崩壊
気付けば、もう家の近くまで来ていた。委員長の家はまだ先なのだろうか?
「委員長、もう俺は後少しだからここから走って帰るよ。傘は今度返してくれたらそれでいいから…」
「駄目よ、そんなのあなたが風邪引くかもしれないじゃない。」
そうは言っても俺も何だかこれ以上、委員長と一緒に帰っても気まずいだけだった。だから俺は自分のしたいようにするようにした。
「いいよ、気をつけて帰れよ。」
「わかった、傘は今度返すね、あなたも気をつけて。」
「ああ」
「じゃあ私、あの信号を渡らなくちゃ行けないからせめて青になるまで待ってて」
委員長に青になるまで待っててと言われたが信号はすぐに変わった。委員長はじゃあねと言って信号を渡ろうとした。すると一台のトラックが赤信号なのに走ってくるのを気が付いた、暴走をするトラックは委員長にめがけて走ってきた。
「委員長!!」
「え?」
委員長は自分の身に、最悪なことが起きたのをその時に理解したのか、ただ呆然としていた。そして俺は考えるよりも早く、体を動かした。委員長を必ず助ける!
「大丈夫だよ、委員長。君は死なない。」
俺は手一杯に腕を伸ばし、委員長の腕を捕まえ、彼女を救いだした。
「え?」
しかし俺は結果的に委員長の身代わりとなった。勝手に動いた体はすぐにトラックにはね飛ばされた。当然の事ながら体は悲鳴をあげながら最後の時を迎えた。
「いやぁぁあ、何で!?どうして!」
委員長の悲鳴が聞こえた。どうして、何で、俺は委員長の身代わりになったのだろうか。多分、好きな人を守りたかったんだろうか。いや、わからない。わからないまま俺は目を閉じた。
我に返ると、そこにはさっきまで普通に喋っていた友達が倒れてる。
「嫌だよ。お願い…目をあけて...」
私は泣くことしかできなかった。頭が混乱している。どうしていいのかわからない。するとさっきまで誰もいなかった信号前で多くの人が集まってきた。
「早く、救急車を呼べ!」「ママ、人が倒れてる。」「こら、見ちゃダメ。」「ありゃ死んでるな。」「ああ確実にな」「近くにいる子は恋人かな?」「ぶつかる瞬間見たけどあの子を庇ってた。」「マジかよ、最高の散り様じゃね?」「かわいそう。」「まだ、若いのに。」「高校生ぐらいかしら」「つーか救急車まだかよ。」
彼を中心に大勢の人達が集まっ来た。なかには心配したような顔、なかには好奇心で覗いているような顔。哀れんでいる人、泣いてる人。たくさんいた。そうたくさん。たくさんの人が今、私の目の前で倒れている人を見ている。どうしてこうなっちゃったのだろう?彼は動かない。私のせい?私のせいでこうなっちゃったの?そんな...。
『救急車が通ります。救急車ー』
誰かが救急車を呼んでくれたのか、事故現場に救急車は来た。隊員たちは、すぐさま彼のもとまで来た。
「皆さん、どいてください!今から怪我人を運びます。」
「まだ、少しだが息はある!少年すぐに良くなるからな、頑張れよ!」
「この中に彼を知っている人はいますか!?」
隊員たちの呼びかけに私は手を挙げた。
「私です。同じ学校のクラスメイトです。」
「そうか、分かった。一緒に来てくれ。」 「はい。」
救急車で緊急搬送されている途中、若い隊員からいくつかの質問を受けた。彼の名前や事故の経緯など、そうしているうちに緊急先の病院にまもなく到着しようとしていた。
「全員よく聞け!事態は一刻を争う。一分、一秒無駄にするな!」
『はい!!』
ベテランのような隊員さんの呼びかけに返事する若い人達。彼の命はこの人達に掛かっているのだと、ようやく実感した。
「あ、あの、すみません。」 「ん?どうしたんだい?」
「彼は助かるんですか?」
私は恐る恐る、ベテラン風の隊員に聞いてしまった。状況は最悪で、望みある答えなんて言ってくれるはすが無かった。それでもベテラン風の隊員さんは少し笑ってこう答えた。
「大丈夫だ。女の子を庇える根性ある子がそう簡単にくたばるか、必ず俺たちが救って見せる、だから安心しろ。」
「はい。」 私は涙が止まらなかった。救急車が病院につき、彼は手術室に運ばれていった。どうか無事で。私は神様にお願いをした。