第19話 山があったら、谷もきっとある。たぶん。
遅くなったです。
すみません。
しかし数日後、俺たちは劇的な変化を目の当たりにする。
「「「「「おっしゃあ!!!!」」」」」
何人かが、歓喜の声を上げた。
◆◆◆
「榎本ー、今日の授業、校庭でやるんだって」
「ああ、聞いた。今まで冷凍庫とか安全規定無視したサウナとか、頭おかしいとこに放り込まれてきたな……。西山どれがきつかった?」
「もう全部。どうしよう。みやまっちの方が良かったなー」
みやまっちとは、我らが担任の小宮山先生の愛称である。(命名・秋山直子)
ただし、この西山という女、つい先週その先生に辞職を賭けて勝負を挑んでいる。
人間、都合がいいことは忘れるのだ。
しかし、彼女の文句も当然だ。冗談抜きで生命の危機を感じるような場所に放り込まれ、能力を使う訓練をしてきた。
不満もピークに達している。
「花田先生、これって意味あるんですか?」
「あるよー。ほら、ダラダラしないで移動するする~」
この訓練のせいで、ジャージが3着ダメになった。
税金の無駄遣いもここまでくると、最早、開き直りすら感じる。
この日のグラウンドは、昨日の雨でぬかるんでいた。
「はい、じゃあ、能力だして」
何人かが不貞腐れながら、自分の能力を使いだす。
途端に、数名が異変に気付く。
「あれ、なんか楽に出る?」
「軽い!」
ほとんどの人が顔をほころばせる。
「やっぱ成長早いね、君たちは」
花田先生も納得の顔だ。
「あんたらが手を抜かないように黙ってたけど、範囲型の能力者ってのは能力の幾つかある項目のうち、《持続時間》以外はカンストしてると思って」
先生は説明を続ける。
「つまり、時間以外はそこがあんたらの限界値。時間しか伸ばせる要素がない。でも、昨日までの訓練で、あんたらは確実に成長した」
「あの無茶な訓練がですか?」
「そう。あんたらに連日で命の危機に面してもらったのは、少ないエネルギーで、今までと同じように能力を出せるようにするため」
特に後半を強調した。
「着火に必要な燃料を減らしたと思えばいい。そして、危機を毎日感じた体は、より一層、効率をよくするためにエネルギーの調整をする。例えで言うと、ダイエットしてると、体重が落ちなくなる時期があるでしょ? あれは体が省エネモードに入るから。それを、異能力に応用したのが、わたしの授業」
なるほど。だが、俺の能力、一つ難点がある。
疲れはだいぶ減った。連発も以前より楽に行える。
だが。
「花田先生、俺、持続時間が伸びないんですけど……」
「え、うそでしょ?」
先生が驚くので、俺は能力を使う。
目には見えない透明なバリア。
※ちなみにペンキをかけると形ははっきり見えます。
3分が経つとほぼ同時に、俺の能力は消失した。
「……おかしいな。持続時間が普通結構伸びるんだけど」
先生が首をかしげた。
後で分かることだが、俺の能力は、正確に言うと《バリア》ではなかったのである。
◆◆◆
その日の帰り道、久しぶりに伊藤と帰っていた。
「そう言えば、もう来月には体育祭があるんだよな。この間太一が言ってた秘策ってなんだろ? 優哉知ってる?」
「いや? でも体育祭って、普通秋だろ。なんでこの時期にやるんだ?」
「あれ、優哉知らねえの? 5年生のプレゼンの場だぞ?」
書き忘れていたが、この《特別能力者学校》は、5年制の学校である。
「あ、なるほど。そこでスカウトされたり、自分の行きたい仕事の人にアピールするわけだ。でも、4年生以下って意味あるの?」
「優秀人がいれば、その場で引き抜きをする場合もあるらしい。名誉の中退だ」
一刻も早く現場で活かしたいのだろう。大人のやりそうなことだ。
「にしても、5月の末は早すぎだよなあ」
桜はとうに散っている。
そして、俺たちの行く末もまた、静かに動き出していた。
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