第73話 僕だって力になりたい
エルは地面を何度も跳ねながら転がっていった。
彼女の肩に乗っていたメネが、焼けた体を庇いながらよろよろと倒れたエルに寄り添う。
「エル、大丈夫!? 今、治すから!」
エルの額にそっと手を触れて、念を込める。
彼女の魔法が、エルの全身を蝕んだ火傷を治していく。
しかし、火傷は全身にあるためすぐに治癒とはいかない。
ウロボロスがエルに近付く。
彼女の目の前まで来て、口を大きく開いた。
例のビームを撃つつもりだ。
今のエルは無防備だ。そんな状態で食らったら──
僕はカエラに言った。
「カエラ、破壊魔法をあいつの顔めがけて撃ってくれ!」
「私の魔法じゃあいつには通用しないわよ!」
そんなことは分かっている。
でも、それでも構わないのだ。僕が狙っているのは、ウロボロスに致命傷を与えることではない。
「通用しなくてもいい! あいつの注意をこっちに引きつけられればそれでいいんだ!」
「……全く、目茶苦茶ね!」
僕はウロボロスの真横に移動した。
僕の肩の上で意識を集中させていたカエラが、ばっと右の掌をウロボロスの頭めがけて翳す。
生まれた火球が高速で飛んでいき、ウロボロスの鼻先にぶち当たる!
炎が弾け、ウロボロスの頭がぐらりと揺れた。
口を閉じたウロボロスが、舌をちろちろとさせながらゆっくりとこちらを向いた。
「こっちだ! 付いて来い化け物!」
僕は叫んで、フェアリーホースの腹を蹴った。
フェアリーホースが地面を走り出す。
その後を付いて来るウロボロスの気配。
来た!
僕たちは地上を走って懸命に逃げた。瓦礫を飛び越え、橋を越え、開けた場所に出るまで駆け続けた。
ウロボロスはその巨体から出るスピードを生かして離されずに僕たちに付いて来る。
おそらく、フェアリーホースが出せるスピードでは逃げ切ることはできない。
それならば──
広い場所に出たところで、僕はフェアリーホースを立ち止まらせた。
反転して、迫ってくるウロボロスを真っ向から見据える。
まだだ。まだ──
遂に、ウロボロスが目の前まで来た。
今だ!
「カエラ!」
カエラの手から再度放たれる火球。
それはウロボロスの潰れた左目に直撃した!
ウロボロスが仰け反る。その隙に、僕たちは宙を飛んでウロボロスの横を猛スピードで突っ切った。
こうしてエルが復活するまでの時間を稼ぐ。僕たちにはそれしかできないが、この行為は少なからずエルの力になるはず。
何とか復活してくれ、エル!
エルの復活を願って、僕たちは神界の広い大地を縦横無尽に逃げ回った。




