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第77話 さあ、家に帰ろう

 ウロボロスを倒した僕たちは、神殿に戻って創造神にそのことを伝えた。

 創造神からは、感謝の言葉と共に、次の話を聞くことができた。

 ウロボロスに破壊された場所は、神たちの手によって復興が始められたということ。

 ラファニエルは魂の牢獄に投獄されて、神としての全ての力を失ったということ。

 投獄される瞬間まで、ラファニエルは笑っていたらしい。抵抗らしい抵抗もせずに、自分から魂の牢獄に入っていったそうだ。

 そのラファニエルに召喚された僕だが──召喚主であるラファニエルがいなくなった今、元の世界に帰る手段がなくなってしまったということ。

 異世界から召喚した人間は、その人間を召喚した者でなければ元の世界に送り返すことができないらしい。

 こればかりは創造神の力を持ってしてもどうしようもないそうだ。

 それだけ、異世界からの勇者召喚は困難を極める技術なのだろう。

 そんなわけで元の世界に帰れなくなってしまった僕だが、僕はそんなに落ち込んではいなかったりする。

 僕にとってこの世界での生活は、人生を賭けられるくらいに大切なものになっていたのだ。

 エルたちに囲まれて、メネと一緒に力を合わせて牧場を作っていく生活は、楽しい。

 元の世界での生活が大事でなかったと言うつもりはないけれど、それを手離してでも今の生活を続けていく価値はあると思う。

 これからも、僕はあの牧場でエルたちと触れ合いながら暮らしていくつもりだ。

 ……そういえば、主人を失ってしまったメネは……これからどうするつもりなのだろう?

「メネは、俺が引き取ることにした」

 隣に並ぶメネと顔を見合わせて、アラキエルは僕に言った。

「ラファニエルは……仲間だ。いなくなっちまった今でも、それは変わらねぇと俺は思ってる。あいつのためにできることをするのが俺の役割だからな」

 彼女はメネの背中をそっと押す。

 メネは僕の隣まで飛んでくると、はにかんだ。

「メネ。お前はこれからもキラの傍について、毎日の生活を助けてやってくれ」

「いつもと同じだね!」

 メネは右手を僕に向けて差し出した。

「メネ、頑張ってお手伝いするよ。これからも宜しくね、キラ!」

「うん。こちらこそ宜しくね、メネ」

 僕は右手を出して、メネの掌に指先をそっと触れた。

 それを黙って見つめているエル。

 相変わらず真面目に引き締まった顔は、何を考えているのかが分からない。

 僕たちとの別れを……少しは淋しいと感じてくれているだろうか。

「エルは、創造神様のところに行け」

「……キラとは、別れるのか?」

「ああ」

 アラキエルが頷くと、エルは静かに僕の目の前にやって来た。

 そして、両腕を僕の背に回して、抱き付いた。

「……キラとの生活、楽しかった。これからも、ずっと忘れない」

 ウロボロスと戦って倒すことが、エルに与えられた役割だった。

 それが遂げられた今、エルが僕たちと一緒に暮らす理由はなくなった。

 エルは元々創造神のエルだから、これからは創造神の傍にいなければならない。

 再び卵に戻って長い眠りにつき──神界の平穏を見守っていくのだ。

「さよなら、キラ。さよなら、メネ。今までありがとう」

「……さよなら、エル」

 僕はエルを抱き返した。

 エルは僕から体を離すと、笑った。

 今までに一度も見たことがなかったエルの笑顔は──年頃の女性らしい、可愛らしい笑顔だった。

 ……何だ、普通に笑えるんじゃないか。エル。

 お前の人間らしい部分が最後に見られて、良かったよ。

 エルは名残惜しそうに僕から離れると、踵を返して、神殿の中へと姿を消した。

「これからも、時々はお前たちの様子を見に行くよ。それまで元気でな」

 手を振るアラキエルに見送られて、僕たちは神殿を後にした。

 あちこちで復興作業が進められている神界の風景を眺めながら、僕はメネに言った。

「家に帰ったら御飯にしよう。僕、お腹空いちゃった」

「そうだね。たくさん動き回ったもんねー」

 頭上に輝く太陽を見上げながら、メネがぐっと両手を伸ばす。

「メネ、腕によりをかけて作るよ。楽しみにしててね!」

「うん!」

 ──さあ。エルたちが待ってる僕たちの家に帰ろう。

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