかは後にするとして、ちなみにその先生の能力は?」


「範囲型の《流体操作》。なんとかできそう?」


「まあ、うちの参謀に任せるよ」


意外な反応に、谷地は衝撃を受けた。


「え、受けてくれるの!?」


「わたしはヤラセはあんま好きじゃないけど、好きにさせてくれるなら文句は付けない。じゃあ、このレンガは報酬として持って帰るね。大丈夫、ケーキはあげるから」


「……あんた現代版の賄賂の隠語、知ってるんじゃない」


さて、策とは……?



毎日投稿します!

面白いと思ったり、続きが気になるなぁと思ってもらえたら、ブクマ登録や評価をいただけるとモチベーションに繋がります!

ご意見、ご感想もお待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ