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タマシイ×ハンター  作者: 蛍火千歌
7/9

記憶

孤独になった。


ただ暗闇のなかに、ただひとりでさまよっている。なにも起きることなく時間だけが過ぎていく。ここへ来てどれくらいの時間が経ったであろうか、これが死なのだろうか。

ただひとりで暗闇のなかに閉ざされていた。誰もいない、声をあげても返事はない。睡魔もおきなければ、食欲もわかない。俺自身はここにいるはずなのに、生きている実感がこれっぽっちも無かった。

孤独には慣れていた筈だった。だが、今はただ寂しくてたまらない。誰でもいいから話がしたい。誰でもいいから声が聴きたい。


「うっぐ、うぅ。」


俺は涙をこらえた。泣き叫んだところで状況は変わらないというのに、涙を流すのをためらった。


「泣いた所で、何かが変わるわけじゃねぇ、何としてでもここから抜け出してやる。」


そうだ、こんなところで立ち止まるわけにはいかない。出口は必ずどこかにあるはずだ。そもそも俺は死んだわけじゃない。まだ肉体は生きていて、きっとまだ戦ってるはずだ。何としてでもこの暗闇から抜け出して帰るんだ、現実へ。


「勝手にどこへ行くんだ?」


背筋が凍った、声が聞こえたのだ。さっきまであんなに願っていた自分以外の誰かの声なのに、どことなく聞こえた声は冷たく鋭く感じた。


「え?嘘だろ。」


「嘘ではない。」


「お前、勝手にどこへ行く気だったんだ?」


俺は放心状態に陥った。冷たい声の主は女性のような成り立ちだが、人間とは言いにくいような感じがした。


「なにを呆然としている。どこへ行く気のかを聞いているのだ私は。」


「わからない、ただじっとしていられなくて。」


「そもそも、あなたは一体?」


「私の名は、名は、...」


彼女は自分の名を口にしようとするが何故かためらった。すると逆に。


「人に聞く前に、まず自分から名乗ったらどうだ。」


この時、俺はあることに気がついた。彼女を見たときの緊張感はすでになくなっていたのだ。


「俺の名前は。」


あれ?...俺の名前ってなんだっけ?





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