第17話 学校あるある―① 自分ではそう思っていても、学校違うと意外と共感してもらえない。
「あっついな~……」
山道を登りながら、空を見上げると、雲ひとつない快晴の中、太陽が輝いている。
後ろを歩く西山が声をかけてきた。
「榎本、水着は持ってきた? うちは元々持ってたけど」
「一応。急に言われたから購買で慌てて買ってきた」
買ってきたとは言ったが、実質は貰ったが正しい。
この学校は全てが税金で作られており、学校に関するものは、ほぼ全ても支給の対象だ。
学生証は端末が配られており、生徒や教師との連絡にも用いられる。
変な話、生活必需品や教材についてのみ言えば、タダだ。
逆に言えば、私服やゲームなんかは自腹だ。端末にはあらかじめ入っているもの以外のアプリをダウンロードできないし、学校の敷地内には普段着を販売している場所はない。
しかも、長期休業以外は、生徒は学校の敷地から出ることは原則許されていない。
娯楽施設もないので、ゲーセンなんて未知の領域である。
「つーか、山奥の川って。なんでプールじゃダメなの?」
「さあ……?」
さらに歩き続けること10分。ようやく目的地が見えてきた。
◆◆◆
「はい、じゃあそのまま川に入ってねー。今日はそのまま3時間能力を使ってください。陸に上がってはダメですよ~」
着いて早々、花田先生はとんでもないことを言い出した。
「え、着替えないんですか?」
「着替える場所あると思ってる?」
質問した自分がバカだった。
確かに、周りには小屋すらない。
「いいですか? 範囲型の能力は、直結型の能力よりも扱いが難しいです。なので、基礎体力はしっかりと鍛えなければなりません。ほらほら、川の水は冷たいですよ~」
隣のクラスの男子、鈴原が何かに気付いたようだった。
「まさか、プールじゃなくて川にしたのって、俺たちの体温を下げるためですか!?」
「せいかーい。さすが私の生徒」
全員がゾッとした。
これにはきちんとした理由がある。
この世界の能力者は、自然に生まれたものではない。
全員が、人体改造のための薬物を投与されているのだ。
この薬は、人が普段の生活を送るために必要なエネルギーを、全体の7割で済ませられるようにするものだ。
じゃあ、残りの3割は?
それこそが、異能力のエネルギーの根幹である。
早い話、人間を省エネ化して、余剰した分を使って能力開発をしているのだ。
「でも、そんなことしたら能力使えなくなりますよ!」
鈴原が叫ぶ。
無理もない。
普段ならまだしも、常に体温を奪われる状況は、誰にとっても良くない事態だ。
能力者も例外ではない。
そしてなによりも。
異能力に割けるエネルギーには限界がある。それがさっきの3割だ。
つまり、体力がそれを下回れば、能力者はただの人間に成り下がる。
人体の基本として《異能力<生命維持》の式は確立されており、重傷を負った能力者は、普通の怪我人と変わらない。
よくある「命を削って能力を底上げする」という方法が取れないのだ。
怪我や病気を患っていると、能力が使えなくなる。暴走とか、制御できないではなく、使えない。
「だからよ」
花田先生のトーンが変わった。
「コンディションなんていつ変わるか分からない。だからこそ、この常に体温を奪われる状況で、どれだけ能力が使えるか。今の自分をしっかりと見極めなさい」
みんなの顔が真っ青になっていく。
「すみません。川の中で能力使っていいんですよね?」
「そうだよ?」
俺はこの訓練を受けられない。
「あの、言いづらいんですけど……俺の《バリア》、水に浮くんですけど……」
「じゃあ、体温が下がるまで能力は使わないで。わたしが支持したら使ってもいい」
何人かが、「ざまあ」と言いたげな顔をしていた。
しばらくお昼のみ投稿になりそうです……。
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