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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
緩いところと締めるところ。
20/60

第19話 山があったら、谷もきっとある。たぶん。

遅くなったです。

すみません。

しかし数日後、俺たちは劇的な変化を目の当たりにする。



「「「「「おっしゃあ!!!!」」」」」



何人かが、歓喜の声を上げた。



◆◆◆



「榎本ー、今日の授業、校庭でやるんだって」



「ああ、聞いた。今まで冷凍庫とか安全規定無視したサウナとか、頭おかしいとこに放り込まれてきたな……。西山どれがきつかった?」



「もう全部。どうしよう。みやまっちの方が良かったなー」



みやまっちとは、我らが担任の小宮山先生の愛称である。(命名・秋山直子)

ただし、この西山という女、つい先週その先生に辞職を賭けて勝負を挑んでいる。

人間、都合がいいことは忘れるのだ。


しかし、彼女の文句も当然だ。冗談抜きで生命の危機を感じるような場所に放り込まれ、能力を使う訓練をしてきた。

不満もピークに達している。



「花田先生、これって意味あるんですか?」



「あるよー。ほら、ダラダラしないで移動するする~」



この訓練のせいで、ジャージが3着ダメになった。

税金の無駄遣いもここまでくると、最早、開き直りすら感じる。


この日のグラウンドは、昨日の雨でぬかるんでいた。



「はい、じゃあ、能力だして」



何人かが不貞腐れながら、自分の能力を使いだす。


途端に、数名が異変に気付く。



「あれ、なんか楽に出る?」


「軽い!」



ほとんどの人が顔をほころばせる。



「やっぱ成長早いね、君たちは」



花田先生も納得の顔だ。



「あんたらが手を抜かないように黙ってたけど、範囲型の能力者ってのは能力の幾つかある項目のうち、《持続時間》以外はカンストしてると思って」



先生は説明を続ける。



「つまり、時間以外はそこがあんたらの限界値。時間しか伸ばせる要素がない。でも、昨日までの訓練で、あんたらは確実に成長した」



「あの無茶な訓練がですか?」



「そう。あんたらに連日で命の危機に面してもらったのは、少ないエネルギーで、()()()()()()()()()能力を出せるようにするため」



特に後半を強調した。



「着火に必要な燃料を減らしたと思えばいい。そして、危機を毎日感じた体は、より一層、効率をよくするためにエネルギーの調整をする。例えで言うと、ダイエットしてると、体重が落ちなくなる時期があるでしょ? あれは体が省エネモードに入るから。それを、異能力に応用したのが、わたしの授業」



なるほど。だが、俺の能力、一つ難点がある。


疲れはだいぶ減った。連発も以前より楽に行える。

だが。



「花田先生、俺、持続時間が伸びないんですけど……」



「え、うそでしょ?」



先生が驚くので、俺は能力を使う。

目には見えない透明なバリア。

※ちなみにペンキをかけると形ははっきり見えます。


3分が経つとほぼ同時に、俺の能力は消失した。



「……おかしいな。持続時間が普通結構伸びるんだけど」



先生が首をかしげた。



後で分かることだが、俺の能力は、正確に言うと《バリア》ではなかったのである。



◆◆◆



その日の帰り道、久しぶりに伊藤と帰っていた。



「そう言えば、もう来月には体育祭があるんだよな。この間太一が言ってた秘策ってなんだろ? 優哉知ってる?」



「いや? でも体育祭って、普通秋だろ。なんでこの時期にやるんだ?」



「あれ、優哉知らねえの? 5年生のプレゼンの場だぞ?」



書き忘れていたが、この《特別能力者学校》は、5年制の学校である。



「あ、なるほど。そこでスカウトされたり、自分の行きたい仕事の人にアピールするわけだ。でも、4年生以下って意味あるの?」



「優秀人がいれば、その場で引き抜きをする場合もあるらしい。名誉の中退だ」



一刻も早く現場で活かしたいのだろう。大人のやりそうなことだ。



「にしても、5月の末は早すぎだよなあ」



桜はとうに散っている。


そして、俺たちの行く末もまた、静かに動き出していた。

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