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カップ麺と呼ばれた男 ~とある能力者の成長物語~  作者: 岡部雷
緩いところと締めるところ。
19/60

第18話 虐待と躾は紙一重

「これ、いつまでやるんですか……」



日差しは暑いし、気温もそこそこ高い。

でも、冷たい川の中に1時間も使っていれば、体はキンキンに冷えてしまう。

手足の感覚がない。

しかも服を着たまま入ったせいで、水を吸って重い。



「よーし、では一度上がって、能力を出してみなさーい」



花田先生は優雅な身分だった。日焼け対策ばっちりしたうえで、木陰で読書って。



「しゃ、しゃむい」



西山や一部の人間の唇は紫色になっていた。

俺も手が震えて能力が出ない。



「無理ですって! 出ない決まってるじゃないえすか!」



抗議したが、呂律すらちゃんとなっていない。



「それで出せるようになれば、あなたたちの能力は飛躍的に向上する。今日は、能力を出せたものから帰って良し!」



理不尽な授業だった。



◆◆◆



「やべー、だりー……」



あのプール特有の脱力感と共に、山を下るのは最悪だった。


それでも、3番目にクリアした俺は、まだいい方だ。



「あれ、優哉? なんで山から下りてくるんだ?」



ふもとまで降りると、同じクラスの面々がいた。

なんで制服で校庭に出てるんだろう。



「なんか川の水で体温落としたうえで能力を出すっつー、ハードメニューこなしてきた」



「そっか。俺達はなんかイメージの授業やってんだけど」



「イメージ?」



「『直結型の能力者は、有効範囲を自由に固定できる。つまり、おまえらの想像次第で様々な形で展開できる。ガキに戻った気持ちで外で想像力を働かせて来い!』って小宮山先生が言うから」



秋山が説明してくれた。思った以上に似ていて、個人の隠れた才能を見つけた。



「でも、秋山さんって確か猫の《具現化物質操作》だよね? どうやってんの?」



「わたしにとって、猫って普通にペットみたいに思ってたんだけど、生態や習性なんかを理解すると、扱いやすくなるんだって。だから、猫視点でものを見て来いって」



「へえ」



あれって、能力者の指示で動く人形くらいにしか思っていなかった。

なるほど、そういう使い方をするのか。



「太一は?」



「今は温度と気圧を感じるようにしてる。一口に晴れって言っても、蒸し暑いのか、カラッとしてるのか。それをより強く感じるようにってさ」



最初は冷たい人だな、と思っていたけど、小宮山先生はなんだかんだ言って生徒1人1人を、よく見てくれていたのだ。


それに引き替え。



「美人だけど、花田先生の授業きっついんだよな~」



「でも、人数はうちらより少ないから、結構見てもらえるんじゃねえの?」



「ないない。今だって、生徒川に放り込んで、自分は読書してたし」



「うわー……」



何人かがドン引きしていた。主に女子。


そこに、後ろから何かが高速で近づいてきた。



「西山!?」



一応、こちらの存在には気付いていたらしく、ぶつかる前にブレーキはかけてくれた。

だが、全身をブルブル震わせながら、



「ざヴい、ざぶい、ぼうやば、がえる」

※訳:寒い、寒い、もうやだ、帰る



「うわ、美咲めっちゃ濡れてんじゃん! タオルは!?」



女子の一人が心配そうに駆け寄る。対して西山は焦点の合わない眼で



「使ったけど、ジャージかあわわかかった」



もはや重篤レベルだ。

俺は自分のクラスメートの一人に目を付けた。



「おい、(ひいらぎ)さん、確か温度操れたよな!?」



自己紹介でそんなこと言ってた気がする。



「分かった。江川ち、空気あっためるから、それで美咲を包むように!」



「りょ、了解!」



皆の協力もあって、西山の服と体は事なきを得た。

プールのあとの授業の眠さは異常。



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