第61話 袂を分かつ
「う……」
僕は地面の上に転がっていた体を起こした。
かなりの距離を飛ばされたので、全身に土や葉っぱがたくさんくっついている。
僕が起き上がると、レッドが心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
レッドは、僕と同じように全身に色々なものが付いてはいるが、怪我はないようだ。
此処は森だから、体の大きいレッドはあちこちに体をぶつけたんじゃないかって心配してたんだけど、何もないようで良かった。
「……大丈夫だよ、レッド」
レッドに声を掛けて、立ち上がる。
周囲を見回すが、視界に入るのは焼け焦げた木と燃えてちりちりになった草ばかりだ。
メネや、エルの姿はない。
僕と同じように風に飛ばされたところは見たので、この森の何処かにはいるだろうが、近くにはいないようだ。
二人を探さなきゃ。
「二人を探そう。行くよ」
僕は歩けそうな道を探して歩き始めた。
レッドはその後ろを歩きながら付いて来る。
三十分くらい森の中を彷徨っただろうか。
ようやく、僕を探して声を上げているメネとエルを発見した。
彼女たちは一緒にいたようだ。
僕の姿を見つけると、彼女たちは良かったと言いながら近付いてきた。
「キラ、無事だったんだね。良かった」
「まあ、何とかね」
格好は凄いけど、と服を引っ張りながら言うと、帰ったら洗濯しようと言ってメネは笑った。
その笑顔が、すぐに曇る。
彼女は俯いて、呟いた。
「ラファニエル……どうして、メネたちを襲ったりしたの?……」
「悲願、って言ってたけど、邪神が必要な悲願って何だろうね」
僕は首を傾げた。
ラファニエルは、随分とウロボロスを大事にしていた感じだった。それだけ、彼女にとってウロボロスは重要な存在なのだろう。
彼女がウロボロスを使って何かをしようとしていることは分かるが、それが一体何なのかは分からない。
邪神を利用した目論みだから、それが世界平和に繋がることでないということだけは分かるが。
「……あいつが何を考えていようが関係ない」
そう言ったのはエルだった。
エルは少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、手の骨をぱきりと鳴らした。
「次に会った時は必ず仕留める」
ウロボロスを何とかしようとしたら、おそらくラファニエルが邪魔してくるだろう。
ラファニエルと……戦うことになるのか。
初めて会った時は穏やかで優しい神様だなって思ってたから、その時のイメージが抜けない僕にとっては未だに信じられない。
でも、やらなければならない。彼女を放っておいたら、世界が大変なことになるのだから。
「もうさっきの場所にはいないだろうけど……探しに行く?」
僕が二人に尋ねると、エルの腹がぐうと鳴った。
エルは腹を撫でて、言った。
「お腹が空いた」
「……分かった。一旦家に帰ろうか」
僕の言葉に、二人はこくんと頷いた。




