第12話 ツンデレって気づかれなければ、ただの嫌がらせ
「両者負けです!」
花田の宣言に、全員の理解が、一瞬遅れた。
「「「「「「「「「「「……は?」」」」」」」」」」
「だから、両者負けです。言ったでしょう。私は『正解』を持ってこいと」
西山が旗を振り回して抗議する。
「いや、だから私はこうしてフラッグを――」
「それは正解ではありません。だって、正解はまだ屋上にいるんだから」
◆◆◆
「それほとんどだまし討ちじゃないですか。多分納得しませんよ?」
花田先生が俺にしてほしいこと。それは、持ち帰るべきフラッグの役割だった。
「大体、俺がカメラで撮ってて、旗があったら俺を連れ帰るって発想にならないと思うんですけど」
「そこはどう思われようと関係ない。ルールを決めるのはわたしなんだから」
屁理屈にもほどがある。
「これじゃあ、ほとんど茶番じゃないですか」
「そうだよ?」
あっさり認めやがった。
「そもそも、先生の授業の仕方に生徒が文句付けていいとでも思ってんの? 何様のつもり?」
態度が豹変した。やばい、これ多分、素だ。
「でも、授業でいきなり生徒をぶっ飛ばした小宮山先生に全く非がないとも言えない。なら、その怒りを発散できるはけ口があればいい」
「それが今回の勝負ですか? 余計に怒らせる気がするんですけど」
「大丈夫、小宮山先生の性格なら、多分――」
花田先生の言葉は、その時の俺には理解できないものだった。
◆◆◆
「榎本くーん、降りてきていいよー」
花田先生の呼びかけに、俺は屋上から飛び降りる。もちろん、バリアを使って自分の身はしっかり守る。
「と、両者が引き分けに終わったので、この封筒は破棄しま~す」
二つの封筒がビリビリと破られる。
「つーか、そもそも花田先生みたいな人が、辞職させるとかできるの?」
女子の一人が、今回の勝負に疑問を持ったようだ。
「だって若いじゃん」
だが、花田先生はギロリ、と睨むと
「大人にはね~、いろんな顔があるんだよ」
笑顔で返す花田先生だが、妙な威圧感を感じる。
詮索するな、という無言の圧力だろうか。
「それに、小宮山先生だってちゃーんと考えてるんだよ。だって、だーれも怪我はしてないでしょ? では解散!」
勝手に幕を下ろした彼女は、すぐさまいなくなってしまった。
「はあ……」
残された担任が、気まずそうに頭を掻いている。
「まあ、俺の授業が悪かったのは謝る」
頭を下げた。
今までの態度からはえらい違いだ。
「でもな、忘れるな。今日の授業、あれで俺は全く本気を出してない。それでもおまえらがビビるくらいのことはできるんだ。おまえらだって、今日の俺以上に、人に恐怖を与えるかもしれない。だから、俺の授業では戦闘訓練はやらん。これは絶対だ」
さっきまで強情だったのに、妙なほどしおらしい。
ずっと黙っていた伊藤が、口を開いた。
「もしかして、怪我しないように能力セーブしてました?」
「一応、教え子だからな。今のおまえらの体なら、ある程度は問題ないはずだ」
言われてから、何人かが体をペタペタ触る。
「言われてみれば、そんなに痛くないかも……」
「ずっと走り回って疲れたけど、俺、意外と先生の能力食らってない?」
『なんか先生良い人?』説が、地味に浸透しつつある。
この先生は好い人です。たぶん。
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