崩壊
俺には純粋に生きる目標がない。
これから先、高校を卒業して、大学に入って、就職して、好きな人を見つけて、結婚して、所帯もって、幸せに暮らしていく。
これは、あくまで俺の理想だ。だが、理想と現実は違う。俺の現実には、ある厄介な障害物があった。多分、普通の人ではありえない、現実を前に俺は生きている。普通の家に生まれて、普通に生きていたいといつも願う。でも、それが叶わないのも解っている。
もう授業も4時限目の終わりに差し掛かっていた。この授業が終わると昼休みに入る。そろそろ書けたかと、委員長が聞きにくるかも知れない。仕方がない、用紙にはてきとうに就職と書いておこう。もちろん就職する気もないが、進学する気もない。これはただの問題の先送りにしか過ぎないが提出しないよりかはましだろう。
昼休み終わりに委員長に用紙を提出し、授業を終え、放課後に部活がない俺はいつものように下校した。下校途中にいつも横切る野球部のグランドには今日も野球部が練習前のアップで部員全員でランニングをしていた。目標に向かってがんばる彼らを俺は少し羨ましいと思った。
下校中、俺はいつものように帰り道の途中にあるスーパーでその日の惣菜を購入し店を出た。これが俺のいつも通りの日課で、今日も同じだと思っていた。だが、今日はいつもと違うらしい。
普段いない、通学路の帰り道に今日は委員長がいたのだ。見たところ、委員長も買い物袋を持っている。買い物帰りなのだろうか。俺がそう思った、その時に委員長も俺に気付いた。
「あら、奇遇ね。買い物の帰り?」
最初に声をかけたのは委員長だった。
「ああ、そうなんだ。見たところ委員長もだろ。」
「ええ、そうよ。今日はお母さんの帰りが遅いからね、私が兄弟たちに手料理を振る舞うのです。」
そう言うと委員長は自信ありげな顔で言ってくれた。俺は委員長とは1年生の頃からの仲ではあるが、俺は委員長の事をよく知らない。そして、委員長に兄弟がいることも今、初めて知った。
「へえ、兄弟いたんだ。弟?」
「そう、あとは妹が1人いるわ。」
そう言って委員長は笑ってそう答えた。その笑顔は俺にとってとても眩しく見えた。
「あなたもいつもこの帰り道なの?あまり見かけないけど、もしかして部活か何かやってた?」
「いや部活はしてない、今日会ったのもホントに偶然だよ。」
「そう、部活していないんだ。体育成績は悪くなっかたよね?」
そう、委員長の言うとおり、俺は別に運動神経が悪くて部活をしていないのではなく、また文化部にも入らないのは、やりたいこともないのにただ何となくでするのがあまり好きではないからだ。
「あまりやりたいことが無くてね。」
「そう、あ!もうこんな時間。」
そう言うと委員長は小走りで夕日が落ちる先に走っていき振り返り
「今日は叩いてごめんね。また明日!」
「おう、また明日!気をつけろよ!」
再度、振り返り走っていく彼女が、やっぱり俺にとって少し眩しく見えた。でも今日は金曜日、明日は学校が無いのにな。