死神
名前…。
「分からない、俺は、おれは…。」
「ああ、もういい」
目の前にいる彼女は呆れた様子でため息をついた。
「別に名などこの際どうでもよい、もう死んだのだからな。」
死んだ…そうか俺はもう死んでいたのか、だったらこの世界はなんだ?
おそらく死後の世界だろう。ただイメージとは程遠い、天国のような優しい世界でも地獄のような灼熱の大地でもないただ真っ暗な闇の世界。
「ここは一体どこなんですか?」
「・・・」
え?無視された…。
「いや、何か答えてくださいよここは一体」
「ああ、もう、うるさいな」
「いま今後の事で少し考えていたのだすこし黙れ」
彼女の態度といい加減さに少し苛ついた、多分俺が委員長に取っていた態度はこんな感じだったのだろうそう思うと相手が少し怒るのも無理はない、うん、今度から気を付けよう。来世で…。
彼女の言う通りおれは黙った。彼女は今後と言っていた、その言葉をヒントに色々と考えたが妄想が捗るだけで答えはいまだ分からない。5分、10分と彼女の考えがまとまるのをひたすら待った。だが、一向に彼女の閉じた口は開かない、痺れを切らした俺は彼女に今後とは一体なんのことか尋ねた。
すると彼女は思いもよらない言葉を口にした。
「なんだお前まだいたのか」
「はぁ!?」
思わず声がでた。
「さっきどこかに行こうとしていたであろう。」
「いや、それはあんたがどこへ行く!って言うから勝手に動いたらいけないんだなって思うだろ普通」
「大体あんたさっき今後について考えているって言ったよな!今後ってなんだ俺をどうする気だ!」
「それは私の今日の晩酌についての事だ!誰もお前の事など話していない自意識過剰も甚だしい!」
「じゃあ俺はなんでこんなとこにいるんだよ!死んだってことはここは死後の世界って事だろう!?」
「ああ!もううるさい!!」
「全部説明するから黙って聞け!」
「ここは生と死の間の世界、お主は現世で事故にあい肉体は完全に死んで魂だけが生きているそれが今のお前だ、魂が死ねば今度こそ完全に死ぬ、現世での行いがよければそのうち勝手に魂が浄化され晴れてお前は肉体、魂ともに消滅し苦しみから解放されるわけだ。」
「つまり今の俺は肉体のみが死んで魂はまだ生きているってことか」
「その通り簡単な話だ。」
「では質問を変える、あんたは何者だ?」
「まだ聞いてくるか‥まあ良い、これも何かの縁だ答えてやろう、私の名は凛音、魂を刈り取る死神だ」
「魂を刈り取るって…」
いや待て、魂を刈り取るって何だ?俺の肉体はもう死んでいる魂だけの存在。そんな俺が魂を取られたらどうなる?まさかコイツ…。
「お前..美味そうだな」