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第58話 火事

「クロー。シャドウー。メルトー。ナナイー。御飯だよー」

 荷車に神果を載せて運んできた僕は、闇の牧場の入口に立って皆を呼ぶ。

 僕の声を聞きつけたエルたちが、地面を元気に駆けながら集まってきた。

 うん、今日も皆元気そうだ。

 僕は神果を荷車から下ろして、皆の前に積んでやる。

 皆は一斉に神果に群がると、競うようにばくばくと食べ始めた。

 そんなに慌てて食べなくても皆がお腹一杯になる分の神果は持ってきたから。

 皆の様子を微笑ましく見守りながら、僕はふと、牧場の向こう側に目を向けた。

 何処までも草が茂る平原。そこに、ゆっくりと歩いている何かの影を見つける。

 大きさは──遠目からでははっきりとは分からないが、かなり大きい。

 それは森の方に歩いていき、僕の視界から姿を消した。

 何だろう、今の……野生の獣かな?

 僕は小首を傾げた。

「キラ」

 背後から僕を呼ぶ、エルの声。

 振り向くと、神果を小脇に抱えたエルがそこに立っていた。

 エルは、もうすっかり大人だ。体は立派に成長し、生まれた時は小さかった翼も今では全身を包み込めるくらいに大きい。

 随分と出るところが出ており、ちょっと目のやり場に困る体つきだ。メネに頼んで服を作ってもらっておいて正解だったよ。

「これ、落とした。庭に落ちてたから拾ってきた」

 抱えていた神果を差し出してくるエル。

 ああ、いつも荷車に大量に積むから転がって落ちたんだな。

 僕は彼女から神果を受け取った。

「ありがとう」

「……あれは、何」

 僕に神果を渡したエルは、不思議そうに僕の背後を見ていた。

 振り返る僕。そこには食事中の皆がいるだけで、何もない。

 何だろう。

「あれって?」

「ずっと向こう。あの赤いの」

 赤いの?

 ずっと向こう、と言うので、僕は焦点を牧場の中から外へと映した。

 そこにあるのは、僕がさっき見ていた平原と、森だ。

 何もなかったただの景色。

 それが──派手に炎に包まれて、燃えていた。

「!?」

 僕はぎょっとした。

 草や木が勝手に燃えるなんてことは普通ありえない。誰かが火を点けたのだということは明白だった。

 でも、一体誰が?

「見てくる」

 エルはそう言って翼を広げると、燃える森を目指して飛んでいってしまった。

 好奇心旺盛なところは小さな頃と全く変わっていない。

 僕も行かないと。森が燃えているのを放置するわけにはいかない。

 僕は慌てて家に戻り、メネを呼んだ。

 そして彼女を連れて火の牧場に行き、レッドに乗って森へと向かった。

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