第18話 虐待と躾は紙一重
「これ、いつまでやるんですか……」
日差しは暑いし、気温もそこそこ高い。
でも、冷たい川の中に1時間も使っていれば、体はキンキンに冷えてしまう。
手足の感覚がない。
しかも服を着たまま入ったせいで、水を吸って重い。
「よーし、では一度上がって、能力を出してみなさーい」
花田先生は優雅な身分だった。日焼け対策ばっちりしたうえで、木陰で読書って。
「しゃ、しゃむい」
西山や一部の人間の唇は紫色になっていた。
俺も手が震えて能力が出ない。
「無理ですって! 出ない決まってるじゃないえすか!」
抗議したが、呂律すらちゃんとなっていない。
「それで出せるようになれば、あなたたちの能力は飛躍的に向上する。今日は、能力を出せたものから帰って良し!」
理不尽な授業だった。
◆◆◆
「やべー、だりー……」
あのプール特有の脱力感と共に、山を下るのは最悪だった。
それでも、3番目にクリアした俺は、まだいい方だ。
「あれ、優哉? なんで山から下りてくるんだ?」
ふもとまで降りると、同じクラスの面々がいた。
なんで制服で校庭に出てるんだろう。
「なんか川の水で体温落としたうえで能力を出すっつー、ハードメニューこなしてきた」
「そっか。俺達はなんかイメージの授業やってんだけど」
「イメージ?」
「『直結型の能力者は、有効範囲を自由に固定できる。つまり、おまえらの想像次第で様々な形で展開できる。ガキに戻った気持ちで外で想像力を働かせて来い!』って小宮山先生が言うから」
秋山が説明してくれた。思った以上に似ていて、個人の隠れた才能を見つけた。
「でも、秋山さんって確か猫の《具現化物質操作》だよね? どうやってんの?」
「わたしにとって、猫って普通にペットみたいに思ってたんだけど、生態や習性なんかを理解すると、扱いやすくなるんだって。だから、猫視点でものを見て来いって」
「へえ」
あれって、能力者の指示で動く人形くらいにしか思っていなかった。
なるほど、そういう使い方をするのか。
「太一は?」
「今は温度と気圧を感じるようにしてる。一口に晴れって言っても、蒸し暑いのか、カラッとしてるのか。それをより強く感じるようにってさ」
最初は冷たい人だな、と思っていたけど、小宮山先生はなんだかんだ言って生徒1人1人を、よく見てくれていたのだ。
それに引き替え。
「美人だけど、花田先生の授業きっついんだよな~」
「でも、人数はうちらより少ないから、結構見てもらえるんじゃねえの?」
「ないない。今だって、生徒川に放り込んで、自分は読書してたし」
「うわー……」
何人かがドン引きしていた。主に女子。
そこに、後ろから何かが高速で近づいてきた。
「西山!?」
一応、こちらの存在には気付いていたらしく、ぶつかる前にブレーキはかけてくれた。
だが、全身をブルブル震わせながら、
「ざヴい、ざぶい、ぼうやば、がえる」
※訳:寒い、寒い、もうやだ、帰る
「うわ、美咲めっちゃ濡れてんじゃん! タオルは!?」
女子の一人が心配そうに駆け寄る。対して西山は焦点の合わない眼で
「使ったけど、ジャージかあわわかかった」
もはや重篤レベルだ。
俺は自分のクラスメートの一人に目を付けた。
「おい、柊さん、確か温度操れたよな!?」
自己紹介でそんなこと言ってた気がする。
「分かった。江川ち、空気あっためるから、それで美咲を包むように!」
「りょ、了解!」
皆の協力もあって、西山の服と体は事なきを得た。
プールのあとの授業の眠さは異常。
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