第15話 連続ストーリーは、1週見逃すと話がめっちゃ進んでる
昼休みの校舎。
人気のない場所で、小宮山は電話の向こうの相手に頭を下げていた。
――ばれるのは想定内だけど、まさかここまで早いとはね。向こうの情報収集、バカにし過ぎたかも。
凛とした女性の声が鼓膜を揺らす。
「すみません。ちょっとボロ出したみたいで」
――備えがなかったら、今頃ビビってたでしょうね。にしても、一番厄介な連中に感づかれちゃったねえ。
「ええ。それにしても谷地さん、『あの会社』って、今どこまで勢力を拡大しているんですか?」
『あの会社』。軍事に少しでもかかわりを持つ者なら、一度は必ず聞く名前だ。
その実態は不明だが、強力な能力者で構成されており、軍がテロリストや他国軍以外では最も警戒する対象だ。
――そうねえ。少なくとも、あなたのいる学校の生徒じゃとても勝てない、とだけ言っておこうか。
「……確か、その気になれば国を落とせるんでしたっけ? でも、たった10人ちょっとでしょ?」
――向こうの話聞いてた? 《連合》レベルが4人。はっきり言って異常よ? それに、その中にはあの一番危ない奴が入ってない。
「『社長』、ですね。よく知らないんですけど、そんなにヤバい能力者なんですか?」
――あのね、その4人よりも格上が2人。
「は!?」
《連合》レベルとは、非能力者で構成される多国籍軍相手に、1人で応戦できるレベル。
それよりも、さらに上。
能力者で構成された軍を、蹂躙するとすら言われる――
「《天災》レベルなんて、本当にいたんですか!?」
――本気出されたら、地球ぶっ壊せる。でも、その2人、プラスさっきの4人。それだけじゃない。多分、全世界の能力者と科学が束になっても、『社長』には勝てない。
「……」
――もとより、勝ち目なはい。無駄死にさせたくないなら、早めに教えてあげなさい。もっとも、軍が弱体化するならこちらとしては嬉しいけど。
「谷地さんは、面識あるんですよね?」
――ええ。あんまり顔合わせたくないけど。
「どんな人なんですか?」
――そうね、強いて言うなら。
「『笑顔がとっても怖い人』……?」
上司が怖いと言うのを、小宮山が聞いたのは、これが初めてだった。
◆◆◆
――そうか。しかし我々としても、君の失敗は大きな損害だ。分かっているね?
「……申し訳ありません」
同刻、花田も別の場所で同じように頭を下げていた。
――だが、これはこれで好都合かもしれない。あの人権団体には戦力になり得る能力者が多数いる。相当な手練れ揃いだが、何よりツートップの能力は欲しい。上手いこと連れ出してみてくれ。
無茶な要求だった。
「お言葉ですが、あの組織は『あの会社』と繋がりがあります。それに、組織ぐるみで仲が良いとの噂も」
――だったら余計にいいじゃないか。あのテロリストと仲よくしているなら、逆賊も同然。捕えるにはいいネタだ。
花田自身は、軍の計画にはあまり賛同していない。
あの日見た光景が、いまだに脳裏にちらつく。
「……勝算は、あるのでしょうか?」
――我々の計画を疑うのかね? 小娘が。
どうせあの人抜きで進めている計画だ。
勝算なんてゼロに決まっている。
「失礼しました。引き続き、任務を続行します」
それでも彼女は、上司には逆らえない。
――1日でも早く戦力を連れてきてくれ。多少の手荒な真似も許そう。
「はい」
花田は電話を切る。そして、とある人物の番号を画面に表示させる。
「……なんで、あなたが上司じゃないんでしょうか。鶴宮さん」
携帯電話を閉じると、誰にとなく、彼女は一人で嗚咽を飲み込む。
◆◆◆
「『社長』。最近また何か悪さしたんですか?」
山奥の小さな建物。その中には影が2つ。
「怒らないでよ今日華ちゃん。わたしはこー見えて、
……
…………
戦争は、嫌い!
なのだから!」
わざとらしい喋り方。常人がいたら数分で怒り狂いそうな態度。
「だからって、襲いに来た暗殺者を全員廃人にしなくても」
「怖いんだよ! 夜だよ!? いきなりブワアーって来るんだから! マジヤバいって! 正当防衛だって! それに数日もしたら、みんな元に戻るって! ちょっと怖かったかもしれないけど!」
弁明すらうざい。
今日華と呼ばれた女性は、気疲れからか目頭を押さえる。
「……過剰防衛ですよ、あなたの場合。それにしても、どうして軍は今更やる気になったんでしょうか? 社長には勝てっこないのに」
「多分、あれだろ? 戦争を知らない世代なんだよ。もう15年だからね! 世代交代しちゃって、血気盛んな若者が頑張ってるんじゃないのかい!? 結構結構!」
とはいうものの、この社長、見た目は30代前半、下手すると20代後半にも見える。
「で、全軍で来たらどうします?」
「やっぱわたしが相手しないとだめ?」
「そりゃあ、社長のお客さんですから」
「……だりーなー」
俺の知らない水面下で、事態は少しずつ、動き出していたのである。
ええ、公言しましょう。このうざい奴が、
作中最強のチート野郎だと。
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