第13話 盗人は貧しいから盗人なのではなく、盗むから盗人なのである。
「結局、なんか西山の暴走と、花田先生の遊びにつき合わされただけだよな。そもそも、俺くたくたになるほど追いかけられたけど、それだけだし」
一番最初に冷静になったのは真田だった。
「話は最後まで聞けよ」
「……なんかごめん」
頭が冷えると、ただ馬鹿をやっただけだった。
「でも、美咲って男子よりかっこいいかも。行動力とか」
女子の一人がそんなことを言う。
「でしょ!?」
「でも、結構周り見えなくなるタイプ?」
上げて落とすとはこのことよ。
◆◆◆
帰り道、後ろから真田が追いかけてきた。
なんだか焦っている。
そして辺りに人がいないことを確認すると、声を潜めて
「おまえ、この学校どう思う?」
「どうって?」
「さっき、職員室に行く途中で、年寄りの先生とすれ違ったんだ」
忘れかけていたが、彼の能力は《知覚強化》。五感を鋭くする異能である。
「香水キツイなと思ったら、火薬の臭いが混じってた。科学の教師でもないのに、そんな臭いがするっておかしくないか?」
「火薬、ねェ……」
「俺、ここに来る前に、実は噂を聞いたんだ」
「どんな?」
真田は、より一層声を落として
「この学校、まともな教職員が一人もいないって話。全員が身分を隠して、自分の本来の所属組織に生徒引き入れるためにいるって」
まさか。と思ったが、花田先生の言葉が脳裏をよぎる。
「『いろんな顔』って、そういう意味か? ああ、実は俺も気になることがあった」
「え、おまえも?」
「ああ。さっきの茶番レース。花田先生が用意したのは全く同じものだ。でも、小宮山先生は屋上に来てすぐ、『そういうことか』って言って片方持って行ったんだ。正解なわけないのに」
あれは、どっちを選んでもダメだったのだ。
なのに、あのときの顔は何かを確信していた。
「あのときの先生はちょっとおかしかったな。それから急に態度も変わったし」
たった二日。だけど、あの先生の態度の変化はどう見ても不自然だ。
「……下手に詮索するとどうなるか分からねえ。とりあえず今日は寮に戻ろう。おとなしくしてれば、大丈夫だろ」
「でもさ、優哉。俺たちってある意味閉じ込められてるよな?」
広大な土地に住んでいるから意識はしなかったが、真田の言う通り、ここは巨大な閉鎖空間だ。
そこにいる、正体不明の大人たち。
「俺らに何が起こっても、外には漏れないってことじゃね?」
「どうした? おまえそんなにヘタレだったっけ?」
クラスのリーダーとしてのイメージが固まりつつあったのに、今の彼はその片鱗すらない。
「……俺の祖父ちゃん、事故死ってことになってるけど、ほんとは殺されてるんだ」
いきなり重い話になった。
「軍の機密を公表しようとしたって。でも、それが今どこにあるか分からないし、警察もグルだったから、ただの事故死で処理された」
真田は拳を握りしめ、
「でも、死に顔見て思ったよ。あんな無念そうな顔は初めて見た。だから、俺はいつか祖父ちゃんの残した資料を見つける。そのためにここまで来た。能力があるって分かったときは嬉しかったよ。でも――」
強い意志が、根元から折れているように見えた。
「ああ、弱いなって」
「今日の授業で思ったよ。その上、あの噂も思い出しちまった。俺って、敵のど真ん中にいるんだなって思い知らされた」
逃げられない籠の中の鳥になった気分なのだろうか。
「手伝う」
気付けば、口に出していた。
「おまえの祖父ちゃんの無念、一緒に晴らしてやるよ。俺のことは気にするな。家族なんて、ここに来るときに捨ててきた」
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