第72話 譲れない戦い
ウロボロスの左目を狙って剣を振り下ろすエル。
ウロボロスはそれを剣が当たるすれすれのところで避けると、口を大きく開いてエルに咬み付こうとした。
エルはそれを宙返りをしながら避けた。
体の真下に来たウロボロスの脳天めがけて、剣を突き出す。
剣は鱗を一枚弾けさせ、頭に突き刺さった。
ウロボロスが身を捩って暴れた。
ウロボロスが急に動いたので、頭に突き刺さった剣を握っていたエルは振り回された。
剣から手が離れ、地面に叩きつけられる。
エルが身を起こしたところに、迫り来るウロボロスの尻尾。
エルは跳ね起きるように両腕で地面を勢い良く押して、その反動で尻尾を避けた。
尻尾は何もない場所をはたいて、元の位置に戻った。
「落ち着きなさい。貴方が捉えられない相手ではないはずですよ」
ウロボロスを見上げて声を掛けるラファニエル。
ウロボロスの目が、ぼうっと青く光を帯びた。
「頭だけではなく、体全体を使いなさい。必ず、捉えられるはずです」
ウロボロスがゆらりと動き出す。
目の前を舞うエルに、体全体を近付けた。
ひゅっ──
再度尻尾が宙を薙ぐ。
エルはそれを飛び上がってかわし、ウロボロスの頭に飛び乗った。
頭に突き刺さったままの剣に右手を触れて、左手を頭上に翳す。
ばりばりばりっ!
雷鳴が轟き、一筋の光が剣に吸い込まれるように空から降ってきた。
今のは雷魔法だ。剣に雷撃を撃って、ウロボロスの体内に直接ダメージを与えたのだ。
体を駆け抜ける衝撃に、ウロボロスが苦しそうに口を開く。
エルは剣を引き抜くと、それをウロボロスの左目めがけて突き落とした!
剣が目玉を貫き、大量の血が溢れて落ちた。
血を撒き散らしながら暴れるウロボロス。
口から発せられた光が傍の地面を吹き飛ばして深い穴を空けた。
「エル、このままやっちゃえ!」
メネが声を張り上げる。
エルはウロボロスの左目から剣を抜き取り、正面に回った。
彼女が狙いを定めているのは──胴体。心臓があるだろう位置だ。
剣を垂直に構え、そのまま一気に突進する。
そこに、巨大な火球が何個も降り注ぐ!
「!」
炎が弾け、エルの姿が見えなくなる。
今のはウロボロスが口から吐き出した炎だ。おそらく森を焼いた時に使っていた魔法だろう。
辺りに飛び散った炎が消える。
エルは──焼け焦げた全身を掻き抱いて、ウロボロスの前に跪いていた。
まずい。まともに食らったらしい。
ウロボロスが尻尾を振り上げる。
エルは動かない。
ウロボロスの尻尾は勢い良く振り抜かれ、エルをその場から弾き飛ばした。




