第1話 入学式に遅れてくる奴は、一人とは限らない。
カップ麺。
それが、俺のあだ名だ。
理由は、
「おめーの能力、制限時間が3~5分ってカップ麺かよ!?」
と、クラスの人間に指摘されたからだ。
ほっとけ。
どう頑張っても、これを覆す方法はない。
人体改造によって、能力者が存在するようになった世界。
そこで俺が持った能力は。
あまりにも、中途半端だった。
◆◆◆
「はい、全員席につけー」
チャイムも鳴っていないのに、担任が教壇に立つ。
「今日から君らは、ここ、〈特別能力者学校〉の生徒だ! いままでの世界とは違うから、気を引き締めろ! 俺が担任の渡辺だ!」
チョークでいきなり、黒板に名前を殴り書きした。
あの黒板特有の嫌な音に、何人かが耳を塞ぐ。
暑苦しいおっさん教師だった。隣のクラスは、若い美人らしい。入学早々、ツイてない。
ここでようやくチャイムが鳴り、外にいた他のクラスの生徒も教室に入る。
「って、おい!」
渡辺が叫ぶ。いちいちうるさい。
「もう時間だってのに、まだ来てない奴がいるのか!?」
俺は隣を見る。ずっと空席だった。
そしてもう一つ、まだ生徒が座っていない席があった。
「二人も来てないの?」
「やばくね?」
「なんかこのクラスやだー」
この学校には、県内の能力者のおよそ10分の1集められている。
能力者は毎年、決まった人数が入学するわけではない。
今年は多い方らしく、俺の通う学校では8クラス、約160人もいるそうだ。
1クラスの人数が少ないのは、それ以上増えると先生が大変だかららしい。
ほとんどが見知らぬ者同士。
それを一致させるのが、いまだ姿を現さない二人となると、この先が心配になる。
そのとき。
「ねえ、なんか聞こえない?」
前に座る女子が話しかけてきた。
「ん……?」
耳を澄ませると、誰もいないはずの廊下から、誰かの走る音がする。
入学早々に遅刻してきた生徒だろうか。
ズバァンッ!!!!
ドアが開くと、息と制服を乱した男子生徒が駆け込んできた。
「遅れましたぁ!」
それだけ息切れしてて、よくそんな声が出るな、と思う。
渡辺はイライラを隠すことなく、彼の方に向かう。
「遅れました、じゃないだろ~~? 何やってんだ初日から!」
出席簿で手のひらをパンパン叩く。あれ、教鞭のつもりか?
「いや、すみませんでし―――」
「うるせえ! 帰れ! 遅刻するような奴はいらん!」
いきなり出席簿で頭を叩く。
「わ、いきなり叩いた!」
「俺やだよあの先生……」
声を殺しながら、クラスの全員がヒソヒソとしている。
「これ……問題じゃないのかな?」
「多分、いいんでしょ。俺らみたいな能力者は、多少雑に扱ってもいいみたいな風潮あるじゃん?」
前の女子が怯えている。きっと差別のない、優しい人に囲まれて育ったのだろう。
渡辺と男子生徒の攻防は、まだ続いていた。
「帰れっつってんだろ! いつまでいるんだ!」
「いや、理由が――」
そこへ。
今度は別の音が聞こえてきた。
人が走る音ではない。もっと大きな音。
その正体が分かった瞬間、俺は机の上に避難した。
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」
クラスの全員が、今度こそ悲鳴を上げる。
そりゃ、いきなり教室の中に大量の水が流れ込んできたら、誰だって焦るだろう。
一瞬にして、教室の中が水浸しになった。
幸い、予想より、水の量は多くない。水位はふくらはぎくらい。だが、数名は判断が遅れたせいで、靴下が災難な状態になっている。
最も近くにいた渡辺と男子生徒は、ベランダ側まで流されていた。
渡辺は転んだ表紙に頭を打って気絶した。何人かが「ざまあ見ろ」と言いたげな顔をしていた。
「はぁ、はぁ、……んっ、やっと見つけた!」
入り口に立つのは、ずぶ濡れの女子。
ブレザーがあってよかった。
彼女は教室を見回し、さっきの男子生徒を見つけると、シャバジャバと歩み寄る。
「あんた! あたしと勝負しなさい!」
これが、俺、榎本優哉と、伊藤光太郎、そして彼女、桐山茜とのファーストコンタクトだった。
明日も投稿します!
面白いと思ったり、気になるなぁと思ってもらえたら、ブクマ登録よろしくお願いします!
ご意見、ご感想もお待ちしてます!




